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バグ・ジャック  作者: 火羅陽
第1章「すぺしゃるすーぱー大作戦!」

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8/12

008 恋愛相談した相手は…


 俺は今、追われている。冗談なんかじゃない。軍服をきた女性に追われている。それだけなら別にいい。美女だから変態だったらご褒美にもなるだろう。だが俺は命を狙われている。映画でしか聞いたことないフレーズ、でもその言葉が今の俺にしっくりくる。


 俺は殺される瞬間に"瞬間移動"をした。それは、普通の魔法使いじゃできない不可能なこと。俺は、魔法について沢山調べたつもりだ。知らない魔法もあるが…。瞬間移動ができる魔法というのはどの本にも載っていない。ある本では、1億の魔法語を3秒以内に言うことができれば出来るらしい。そう、俺がしたことは絶対できないこと。


 ただし、俺はできる。『バグ』の力で。なんでこの力があるなんて分からない。でも、今はこの力に俺は感謝するしか無かった…


「はぁ……はぁ…」


 瞬間移動した先は門の外。あの女も外に出たとは思わないだろう。でも、それも時間の問題。早く森の中へ逃げよう。


(やべぇ…体がおかしくなっていってる…もうすぐ体に痛みが…)


 ジャックは森の奥へ、走る、走る、走る。たくさんの木々の横を通っていく。今聞こえる音は自分が走っているときの疾風、踏んだ草の音、心臓の音。静かな森を走っていると世界に自分しかいないのかと疑ってしまいそうだ。


「ぐがあ゙ぁ゙ぁ゙⋯ぁ゙ぁ゙ぁっ⋯!」


 ジャックはバタン、と前に倒れ込んだ。身体が悲鳴を上げている。そんなことは初めての感覚だが一瞬でわかった。今までで一番強烈な痛み。体全体がゲームのバグのようにノイズが走り、身体がちぎれて修復、切れて修復、混ざって修復。治っても治っても痛みは増えていく。


「ぁ゙っ゙……ぁぁ…」


 痛みで、意識が朦朧として、めまいもする。こんな所で寝たら捕まる…でも動けない。でも……もう…

 俺がまぶたを閉じる直前、最後に見た光景は、前から人が歩いてくる光景だった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〈領主館にて〉

「ジャックは人間だ⋯アンデットじゃない!」


 そんな、怒声が領主の部屋中に響き渡る。


「ちょっとダスト、まずはこの人の話を聞きましょう」

「ちっ⋯わかったよ」


 シーナが慌てて、ダストを止める。ダストは納得していないが渋々了解した。


「私は⋯帝国先鋭軍第6隊員 シャルゼ・ミルドレットです」

「それは、もう聞いた。それよりもジャックがアンデットな理由を教えてくれ」

「⋯魔法で調べたら生命力がなかった。魔法や魔道具で隠したものではない。それに彼の胸辺りからアンデットの魔石特有の魔力反応があった。この証拠で不満?」

「⋯⋯」


 ダストは黙ることしかできなかった。現実を受け止めたくなかった。だって、恋愛相談した相手がアンデットだったなんて⋯それに、俺でも帝国先鋭部隊は知ってるぐらい有名だ。察知能力も俺より優れている。そんな人が、言ってるなら信じるしかない。でも⋯⋯⋯


(恋愛相談した相手が魔物って、信じられねえよ⋯…)


「⋯彼の魔法の技術は優れていましたか?」

「⋯私が思うに未熟です。〈生成魔法〉も十分に扱えてませんでした」

「そう⋯あなたがいうならそうなのね。()()()

「!」

「クリムねえ…後でほんの少し話すことあるから来て」

「⋯はい」


 シーナは苗字を呼ばれて焦ったような表情になった。返事をしてから顔色が悪くなったシーナに「おい、大丈夫か?」と小声で聞く。すると「大丈夫」とシーナが大丈夫じゃなさそうなか細い声で言ってきた。ほんとに大丈夫か?でもここで追求するのは男じゃないな。


「…話をもどすね…実は帰ったらこんな手紙があったの」


 彼女はポケットから、ひとつの小さい白い紙を取り出して机の上に置く。


「『明日の夜、サルムの崖で緑髪の男と貴方を待ちます。貴方が会いたい人より』。これが手紙の内容です」

「会いたい人っていうのは誰なんだ?」

「それは…………です」

「は?」

「それって…」

「帝国特殊部隊の占い魔法の結果、ここに居ます。そのためにわたしは来たのですから」


 シャルゼの何事にも無関心そうな声に、みんなが絶句する。帝国特殊部隊というのは、国を武力ではない物で支えている部隊だ。そして、その1人が生み出した占い魔法は100パーセント当たると言われている。


