005 「か…かっこいい」
目覚めたシーナは驚きで混乱する。
(えーーー!なななんでお姫様抱っこされてるの!っていうかわたし転んだのにけがしてないし、どういうことーーー!)
シーナの顔が赤くなってゆく。ジャックの整った顔が近いし、わたしを持っているのに全然重くなさそうだし、思ったより力強いし、わたしの瞳を見てくる。
その時、ジャックが「大丈夫?」と優しく囁いてきた。
囁いてきてシーナは驚き、咄嗟に思った事を言ってしまった。
「かっこいい…」
その言葉に反応したのは、ジャックだった。
「落としますよ?」
ジャックは顔色一つ変えずに言う。
少し驚いたが実はジャックはこう言う経験は少なくない。
いきなりだが、ジャックはその容姿から良くモテる。告白される事も多かった。告白されるたびに森岡が「リア充がぁぁーー」と叫んでいた。
まぁ、昔から人間不信のジャックは断ったことしかないのだが…
「ごっごめん。今のは忘れて」
シーナがそう言ってから、ゆっくりとシーナを下ろす。
その様子を見ていたレイは心配している。ダストはちょっと不満げだ。
「早く行くぞ」
不貞腐れたようにダストそう言い、歩き始める。
その後ろに3人がついて行く。ジャックはダストの言葉を聞いて察する。
(もしかしてダストは……これは早く解決しないと駄目だな)
そう決意し、ジャックは少し早歩きになったダストについていくのだった。
4人は、森の中の少し整備された道を歩いてる。その道の真ん中に大きい何かがいた。
シーナが「Scope」と唱える。すると、シーナの目の周りに小さい魔法陣が出てくる。魔法陣はシーナの右目の前に出来上がる。
「あれは…ボアだね」
どうやら、遠くが見えているらしい。魔法で視力を上げる事はできない。じゃあどうやって見てるんだ。そう思っていると、右目の向いてる方向の空間が歪んでいる。もしかして、空間を歪ませてスコープのようにしてるのかな?
そんな事を考えていると、ダストが驚きながら言う。
「ボアって危険度4のやつか、どうやって倒す?」
「私は、魔法での先制攻撃がいいと思う。」
「それでもいいが…ボアって気配察知能力が高いだろ?魔法射程内に入ったらすぐバレるぞ」
「確かに…じゃあどうしようか」
2人が悩んでいる所を見て、さっきの会話から思う。
あれ、これ俺が遠くからうてばよくね?
「あのー俺なら遠くから打てますよ。弓、使えるんで」
「そうか!じゃあお願いできるか?」
「わかりました、でもミスするかもしれないのでフォローお願いします?」
「任せろ」
ジャックはレイとシーナの方向を見る。2人がコクンとうなづいたのを確認して、詠唱を始める。
「Garento Kastam Earth」
いつもの詠唱で土の矢を作る。シーナみたいに短縮詠唱ができたら、いいのになと思う。短縮詠唱は、早く詠唱できて魔力消費量も少なくなる。そんな万能技術を覚えたいな、と願望を浮かべる。
ボアは横を向いている。
考え事をやめる。そして、命中させる事だけを考える。弓に矢をつがえて、照準を合わせる。狙うのは、約200m先の大きいイノシシ。
弓を最大限引いて、放つ。放った矢は音速と同じくらいのスピードでボアの方向に向かっていく。そして、横を向いていたボアの右目より少し左を貫く。
前の反省から矢との魔力を断つ。ボアは塵になって白い魔石を落として消えた。
「よっしゃ!」
静かな森にそんな声が響く。遅れてジャックが叫んだことに気づく。嬉しさのあまり、声が漏れてしまった。
ジャックが喜んだ所を見て、シーナが少し可愛いと思ったのは内緒である。
「…あ、ごめんなさい」
「ああ、別に大丈夫だ。それよりもジャック!お前すごいな。」
