006 カルシス
ジャック達が20分程歩き、夕日が沈み初めた頃、ついに森をでる。
すると、10m程の白い壁がそびえ立っていた。道の先には、門のようなものがあり、すぐそばに人間がいる。門番だろうか?
「着いたな...ガル、ダストだ」
「あぁ!ダストか!それに、シーナさんにレイさんも。ん?そこの少年は誰だ」
門番の目が細められる。その様子からして警戒しているようだそりゃそうか、俺はよそ者だからな…
「こいつはジャック、怪しいものではないぜ」
「そうか...なぜこの少年を連れてきたんだ?」
「ああ、なんと大量のスケルトンはジャックが倒したそうだ!」
「そういうことか!ありがとう、ジャックといったか。お前のお陰で俺たちの仕事が減ったよ」
門番は感謝の気持ちを伝えるために握手をする。その間、英雄を見るような目で見てくる。その様子に混乱しているとダストがジャックに伝える。
「衛兵は仕事量が多くてブラックなんだ。仕事が増えなくて嬉しかったんだろう」
「そうゆうこと...」
どの世界にもブラックな仕事っていうのは存在するんだな...と思ってると握手が終わる。
「ほんとにありがとう。よし、じゃあ4人とも通っていいぞ。おーい、門を開けてくれ!」
門番のガルがそう言うと、木材でできた大きい扉が重々しい音をたてて開いていく。5秒ほどで門が完全に開いた。
「よし、じゃあなダスト!またいつかな!」
「ああ、またいつか。」
そんな会話を二人はして、ダストは門をくぐる。ジャック達もその後ろについていく。ガルはこちらを見ると小さく手を降る。ジャックもそれに対して笑顔をつくりながら手を振りかえす。
「あれ、そういえばスケルトンがいた所に生体反応はなかったはずじゃ?」
ガルのそのつぶやきに反応する者はいなかった…
ジャックたちが、門をくぐり、また重々しい音をたてて門が閉まる。
しかし、ジャックにはそんなことは目に入っていなかった。目に入るのは、活気溢れた街だった。老若男女のほとんどの人が笑顔だ。それに、道は石レンガのようなもので整備されている。また、建物はコンクリートで作られてそうな色だ。しかも、あれはTシャツ?!
(思ったよりも発展してる...西暦1700年くらいかな。というか金髪多いな。ダストもシーナも金髪だし、普通なのかな。あれ、でもレイは白髮だな。違う地方から来たのかな?)
「よし、まずは、領主様に報告しにいくか」
「わかりました」
そう言ってダストの後ろについていく。
「領主様ってどんな人なんですか?」
ふと気になったので聞いてみる。
「領主様は、結構いかついおじさんだな」
その言葉にシーナが反応する。
「ちょっと領主様のこと、そんなふうに言っちゃだめでしょ!」
「いや、でもそうだろ...」
「そうかも知れないけど、領主様よ。おじさんとか言っちゃだめでしょ。それに......」
ダストをシーナが説教している。もう聞くことができる雰囲気じゃないので隣にいるレイに聞いてみる。
「領主様ってどんな人?」
「さっきダストが言ってた通りだけど、みんなに気配りできる優しい人だよ」
レイが言うには、結構いい人そうだ。ていうかレイの説明聞かなかったら、ただのいかついおじさんだったな。説明不足にもほどがあるだろ
「それに、領主様は3級剣士ですごく強いんだよ」
「3級?」
3級という言葉がよくわからなかったのでつい発音してしまった。レイはその意味がわかったのか、話し始める。
「ああ、戦士には、魔法使い・弓兵・剣士・槍兵・僧侶・特殊職業の6つがあってね、それぞれ1級から7級まであるの」
「なるほど」
日本で言う「英検」「漢検」とかと同じ感じだろうか。
「大体の人が5級ぐらいで、3級はほとんどの人が行けないの。ちなみに、僕は僧侶5級、前の二人は剣士4級と魔法使い4級だよ」
「その年で5級ってすごいな」
「えへへ、ありがと」
ほとんどの人と言っているから、若いレイが5級なのは単純にすごいんだろうなと思った。結構話したからなのか結構打ち解けている。ジャックもこういう素直な人は嫌いじゃない。
「でもジャックくんの実力なら、弓兵4級は一瞬で行けるよ」
「そうかな?」
「うん、だって僕が見てきた中で一番すごかったもん」
「ふーん」
ジャックはちょっとだけ照れる。一応、元オリンピック日本代表だし、人生の殆どを弓に費やした。それを褒められているのだから悪い気はしない。
「っとここが領主館だ。みんな、失礼の無いように」
「失礼のないようにするのはあんたでしょ...」
ダストの言葉に対して、シーナが呟く。ジャックもそう思っていたところだ。
領主館はでかい屋敷だった。寮と言われてもわからないくらいはでかい。
ダストが扉を3回ノックして開く。すると中にはメイドがいた。
「ダスト殿ですね。ではこちらへ」
そう言って、メイドはジャックたちを一番奥の部屋へと案内する。そして、メイドが「失礼します」といって部屋に入る。
「ダストたちか、ご苦労だった。そこに座っていいぞ」
「はい」
ジャックたちはでかいソファに座る。「座っていいぞ」と言った男はいかついおじさんだった。その男からは威圧感が出ている。
(いかついおじさん、この人が領主?)
