004 人の襲来、そして旅立ち
アミュレットを作った翌日、ジャックは噴水に座り、地図で街がどこにあるのかを調べていた。
地図の左下には、現在地と書かれていて、「シナ村」という文字が赤い丸で囲まれているところがあった。
「ここ、『シナ村』って言うのか…」
1週間も滞在して、ジャックはやっとこの村の名前を知った。ちょっと遅い気がするが…知れたのはいいことだとと心の中で言いながら、地図を見る。
「シナ村」の東には大きな街がある。その街の所には「カルシス」という文字が書かれている。
(『カルシス』という街の方向は...東だからあっちか!)
ジャックは太陽の方向を見る。
「ここだな」
そう剣士が言って3人はシナ村の門の前に立つ。
「ほんとにここ?ただの廃村じゃん」
疑問をもった魔法使いの女が言う。
「ここだ、ほらこの看板に『シナ村』って書かれてるじゃないか」
「ホン卜だ」
信じられないといった様子で女が看板を見る。そして剣士が言う。
「まあ、入ってみようぜ。なにか手がかりがあるかもしれないし」
「それもそうね。それじゃあ行きましょう」
「わかりました」
3人が一気団結して、村の中に入っていく。大通りは最近掃除されたのかと思うほどきれいだった。そして、警戒しながら曲がり角を曲がろうとする。
その時、前を歩いていた剣士が突然止まり、小声で「待て」という。
「なにかいたの?」
「ああ...よく見えなかったが人みたいのがいた」
「人?ここには生体反応がなかったはずでしょ、ちょっと覗くからどいて」
そう言って、女はその人がいたという方向を見る。そこには水が出なくなった噴水に座ってなにか作業している緑色の髪をした少年がいた。緑の髪は、短くさっぱりしていて、ちょっとヤンキーみたいだった。その少年の顔はとても整っていて、誰がどう見てもイケメンと言われそうな顔だった。目は緑色だが光がない...まるで操られているような目だ。
その少年が何をしているかを見るために少し前にでる。その瞬間、足をすべらせて音を出してころんだ。男が後ろで「バカ!」と言っているのが聞こえる。
そして、噴水にいる男はその音がした方を見る。
「痛ったー!」
(あれは人間?)
そんなことを思ってすぐ体が動く。地図を置いて、警戒態勢をとる。
「あなたは何者ですか」
そんな言葉をかけると、曲がり角の奥から男の声がする。
「それはこっちが聞きたい。お前は何者だ」
曲がり角から、金髪の男が出てくる。男を見て少し前世について思い出してしまった。相手を刺激してはいけない。安心感を与える為に柔らかい口調にする。
「俺は旅人です。あなた達は?」
「俺らはカルシス王国の冒険者だ、ここらへんで大量のスケルトンが消えたという報告を受けてな、探索しに来たんだ。お前さん、なにか知らないか?」
「そのスケルトンなら、俺が倒しました」
「え……」
最後の言葉に反応したのは、女だった。そして、女が男にジャックに聞こえない声で言う。
「あの時、生体反応はなかった。ていうことはあのイケメンは人間じゃないってこと?」
「わからない、ドラキュラかもしれない。警戒しながら、情報を聞くぞ」
そして、男たちはもとの声の大きさに戻して質問する。
「お前さん、人間か?」
「もちろん、人間ですよ」
(嘘はついて無さそうだな)と心の中で金髪の男が思う。この男、警戒しているが敵意はない。逆に俺たちを怖がっている?…そんなわけないか。
さてどんな質問をしようかと考えていると、噴水の男が質問してくる。
「実は、街に行きたいんですけど、あなた達の街に連れて行ってくれませんか?」
少しの間、考えて剣士が言う。
「わかった、俺たちの街までお前を連れて行こう。その代わり、聞きたいことがは聞かせてもらうぞ。それで良いか?」
「はい、大丈夫です」
「よし、決まりだな!俺の名前はダストだ。」
「ジャックです。これからよろしくお願いします」
2人は握手を交わした。
そんな光景を見ていた女性は、ダストに向かって怒る。
「ちょっと〜私に相談しないで、勝手にことを進ませないでよ」
「わりぃ、わりぃ…でも、悪いやつじゃ無さそうだろ」
ダストは頭を掻きながら言い、女は「そうだけど〜」と怒りながら言った。
「まぁいいわ…ジャック君。私の名前はシーナ!これからよろしくね!」
長い金髪で白色のローブを着た、目の色が青色の女性は可愛くウインクしながら自己紹介をする。その顔で「よろしくね!」なんて言われたら惚れてしまう人もいるのではないか、と思うほどその女性はかわいかった。
そして、後ろからもう1人出てくる。とても若く、少し気弱そうな白い髪をした少年だった。
「レイです...よろしく...」
「よろしくお願いします」
ジャックはそう言って、笑顔を浮かべる。
自己紹介が終わって、ダストが言う。
「よし、それじゃあ街へ帰ろう。スケルトンを倒した証人を連れていけば、探索は成功だろう。ジャック、行く準備はできてるか」
「はい、できてます」
「じゃあ行くか!」
ジャックは噴水にある、準備していたカバンを持つ。あまり、物が詰められてなさそうなカバンを持ってきたジャックにシーナが言う。
「そんな、小さいバックで大丈夫?」
「ああ、大丈夫です」
ジャックはそう言って、パンをバグの力で出そうしてやめる。
