014 すぺしゃるすーぱー大作戦 Ⅰ
朝、目が覚めると窓から日差しが舞い込んでいた。顔に当たるすきま風が肌寒い。でも、そのおかげで目はぱっちりと覚めている。
上にあるシーツを剥がそうとすると、腕に生温かいものが当たっていることに気づく。その瞬間、ジャックの脳みそは回転を始める。
(待て待て待て…この感触はなんだ?この温かさ、人の体温か?それに少し甘い匂いがする気がする。この匂いは昨日嗅いだな…てことはセルか?いやまて、それだと俺とセルが一緒に寝てるって言うことか?思い出せ…昨日…おれはなにも…してない!大丈夫だ、犯罪は犯してない。じゃあ、おれが寝たあとにベッドに来たってことか…じゃあどうする?謝るか?それとも挨拶が先か?…よし、やるぞ)
そして、覚悟を決めてセルの寝ている方向を向く。さっきからゴソゴソと動いているから多分起きている。
「おはようございま…す……
うぎゃぁぁああーー!!!」
「……」
ベッドの中にいた生物を見て情けない叫び声を発する。そこに居たのはセルではなく、目がギョロっとしているホラー映画に出てきそうなゾンビだった。たしか名前は…実験台1号だったっけ。
「…」
「ななな、なにしに来たの?」
「……(手に持っている魔石を見せる)」
「…!ああ!割れないようにしてくれたのか?」
「……(コクコク)」
「…ありがとうございます」
ゾンビに感謝する日が来るなんて…でも、こいつは悪いやつじゃないということは分かる。今のところ
魔石を持っててくれる、メイドさんだ。怖いけど…
「お前ってさ…喋れんの?」
「…(首を横に振る)…(どこからか紙を取り出し、魔法で何かを書く)」
ゾンビは慣れた手つきで文字を早く書いていく。そして、ゾンビはそれを見せてくる。
「いや字、達筆すぎだろ!あとイラスト可愛いな、おい!」
ゾンビが描いた紙には、
「書くことはできます(猫の絵)」
という感じだ。そして、字は書道をやってたのかと思うくらい達筆で猫の絵は、とても可愛いかった。
「はぁ、ゾンビに負けるとは…そういえばセルはどこに居るんだ?」
「…(カキカキ)」
『机に寝てる』
「…そうか…じゃあ行くか。今日何するかも知らないし、聞かないと」
「…(コクコク)」
そうして、またもや達筆すぎる字を読み、俺とゾンビはセルの元へ向かう。ゾンビがドアを開けて待つ。ほんとにメイドみたいだな…顔見なければ。
ドアの先にはセルの姿があった。うつ伏せになり、気持ちよさそうに寝ている。
「これって、起こした方がいいのか?」
「…(コクコク)」
「はぁ…はぁゾンビくんが起こせばいいんじゃないか?」
「…(フリフリ)」
「首を横に振るって事は無理なのか」
「…(コクコク)」
「はぁ…じゃあおれがやるよ…セr…」
起こす為に昨日と同じように、肩を揺さぶろうと手を置いた瞬間…俺は吹き飛ばされていた。
ドゴッという重々しい音を響かせながら壁に衝突する。良く分からないがセルの拳を見る限り、セルが殴ったのだろう。
「あれぇ…いつもより硬い………は!」
セルがふと気がついたように椅子から立ち、振り返る。そこには、壁に打ち付けられたジャックの姿だった。
「…あちゃーやっちゃった!まぁいいや…」
「よくねーよ!はぁ…なんつうー怪力だよ」
「今のは魔法だけどね」
そんな事があったがその後は普通に、少なすぎるご飯を食べたりした。ちなみに、さっき殴られたのは〈自動攻撃魔法 (オートマチック・バスター)〉というのを昨日研究していてそのまま起動していたそうだ。なんでも、自動で相手を吹き飛ばす魔法だそうだ。物騒だなぁ。
「そういえば、今日は何をすればいいんだ?」
その質問を投げかけるのと、セルの体がピクリと止まる。そして、研究中の魔法陣を消してこちらを向く。
「そうだった!ちょっ、外出るよ!早く」
「えっ、ええええええ」
セルに手を引っ張られながら家を後にする。外の空気は相変わらず肌寒いが、日光が強いからか朝よりは暑かった。
この時のジャックはまだ知らなかった。今から始まる特訓が8時間もする過酷なものだとは…
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「はぁ…はぁ」
気付けば、外は暗くなっていた。どうだろう、意外と使いこなせてるんじゃないか?
「はーい、じゃあ終わり!こっち着いてきて!」
「分かった…」
言われた通りにセルについて行く。身体は全然疲れていないのだが頭がとても疲れた。こんな感覚は初めてだ。
「ここでいいか、よし!ジャック、ここで行動を起こすんだ!!」
セルの甲高い声が森全体に響きわたる。彼女の陽気な笑い顔が目につく。見る限り楽しそうだ。
そんなことを思っている俺も内心は楽しんでいた。前世ではいい子ぶっていたからこんなになにかに反抗するのは久しぶりだ。もしかして、反抗期って奴か?
「もうすぐ、来るよ!では健闘を祈る、すぺしゃるすーぱー大作戦の開始だ!」
(名前ダセー…)