「まず聞きたいことがあるんだが、その少年は誰だ」
領主?がそう言ってジャックを指差す。ジャックは慣れているが少年と思われているのが少し悲しくなった。
「この人は、ジャック。決して悪い人ではありません。ジャックはスケルトンの大群を倒した張本人です」
「そういうことか...あそこでは生体反応がなかったがなにか魔法を使ったのか」
ジャックはその質問に驚いていた。生体反応がなかった。でもその時俺はちゃんと居たし、遠くから弓で撃ったわけでもない。ということは、バグのせいか?本当はガルタに転生するはずだったから、生きている事になっていないのかも。
「いえ、遠くからこの弓で撃っていました」
これで、シナ村以外のところも生体反応を検査していたら嘘がバレる。その時の言い訳を考えとかないと...と思っていると領主?が言う。
「そういうことか。その弓、よく使われている。嘘ではないようだな」
バレなかったぁーー。この人怖いから良かったーー
「では、改めてお礼を言おう。スケルトン討伐ありがとう」
そう言って、男はお辞儀をする。結構深いお辞儀だ。
「そんな、頭下げなくてもいいですよ。たまたま見つけたので倒しただけです」
「そうか、だが倒してくれたんだ感謝している」
その言葉だけで分かる。レイが優しいと言った理由が。
「それにしてもなぜあの村の近くにいたんだ」
「実は旅の途中で...」
「そういうことか、まあ深くは追求しないでおこう。では、4人ともご苦労であった」
「はい!」と4人が返事をして、部屋から出て行く。そのまま、屋敷を出る。
「いやーなんとかなったな。どうだったジャック、いかついおじさんだっただろ」
「はい、思ったよりいかついおじさんでした」
「ダストもジャック君もおじさん呼ばわりはだめ!」
ダストがジャックに感想を聞き、ジャックは思ったことを言い、その言葉にシーナが怒る。
その様子を見ていたレイはちょっと笑いそうになるのだった。
「そういえばジャック君はお金ある?」
「あ........」
そうだった。お金がないとどこにも泊まれない。食料はだいじょぶだけど...これは緊急事態だ!
「どうしよう、お金ない...」
「そんなことだろうと思ったわ…どうする、今日私の家泊まる?広いし」
その言葉にジャックは驚く。まあ、ジャックよりダストのほうが驚いている。そりゃそうだ。目の前で好きな人が、男を家に誘っているのだ。
「ジャック、おれんちに来ねえか。狭いけど...」
普通なら、ダストのところに行くがジャックは「イイコト」を思いついたので実行する。
「俺広いところがいいんでシーナさんの家に泊まりたいんでけど...男1人はきついです」
「じゃあ、ダストとレイも泊まってく?帰還祝いってことで」
「...じゃあ僕は行きます...」
その言葉を聞いた2人はダストの方を見る。シーナは「どうなの?」といってきそうな表情だ。対してジャックはちょっとニヤけている。
「俺も行くわ」
その言葉を言ってダストは、ジャックに「後で覚えてろよ」と小声でいう。
なんで、そんな事を言うのだろう。こっちは近づけさせようとしてあげたのに...
