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魔物のお医者さん  作者: 浅見カフカ


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勇者パーティ

王国軍と魔王軍の苛烈な戦いは、一進一退の攻防だった。

俺たち転生者で編成された勇者パーティは、独立した遊撃隊として参戦していた。

大規模な部隊同士が正面衝突する中、俺たちは寡兵で魔王の背後を突く作戦だった。


リーダーの霧島玲司きりしまれいじは騎士適正の勇者だ。

ルックスも良く、俺たちをまとめ上げるには申し分ないカリスマ性があった。


そしてタンク適正の重戦士、武蔵大介むさしだいすけ

彼は現世ではアメフトの選手でディフェンスバックを務めていた。

現役時代は弁慶のあだ名で呼ばれていた男だった。


魔術師適正があった住吉花蓮すみよしかれんは、この世界の人間も驚く程の高い魔力を持っていた。

魔力測定の実技では、要塞化した盗賊の砦を爆砕してしまったほどだった。


姫宮乃愛ひめみやのあは精霊との相性が良かった。

特に風の精霊は彼女の眷属のように仕えるようになった。

風は攻防どちらにも威力を発揮する頼りになる力だった。


そして俺、豊本秀夫。

パーティの重要な回復役だが、魔力は無い。

ついでに言うと、玲司のようなカリスマも弁慶のようなタフさも無い。

チートも加護も何も無いのが俺だ。

そんな俺が何故、勇者パーティの回復役なのか?

それは現世の医学知識だった。

それも獣医師を目指す学生の——

魔法じゃないから即効性の無い治療。

緊急の時はこの世界の薬で即効性の力を借りるしかなかった。

当然だが、パーティのお荷物扱いだった。

お荷物故に荷物持ちもしていた。


勇者パーティとして召喚された時——

国王や重臣達の、俺への失望と嘲りが忘れられなくていまだに震える。

チートのひとつも貰わずに転生した俺の愚かさを、日々呪った。


「この集落だ」

小高い岡上、玲司が魔物の集落を見下ろした。

「私の爆炎でひと呑みね」

花蓮はそう言うと口の端で薄く笑った。

四人の隙間から覗き見た集落には、成体だけではなく幼体も居た。

「作戦を立てるまでも無さそうだ」

弁慶がそう言うと「そうだな」と玲司が言って駆け出した。

その後ろで乃愛が精霊の加護を唱え、花蓮が先制の巨大な火球を幾つも撃ち込んだ。


悲鳴が風に乗って聞こえる。

それと共に肉の焦げる臭いも届いた。

俺は口と鼻を覆った。

何度嗅いでも慣れない臭いだ。

それでも行くしかない。

玲司達は無力な俺の代わりに戦ってくれているんだ。

逃げたり立ち止まったりしたら、俺はもう仲間じゃなくなってしまう。

俺は薬品が詰まったリュックを背負って、丘を駆け下りた。


焦げた屍はゴブリンだろうか。

崩れた土壁と柱の下で、迫る炎にもがく奴も居た。

その横で子供のゴブリンが、ギャァギャァと泣きながら柱を持ち上げようとしていた。

挟まっているのは親兄弟なのだろうか?

玲司は喚くゴブリンに近付くと、その首を刎ねた。

掴んだ柱に落ちた頭が当たって転がった。

柱はみるみる赤く染まり、その様子を見たゴブリンが叫んだ。

だがその声も胸を圧迫する瓦礫に押さえられ、掠れた小さなものにしかならなかった。

玲司は転がった小さな頭を掴むと、叫ぶゴブリンの横に投げ入れた。

間もなくそこに火が回って燃え始めた。

ゴブリンが再び叫んだが、それが叫びだったのか慟哭だったのかは俺にはわからなかった。


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