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魔物のお医者さん  作者: 浅見カフカ


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7/7

勇者

「豊本ドクター、それは良いアイディアだよ!」

塚本ドクターは傷口が開きそうな勢いで大声を出した。

周りの患者達も「何ごとか」と身を起こした。

「だが、人選が重要になるな」

塚本ドクターは顎に手を当てて考え始めた。

「いきなり我々が行っても良くて門前払い、悪くて——まあアレだ」

塚本ドクターは言い淀んだが、俺も同じ考えだった。


「もよもと〜」

「もょもと〜」

「もよもとぉ」

三度目の呼び掛けで、ようやく俺が呼ばれているのだと理解した。

塚本ドクターは大笑いしている。

振り向くと子ゴブリンが数匹——数人立っていた。

何か用かと思い話を聞こうとしたが、彼らが話せるのはまだ名前だけのようだ。

(それも言えていないが)

「遊びたいんじゃないかな、もよもとドクター」

塚本ドクターは未だに可笑しそうに肩を揺らしていた。


縫い合わせた革のボール。

中身は綿とかだろうか?

ハンドボールとバレーボールの中間くらいのボールだ。

「ドッジボ、ドッジボ」

なるほど、塚本ドクターが教えたのだろう。

「ようし、分かった。掛かってこい」

両手を広げた俺の頬の横を、何かが空気を押し退けて行った。

ひりつく頬に指を当てた。

「っ痛!」

指先に微かに血が付いていた。

背中でバシぃっと音がした。

「待て待て待て待て!!!!」

言った時にはもう外野が、投球終えていた。

ボールが脇腹を掠めた。

負圧で服が吸い寄せられて裂けた。

「ひぃ」

目を閉じた——

ドッジボールで死を覚悟したその時だった。

「グギャギャガガシャギャギャー」と獣の叫び声が聞こえた。

子ゴブリンたちの動きが止まった。

恐る恐る目を開けるとエドが子ゴブリンたちを怒鳴りつけていた。


「もよもとせんせい、ダイジョブ?ダイジョブ?」

心配そうなエドと、泣きそうな顔の子ゴブリンたち。

俺は立ち上がると「大丈夫、ありがとう」と言って、子ゴブリンのひとりを抱きかかえた。

高い高いをした。

なんとなくだが、それが正解のような気がした。

キャッキャ笑う子ゴブリンを下ろすと、次から次へと高い高いをせがまれた。

いつの間にか俺の周りには人だかりというか、ゴブだかりが出来て賑わっていた。


「いやぁ、えらい目に遭いました」

そう言って左手右肩を揉むと「もよもとドクターは人気者になったな」と塚本ドクターが笑った。

「そうだ、塚本ドクター。どうしてそんなに笑うんですか?子ゴブリンたちが上手く言えないだけなのに」

俺がさっきから感じていた疑問というか違和感を口にした。

「そうか、キミは若いから。私が子供頃のゲームの裏ワザでな——」


塚本ドクターは、RPGの裏ワザで出てくるキャラクターの名前が【もょもと】だったと教えてくれた。

「キミは現世から来た本当の勇者なのかもしれないな」

そう言って彼はまた笑った。


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