(この能力、本に載っていなかったし普通ない能力だよな...バレたらめんどいし、頭痛は痛いし…それに、この人たちが裏切らないとは言い切れない。手の内は見せないほうがいいよな)
そう思い、三人に伝える。
「すみません、やっぱり足りないかもです。食料など少し分けてくれませんか」
「やっぱりそうよね…でも安心して!もっと滞在する予定だったから食料はたくさんあるの!」
「そうなんですか、ありがとうございます」
ジャックはバグを結構使っているが、頭痛はやっぱりなれない。食料をバグで出す必要がないことを知って喜んだ。
そして、噴水にあるバグで出した弓をもつ。すると、シーナが質問してくる。
「ジャックくん、弓使うの?」
「はい、良く使います」
「そうなんだ、珍しい弓だね〜」
シーナがジャックの弓をまじまじと見る。そして一言「良い弓ね」と言って会話が終わる。
会話が終わった所でダストが「じゃあ、出発しようか」と3人に向かって言う。
その言葉に3人は「はい」と言うだった。
出発して、歩きながら話す。
「そういえば、ジャックくんって何歳?」
そう訪ねたのは、レイだった。背丈はレイのほうが少し高く気になったのだろう。そして、ジャックは答える。
「俺?20歳だよ」
「「「え…」」」
ジャックがそう言った瞬間、3人の足が止まる。そして、みんながジャックの方を見て言う。
「20歳って...俺と同い年じゃん!」
「ジャックくんが私より2つ上だった...」
「4つも上の人に君付けしちゃった...ごめんなさい、ごめんなさい」
ダストが同い年なことに驚き、シーナは年下だと思っていたので呆気にとられ、レイは君付けしたことに対して謝っている。
ジャックからしたら驚くことではない。なぜなら、身長が160センチほどで小柄な体型だからよく間違えられる。生前もよく間違えられた。
そうして、みんなが驚いているところでジャックは口を開く。
「まあ、よく間違えられるので呼び方とかはそのままでいいですよ」
その言葉に、「わかりました...」とレイが反応する。そして、シーナが答えづらい質問を言う。
「そういえばジャック君はどこに住んでいたの?」
「ええっと.....と、とおい村です」
「どんな名前の村なの?」
「それは...」とジャックが言葉に詰まっていると、ダストがジャックを助けるように言う。
「もしかして、村の名前を知らないのか?」
「そ、そうです。村の名前を知らなくて...」
シーナが「ふーん」と言いながら顔を見つめてくる。ジャックは困った顔をしている。
そのおかげか、ダストが「この話はやめよう、聞かれたくない事情があるんだろう」と気を聞かせてくれた。
「それもそうね、ごめんねジャック君」
「別に大丈夫です」
もしかしたら、ジャックは村の名前も知らぬ奴隷とかだと思われているかも。
まぁ、話を逸らせたので別にいいか…
そんな、話をしたからか気まずい空気が漂っている。その時、その空気を壊すように、何かが出てくる。
それは5体のイノシシだった。お腹が減っているのか、とても気性が悪かった。
あれって動物なのかな?それとも魔物?…と考えていると、ダストが伝える。
「イノシシだ」
そのダストの声に反応するかのようにシーナは詠唱する。
「Fire Shoot!」
(Garentoを言ってない?!もしかして短縮詠唱?)
シーナの短縮詠唱に驚いていると、火の玉がイノシシに向かって行く。そして、衝突して爆発する。2匹のイノシシを倒す。この一瞬だけでジャックの50倍は魔法を使えている。
「creat!」
ダストがそう言うと、ダストの右手に全体が真っ白な剣が右手からどんどん上に生成されていく。約2秒程で出来上がる。剣の大きさから両手剣だろうか。
ダストがイノシシの方に急接近する。速度はだいたい時速50キロぐらいだろうか。 剣を持ってこの速度はとても速い。
といっても、ジャックが本気を出したら時速100キロは超えるのだが…
「ザシュ」という音が聞こえて、イノシシの鳴き声が聞こえなくなる。どうやら、イノシシの動体を斬ったようだ。そのまま、残りの2匹も斬る。
イノシシが倒れて、血が出ている。
(あれは魔物じゃないってことかな?消えないし…)
「ふぅ、終わった」
ダストがそう言うと3人の緊張がほぐれる。ダストがイノシシの死体を見て小声で言う。
「これ食えっかな…」
その時、ジャックが叫ぶ。
「シーナ!!」
「えっ……」
その時、シーナの横からイノシシの子供が突進してくる。子供のイノシシといっても突進されたら大怪我だ。シーナは詠唱する暇もなく、後ろに下がろうとする。
「あっ」と言う言葉を言い、シーナはつまづいて後ろに倒れそうになる。倒れるまでが遅く感じる。イノシシは突進して来てるし(もう無理だ)と思い目を瞑った。
シーナが絶望したとき近くに居たジャックが倒れそうになったシーナを支えてお姫様抱っこをする。その時には、イノシシとの距離は2mもない。
ジャックは横に飛んで避ける。そして叫ぶ。
「ダスト!」
「 ま か せ ろ!」
ダストは突進したイノシシに向かって斬る。胴体を真っ二つにする。
「シーナは大丈夫か⁈」
ダストが心配して言う。
「怪我もしていないですが気を失っているかもです」
そんなジャックの言葉を聞いてダストが安心する。
「よかった、すまない俺が油断したせいで…」
その言葉の後、シーナが目を開ける。