ダストがバンッと背中を強く叩く。さっきのボアも吹っ飛びそうな威力だ。叩かれたジャックは前に倒れそうになるが重心を後ろにして何とか踏みとどまる。叩いた本人は気にしていない様子だ。
「それにしても珍しい魔法ね。土の矢を生成する魔法。〈生成魔法〉は使わないの?」
生成魔法と言われて、ジャックは心の中で首をかしげる。生成魔法なんて本に書いてあったっけ?本は結構読んだつもりなんだけどな…
「実は、魔法に詳しくなくて〈生成魔法〉を知らないんです」
「そういう事ね…ってうん?〈生成魔法〉を知らないの!?」
「はい」
「あれよ、イノシシの時、ダストが使ってたやつ」
「ちょっと分からないですね」
シーナは驚いた表情をする。ダストもレイも少し驚いている。常識的な魔法なのだろうか。
「Create」
シーナがそう言うと、白い棒が出てくる。
「この魔法よ、ほんとに知らない?」
「はい、知りません」
この魔法を見ても特にピンと来ない。最近できた魔法なのだろうか?でもこの反応からして昔からありそうだな。
「ほんとに知らないんだ...あなた学校いったことないの?」
学校!この世界にも学校はあるんだ。ていうかこの世界はどのくらいの時代なんだ。学校があるってことは結構発展してそうだけれど。
「はい、学校いったことないです」
「そうなんだ、じゃあいつか教えてあげるわ」
「ありがとうございます!」
これは嬉しい。この世界のことも知らないので知りたいし、魔法もたくさん知りたい。ジャックにとって一石二鳥だ。
「じゃあ、話もおわったところで街に向かうか」
ダストのその言葉に3人が「はい」と返事をする。そして、4人は街の方向に歩み始める。
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その夜、テントを立てて就寝の準備をする。テントはシーナが魔法で作り上げていた。〈生成魔法〉でテントを作って、その後色をつけた。シーナが言うに、魔力が切れない限り消えないから安心して、とのことだ。
そして、昼間にボアがいたので見張り役を一人つけることになった。
順番は、シーナ→ダスト→ジャック→レイだ。
シーナの番が終わり、ダストの番がくる。ダストは火を起こして水を飲んでいる。このタイミングだ、と思いダストに近づく。その瞬間、足音が聞こえたダストは振り向いて警戒態勢をとる。そして、ジャックだと気付くと警戒を緩める。
「なんだ...ジャックか、驚かせんなよ」
「ごめんなさい、驚かせるつもりはなかったんだけど...」
「まあいい、こんな時間にどうした」
「ちょっと話したいことがありまして」
「わかった、まあ座れよ」
そう言われてジャックはダストの近くに座る。
「あの、単刀直入に言っていいですか」
「ああ」
ダストは水を飲む。結構飲んで口に水を含んだところでジャックが衝撃の一言を放つ。
「ダストってシーナさんのこと好きだよね?」
ダストはその言葉を聞いて思わず吹いてしまう。そして紛らわす。
「そっそそそっそそんなわけ無いだろう」
「いやわかりやすすぎでしょ...」
目が泳ぎまくっているし、コップを持つ手も震えていて、「そっそそそ」と明らかに動揺している。
「いやまあ伝えたいことは、俺は狙ってないから安心してってこと」
「そっそうか...って俺は狙ってねえよ」
「じゃあそうゆうことにしてあげます」
適当なことを言ってこの場を収める。ダストの顔は真っ赤だ。この反応からして、ほんとに好きなんだなと思う。それから、少し雑談をして夜を過ごした。(冷やかし多め)
(ちょっとからかいがいがあるな)と思うと、少しニヤける。まるで世界征服でも企んでそうな顔だ。実はジャックは自覚がないがものすごいいたずら好きである。盛岡には呆れられていたほどだ。
ジャックの様子を見ていたダストは本気で怖っ、と思ったらしい...