「⋯私はあの魔物⋯いやジャックのことで一つの仮説を立てました」

「仮説?」

「はい、それは…」


「グラム!!ついに研究の成果がでたぞー」


 シャルゼが仮説を申し上げる前に、男が元気な大きい声でドアを「どーん」と勢いよく開けながら言う。男は、こちら側を見ず、領主様の元へ一直線に向かっていく。


「グラム!なんと、あの『魔法無効化の魔道具』か完成したんだ!すごいだろ。これを作るのに何年かかったことか…魔法を感知するまでの魔法は一瞬で作れたんだが、その後の無効化ってのがむずくてな。でもやっと、見つけたんだ。それがな、魔力線を断つんじゃなくて歪ませることで成功したんだ。でもそこで問題なのが魔力消費量でな、俺の魔力を全部………」

「おい、客がいるぞ」


 領主様がそう言っても、目の前の男は喋るのを辞めない。領主がもう一度、大きな声で言っても聞かず、3度目の正直で領主が街全体に響きそうな声で「静かにせい」と言うと目の前の男は喋るのを辞めた。


「客がいる。まずは挨拶でもしたらどうだ」

「え?…あぁ!ほんとだ。私としたことが…ごめんごめん……ん?」


 男は、シャルゼのことを見ると目を少し見開かせながらシャルゼの方に向かっていき、衝撃の言葉を言う。


「こんにちは、私はライタルム・ユーリン。あぁ、あなたはまるで原っぱに咲く1輪の花のようだ!もし良ければ、私とけっこ…」

「やめんか!」

「ぐほっ!」


 領主様の右ストレートがライタルムの顔に直撃する。シャルゼは、目の前でそんなことがあったのにいつもと変わらない無表情だ。


「あぁ…なんて美しい人なんだ。お名前はなんと言いますか?」

「……シャルゼ・ミルドレッド……」

「シャルゼ、うんシャルゼ!いい名前だ。たしか帝国のなんたら部隊にもそんな名前の人がいたな!でもその人みたいに強くなくてもいいよ。私が守るから、だからけっこ…」

「やめんか!!」


 領主様が、ライタルムの背中をとても強く叩く。すると、この世の音とは思えないような「バチン」という音が鳴った。


「痛った!!」

「はぁ、すまない。こいつが変な冗談を…」

「冗談じゃねえよ!」

「冗談にしろ!」


 領主様がこんなに怒ってるところ初めて見た…今まで、ただ報告とかしてただけだから。こっちが素なのか?


「はぁ…こいつは昔からの研究者でな。悪い奴ではないから安心してくれ。おい!ライム!この人は帝国先鋭部隊の人だそ!無礼を謝れ!」

「え!ほんとに先鋭部隊のひとなの!初めて見たー握手してください」

「………………」


 ライムさんは手を出して、握手しようとする。シャルゼさんはライムさんの猛攻に押されて黙ってしまった。


「ああ、でも貴族さんか〜じゃあ結婚はきついなぁ。また、婚活失敗。よし、次はちゃんと相手の事を知ろう!!…ん?」


 ライムさんは、1人反省をしているとソファに座っているシーナに目が止まる。そして近づき、膝をついた。

(なんか、いやな予感が…… )


「可愛らしい人だ!良ければ私とけっこ……」

「やめろ!」

「ぐほっ!」

「ええええーー!」


 シーナに手を出そうとしたから勝手に手が出ていた。ライムは壁に激突していた。もしかしたら気絶してるかも。領主様が「ダスト」と低い声でダストを呼ぶ。


「は…はい…」

「…よくやった」

「え……」


 人を殴って褒められてしまった。領主様もこの男にうんざりしていたのかもしれない。


「シャルゼ様、これまでの無礼すみません」

「…別に大丈夫」

「ありがとうございます、話を戻しましょう」


 領主様が深々と礼をする。そうだ、まだ話の続きだ。あの男が告白とか色んな事するから、忘れてた。


「…あれ、何言おうとしたんだっけ」


 シャルゼは首を傾げながら、どんな話をしていたか思い出すのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ちょうどその時、ジャックは目を覚ます。

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