後で怒られることを覚悟しながら、ジャックとダストはシーナについていく。
「僕はお義父さんに確認してくるよ」
そう言って、領主館に戻っていく。領主館にお父さんが働いているのかな。大きい屋敷だったし。ジャックが首をかしげていると、その様子を見たシーナがジャックに伝える。
「レイのお義父さんは領主様だよ、義理のだけどね」
「え...そうだったんだ」
レイの目の前でいかついおじさんとか言っちゃったよ。
「じゃあ、行きましょうか」
「あれ、レイは?」
「レイは私の家知ってるから大丈夫よ」
シーナがそう言って歩きはじめる。ジャックが「仲いいんですね」とシーナに言う。
「レイは領主様に『実戦経験を積んでこい』って私とダストの依頼に入れられるの。だから、よく家に呼んで作戦立てたりするの」
「そうなんだ...ん?」
「私とダストの依頼」?2人はチームとかなのかな。
「シーナさんとダストは依頼を一緒に受けるんですか」
「ええ、私達は『バディ』だから」
「バディ?」
「バディは、依頼を受けるときの仲間ね。依頼はバディでするのが義務なの。国は2人で仕事するのがいいと思ってるらしいよ」
バディになっているとは...ダスト、思ったより進展してんじゃんと思いながらダストの方を見る。ダストはジャックの方を見ないように目を合わせないように街を見ていた。
「ジャック君も強いから依頼来ると思うから、バディ決めたほうがいいよ。そうだ、レイと組んだらいいんじゃない?」
「...考えときます」
レイか...悪いわけではないが、できるだけ1人で仕事したいな。裏切らないとは限らないし。というか、この二人ってなんの職業何だ?
「お二人の職業ってなんですか?」
「私とダストは、魔石収集家。結構儲かるいい仕事なの」
「そうなんですか」
魔石収集家ってことは、魔物を倒して、魔石を回収するのかな。その仕事もいいな。このアミュレットの補充もできるしな。でもこの身体能力があれば、肉体労働なら余裕でこなせるし、他の仕事もいいよな。
「まあ、そういう危ない仕事は5級以上じゃないと受けれないから、まず弓兵5級になることを目標にしたらどうだ」
「確かに」
日本では、アーチェリーで食っていけたけど、こっちではそういうのは多分難しいな。多分だけど、危ない仕事の方が儲かるのだろう。だったら、5級になるのがいいのかな。
「5級になることを目指すか...」
その呟きを聞いた二人は密かに応援するのであった。
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「ここが私の家よ」
シーナの家は、白い外装に屋根がたくさんある、ヨーロッパの家みたいだった。さっきのお屋敷ほどではないが大きい。ふと他の家も見てみる。小さい家や大きい家があり、ところどころレンガがあったりと西洋の町並みだった。
「じゃあ、入ってどうぞ」
シーナがドアを開けて、ジャックとダストは中に入る。
内装は、おしゃれだった。白い壁と茶色い床。そして角にはキッチンが...ってキッチン!?この世界、ガスと水道あるの?あるなら、テレビとかもあるかも!
「じゃあ、私料理するね」
シーナはそう言って、キッチンの方へ向かう。キッチンに行ったシーナは小声でなにか呟いている。
すると、コンロのようなものに火が灯る。その様子がらして魔法でつけたのだろう。
その後、シーナは慣れた手つきで肉を投入する。ジュージューと肉が焼ける音がする。
その時、家にベルの音が響く。
「ごめん、誰か出てくれる?」
「じゃあ俺出るよ」
そう言ったダストは、玄関へと向かう。
(今の会話、恋人みたいだな)
ジャックがそんなことを考えているとダストがドアを開ける。ドアを開けた先にいたのはレイだった。
「許可取れました!」
満面の笑顔でレイはそんなことを言う。
「それは良かったな」
ダストが素直に喜ぶ。ジャックと二人きりは何かしらしてきそうで怖いと思っていたところだったからだ。
ジャックはまだ特に何もしていないのだが…可哀想にジャック。
それから、雑談をしながら時間が過ぎていく。
「みんなーごはん出来たよ!」
ジャック達は料理が出された机を見る。そこには海外映画に出るような美味しそうな洋食が置いてあった。
料理を見た3人は椅子に座る。シーナもそのタイミングで座った。
「「「「いただきます」」」」
手を合わせて挨拶をする。それから、ジャック達は楽しく雑談しながら美味しい料理を食べるのだった。