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次の日
テントを片付けた3人は、街の方向へ歩いていた。
「街まで後どのくらい?」
結構疲れていたシーナはダストに質問する。
「後20分ぐらいだな」
「え〜そんなかかるの?私暇なんだけど」
「暇ならジャックに魔法でも教えれば?」
その言葉にジャックは驚きを隠せない。ダストからすれば好きな人を他の人と近づかせているようなものだ。だって自分でゆうのも何だが俺はイケメンた。正直言って魔法の事は知りたいがいいのだろうか。
そんな事を考えているとダストが2人に聞こえないように言う。
「お前魔法好きだろ。シーナは魔法について詳しい、いい機会だ。俺の事は気にしなくていいから学べよ」
笑顔でそんな事を言われたら魔法について聞きたくなるじゃないか。それに昨日は嫉妬してたのに…成長したのね、ダスト…
ジャックはシーナの方向を見て言う。
「魔法について教えて欲しいです」
「……わかったわ、じゃああそこで休憩しましょう。ジャック君、魔法の歴史は知ってる?」
「知りません」
「じゃあそこから話すわ」
それからシーナの話が始まる。
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昔、アンゼルという人が魔法を発見しました。その発見した魔法こそ〈Garento〉。アンゼルは聖人で困った人を助ける為に魔法を使い、魔法が使いたいという人達に魔法を教えました。〈Garento〉は誰でも使いやすい魔法でどんどん広まり、人間は強くなりました。
しかし、魔物は負けないように魔法が使える魔族へと進化していき、魔法は人間だけのものではなくなりました。
その時、スティファという少年が〈防御魔法〉という魔法を作りました。〈防御魔法〉は魔族の魔法を弾くのにちょうど良く、世界中に広がっていきました。そのおかげで魔族のほとんどは殺されました。
一方その頃、魔族との戦闘だけではなく、戦闘以外の魔法を作ろうとしていたマルグという魔法使いがいました。その魔法使いが作ったのが〈生成魔法〉。〈生成魔法〉は建築する時の土台や道具を作ることができた。また、剣や盾を生成するための魔法になりました。
そして、〈Garento〉では詠唱出来ない大魔法を使うために作られたのが〈大魔法〉。起動すると詠唱する代わりに魔法陣を生成して、魔力を大量に消費して魔法陣を動かすことでできる魔法。これのおかげで魔法の幅が広がりました
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シーナの話が終わる。
「この4つの魔法が基礎魔法といわれてるわ」
「〈防御魔法〉…見たいんですけどいいですか?」
「いいよ!」
すると、シーナの前に大きい六角形の形をした白く透けているシールドが出る。大きい六角形の中には小さい六角形が2つあり合計3つの六角形ある。シーナはそれをコンコンと叩きながら言う。
「これが〈防御魔法〉。これは3重のシールド。3重でほとんどの魔法を防げるわ。大体展開できるのは3つまでが限界よ。」
「これってどうやったらできる?」
「簡単よ、まずシールドを張る所を決めてから、張る所の真ん中から、シールドを生成する感じでやるとできるわ」
ジャックはシーナに言われた通りに〈シールド魔法〉を使おうとする。大体30cm先の空中に出そうとする。内側から外側に生成する。するとシールドは出来た。
「あれ、円になってる。それにこれは1重シールド?」
「これは1重シールドね。円なのは初めてならふつうだから大丈夫。これから練習すればいいから。」
ジャック的には良くできたつもりだったのだが1重のシールドだった。まあ、防御魔法を発動させる事はできた。初級編の本の9割を使えないジャックにとって使えたというのは嬉しかった。
「あの〈生成魔法〉のやり方ってどうやるんですか?」
「〈生成魔法〉は何を作るか決めて、手をギュッて握って、手の中にある魔力を握るの。そして、手を離す瞬間にCreateと言えば生成できるよ」
ジャックはシーナに言われた通りに手をギュッと握る。手の中に魔力を溜め込み、詠唱する。
「Create!」
手を離すと、何かが生成される。それは、ふにゃふにゃした棒だった。ジャックは1mほどの剣を作ろうとしたのだが…
「これは、魔法操作が不安定な時に起こる現象ね…最初は小さい物を作るようにして練習しましょう」
「分かりました」
「まぁ、練習は街に着いてからにしましょう。ここでずっと休憩するのもなんだし」
「そうですね、行きましょう」
そうして、ジャック達はまた出発し始める。
〈防御魔法〉はATフィールドみたいな形です。
だから、1重は一つの正六角形
2重は2つの正六角形…って感じです




