【ある少女の話】01 私の名前
東歴1911年、6月3日…アドルフ王国に一人の赤ん坊が誕生する。
赤ん坊は、母親譲りの白い肌に父に似た黒い髪に天使のようなかわいい丸いお顔。目の色は父に似た銀色。まさに両親の子供というのが一瞬で分かる。
生まれてから数日後、両親の元に赤ん坊が届けられる。
「なんて、かわいいの?!」
母親が嬉しそうに目を輝かせながら言う。自分の子供というのが信じられないようだ。まぁ俺達の始めての子供だしな。
「ほんとにかわいいな、この白い肌…君にによく似てるよ!」
「まぁ、そんなこと言ったらこの黒い髪…あなたによく似てるわ!」
二人は新しい家族に喜びを隠せない。お互いに似た所を話し合っている。そのまま、数分ほどは赤ん坊について話した。大きな声で話しているからか、いつの間にか赤ん坊は目を覚ましていた。
「ウギャーー!!」
「あ!起きちゃった…よーしよしよし、ママですよー」
母が泣き喚いている赤ん坊をあやす。すると、赤ん坊は泣き止むどころか、もっと大きな声で泣く。
「ウギャー!ウギャー!ウギャーー!!!」
「えっなんで(泣)、かわいいお母さんですよ〜」
「ウギャーーー!!!!」
その光景を見てられなくなった父が、赤ん坊を母から譲って貰いあやしてみる。母のように、少し揺らしてみたりしてみると赤ん坊はなぜか泣き止んだ。
「あなた…ベビーシッターにならない…絶対向いてるわ」
「いや、私はこの街の領主だぞ…あと、多分向いてな…」
「向いてるわ、だからなりなさい。それに良いじゃない…領主のベビーシッター…かっこいいわよ」
「なんかいやだわ…威厳が無くなりそう」
「…もとからないでしょ(ボソッ)」
「あるわ!あと聞こえてるからな!」
「あらーごめんなさい…口が滑りましたわ…」
(こいつ…わざとだな…)
そして、文句の言葉を吐こうと口を動かそうと思った瞬間、母が遮って話題を転換させる。
「おま…」
「そういえば名前はどうする?私はなんでもいいけど」
「……そっちが決めてくれ。俺はセンスないから」
「うーん…じゃあイリュージョナルスターラーなんてどう?」
「やっぱ私が考えるよ…」
「あらーじゃあどうするの?私、結構考えたんだけど…」
「…じゃあ、セトーラなんてどうだ?」
「セトーラ?それってあの本の…」
「そう…あの本のセトーラみたいに強い心をもって欲しくて…」
母のあの名前はありえない。絶対バカにされる。そういえば母は、俺よりもセンスがないんだった。母
は俺の名前の提案を聞いて、ポカーンと口を開けて驚いている。
「あなた…それいいわね!天才だわ!そうしましょう……あなたの名前はセトーラ・ルミナスよ!」
赤ん坊に向かって、名前を伝える。セトーラはその名前が気に入ったのか「キャッキャ」と喜んでいる。その光景を微笑ましく両親が見守っている。
それが、私の名前が「セトーラ」に決まった日だった。
東歴とは異世界の◯◯年
西暦1年=東歴1年
〈次回、作戦開始〉




