009 セル
目を覚ますと俺はなにかに座っていた。
(ここは、家?)
見たところ、気のログハウスの中にいるようだ。なんでこんなところに?ちょっと散策するか…
そう思って、立とうと動こうとしたが動けなかった。見ると、手や足、身体かロープのようなもので固定されていた。
(え、もしかして…誘拐?!)
誘拐…それは、1度ジャックがされたことのある犯罪だ。俺が、女性のマネージャーと仲がよく見えた女性ファンが俺を誘拐した。理由は岡田くんはわたしのものだから、だそうだ。そんなこと言ったことないのに…その時も椅子にくくり付けられたっけ。ていうか、そんな呑気なこと考えてられねえ。
「あっはは!誘拐なんてしないよ〜」
「っ!」
後ろから声、誘拐犯!いや、本人が誘拐は違うって言ってるから違うのか。
すると、後ろの人は俺の目の前の椅子に座った。座った人は、少し焼けた小麦色の肌にぱっつんの黒い髪をしている。黒いTシャツの上に白いジャケットのようなものを羽織り、白い短パンを履いている、ちょっと子供っぽい服装だ。そして、なにより特徴的なのは目。右目が銀色の瞳、左目が黄色の瞳のオットアイ。始めて見た!
「さてさて、こんばんは…岡田 慈矢駆くん」
「おい、俺をどうするつもりだ!」
「ん?どうもしないよーでも少しシてもらうことがあるけどね…」
シてもらうことって…なんだ。あれ?それよりこいつ俺のこと、本名で言った?……そんなわけないか。
彼は、考える人のような姿勢になり、俺にこんな言葉を投げかける。
「ストレートに言うと、ボクの作戦に協力して欲しいんだ」
「なんで俺が…」
「それも教えるから、急かさないでよ」
(こいつ、声の高さからして女か?でもそれにしては胸が…)
「があああっ!」
その瞬間、身体全体に電撃が走る。あの紫髪女と同じくらいの衝撃。みんなに分かりやすく言うと、冬の静電気が身体の中もビリビリってしてる感じ。分かりずらいかな?
「…はぁ…いきなりなんだよ…」
身体中が痺れている。心臓止まるかと思った。
「…僕は女、これでも君より年上だよ」
「俺の年知らねえだろ…」
「…どうかな」
俺の年齢なんてわかるわけない。だって、身長も体格もそうだけど、ほとんど中学生だ。多分こいつは18歳くらいじゃないか?でもこいつも小さいなあ。てゆーかさっきの痛すぎ!舌も痺れてるんだけど。笑顔で痺れさせてくんのサイコパスだろ。
「あー話逸れちゃった。えっと…そう!君が協力してくれたら、誤解を解いてあげる」
「誤解?」
「そう、人間なのに魔物と思われてること」
「…」
(そういえば、あの紫髪女に『アンデット』って言われてたな…たしかに誤解が無くなるなら嬉しいが)
「ほんとに出来んのか?」
「それは、安心していい。ボクは有名な魔法使いでね…約束は守る」
「…………」
(全然信用できねー。詐欺の手口みたいだ…)
「詐欺じゃないよ」
「あ、あぁ…」
「で、協力してくれる?」
「ええっと…」
「『はい』か『イエス』で…」
「それどっちも『はい』じゃねえかよ!はぁ…いいよ、どうせ拒否権ないんだろ?やってやるよ」
「分かれば良い」
彼女?がそういって指を鳴らすと、椅子のロープが消えた。どうやら魔法で作られたものだったらしい。指を鳴らして魔法を発動、かっこいい!
「ボクはセルって呼んでねジャックくん」
「あぁ、よろしく、セル」
にぱー、と笑顔を浮かべながら自己紹介をしてくる。なんで俺の名前を知っているんだ、と聞きたかったが聞いてはいけないと感じた。もしかしたら、異世界だから、名前が分かる魔法があるのかもしれない。
「さっそくだけど、ジャックくんに嬉しい嬉しい仕事があるよ!」
「え…俺さっき、斬られたり走ったりしたんですけど…」
「僕にはそうは見えないなー」
「そんなわけ…ってあれ、傷が…それに痛みも…」
なんでだ?前に瞬間移動したときは3日間ぐらいずっと痛かったのに…しかも、よくわからない剣士に斬られたときの傷もない。まぁ服はボロボロなのだが…
「痛くないなら仕事しないと…まぁ仕事っていってもすごく簡単だから」
「そうなのか?」
「ただ街の隅にこの魔石を置くだけ」
「それだけ?」
「うん、それだけ…はい、これ地図」
セルが4つの魔石と大きい地図を渡してくる。地図には、4つ赤いバツ印が描かれている。ちょうど街の東、西、南、北のところに…もしかしてこの場所に置くってことかな。
「じゃあ、印のところに置いてきてね」
「え…ちょっと待っt...」
「ちゃんと仕事してきてね、バイバーイ」
セルがこの家から追い出そうと背中を押してくる。服がぼろぼろだから素手が当たっている。そうして俺はなすすべなく家から追い出された。ドアがカチャリと閉まる。多分もう行くしかないのだろう。
「はぁ…いくか…」
追い出したセルは誰もいない家で呟く。
「あの身体能力、彼、いい駒かも」
俺は、追い出されたあと街の方へ歩いていった。まずは森を抜けないと…ジャックはスタスタと自分が走った経路を辿る。歩きながら、さっきのセルのことを思い出す。
「あれが、異世界の黒ギャルか?押し強かったし…ていうか従わないで逃げようかな…」
そうだ、俺は食料も出せるし、野宿もできる。それに今なら逃げることができ……。
カチッ
その瞬間、ジャックの魔力が勝手に動き出し、頭の中でスイッチが押される。そして…頭の中の一つの魔力の塊が起動される。
「あ…れ?俺、いま何をしようと……そうだ、俺は魔石を置くんだ。誤解を解くために。何忘れてんだ、俺」
さっき、セルに言われたばかりなのになんで忘れたんだ。早く街へいかないと…ジャックは早歩きで街の方へ向かう。そして、結構早く城壁のようなところへ来ることができた。まず、この魔石を置くためには街に入らないといけない。しかし、城壁の上には6人ぐらいの衛兵がいた。
「どうしよ。人めっちゃいるし…なにか、気を紛らわせれるもの…」
ジャックはあたりを見回す。生い茂る草、たくさん落ちてる石ころ、それと木。こんなものしか落ちていない、バグでなんか出すか?いや、もう使いたくない、軽くトラウマだよ…あの痛み。
(ん?あの鐘…よし決めた)
ジャックは計画が決まり近くにある石ころを一つ持つ。大きくはないが小さくもない投げやすい石。ジャックはそれを握ると、一歩左足を前に踏み出して、石を投げた。
「ごめんなさい…」
ジャックの投げた石ころは、壁の上の鐘に当たり「カーン」と大きな音が鳴っている。衛兵が鳴った鐘の方へ向かっている。「何事だ!」、「敵か?」、「いや勝手に鐘が…」と衛兵たちがパニックに陥っている。
(今なら!)
ジャックは、鳴った左の鐘の反対方向へはしる。そして、地面を強く蹴り空へ飛ぶ。蹴った地面がへこむ。思ったより、飛ばなくてギリギリで城壁の上に飛び乗る。
そして、ちょうど衛兵の背中を通る。バレないかめっちゃヒヤヒヤするー!無事バレずに街の中に入るために落ちる。着地したのは、屋根の上。そこから、落ちていって道に着地する。
「よっと、ふぅ〜バレなくてよかったーよし、魔石置く場所は?」
セルにもらった地図を開く。ポケットに入れたから落ちたか心配したけど大丈夫だった。地図には、現在いるところにに赤い点が点滅していて、その横に「現」と書かれている。多分現在地のことだろうか。
「めっちゃハイテクじゃん。すご!」
地図のすごさに驚く。俺がいた時代にはそんなもんなかったぞ。しかも、これちゃんと紙だ。タブレットでもない。魔法ってすごいんだなー
そうして、近くの印のところにジャックは向かっていくのだった。




