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バグ・ジャック  作者: 火羅陽
第1章「すぺしゃるすーぱー大作戦!」

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013 作戦概要

 俺とセルは、家の中に帰っていった。

 ドアが閉まり、椅子につくとセルの使い魔が水を出してくれた。俺はそのことに唖然としてしまい、しばらく水を覗き込む。


「…すごいな、ゾンビが水を持ってきてくれるなんて…使い魔ってことはペットだろ?名前とかあるの?」

「奴隷一号」

「……」


 俺は、その言葉を聞いてゾンビの方を見る。そして、ゾンビの肩に手を置き、トントンと優しく叩いた。


「お前も辛かったんだな…(泣)」


 今、見ると顔に疲れが滲んでいるようにも見える。目が怖いのは、眠れていないからなのだろう。うぅ…可哀想に。


「別に酷いことはしてないよ…あんまり」

「あんまりって事は、してるじゃねえか!酷いこと!」

「いやー魔法の実験体が欲しくて…つい」

「じっ実験体…」


(思ったよりヤバそうだな…)


 実験体なんて言葉が平然と出てくるセル。この世界ではゾンビはみんなこんな扱いなのだろうか。

 ゾンビの顔が少し嫌悪な気もする。多分、モルモットにされて、薬の実験や電撃を浴びせたり、もしかして、脳をいじったりとかしてたり!

「ひぇー」

 背筋が震える。もともと少し寒かった家の中が震えるほどの寒さに変わった気がした。

 セルは、その様子をジト目で見つめながら、ため息をつく。こいつ面倒くさいな、みたいな顔をされる。


「…それで作戦だけど…詳しく説明してなかったね」

「たしかに…内容次第で俺は参加しない」

「あぁ…べつに構わないよ。でも、内容はそれほど大したことじゃないから…」


 俺はさっきの震えをなんとか抑えて、セルの話に聞き耳をたてる。自然と、体の向きはセルの方に向いていた。


「僕の作戦のかなめとなる魔法は一人だけ効かない…軍服を着た紫色の髪の女性、これで伝わるかな?」


 その言葉を聞いた瞬間、朝の事がフラッシュバックのように頭の中を駆け巡る。あの、俺をアンデットと言ってきて、攻撃したあのヤバい女。あいつがいなければ、こんなことにはなってないのに…!

 自然と怒りが出てくるが、すぐになくなる。代わりに、恐怖という感情が強まっていく。背中を叩かれた痛み…バグのやつを抜けば、今までの人生でダントツに痛かった。そこで俺が出した結論は…


「…いやなんだけど」

「まぁ待てって…説明は終わってない。ただ時間を稼ぐだけ…5分間だ。やつの攻撃をすべて避ける。簡単だろ?…しかもー今ならこんなものもついてくるよ!」


 セルはポケットの中から水晶のような石を3つ取り出す。それは、透明度の高い、キラキラした魔石だった。


「テッテレー、痛みや怪我を回復する魔道具ー!!」

「え?」

「この魔道具を割ると、身体の修復、痛みを麻痺させる。ついでに魔力も全回復!でも3つしかないんだよねーだから気をつけて使うんだよ」

「…分かった」


 セルから、魔道具を渡される。親指ほどの大きさの今にも割れてしまいそうだ。

 これが、魔道具…魔石そのものである。本で読んだときは、ボタン型だったした気がしたんだが…


「…明日の夜8時。近くの崖に彼女が来る」

「明日の夜?」

「そうだ、それまで、この実験体1号とあることをしてもらう」

「あること?」

「それはお楽しみだ…まぁ、今日は疲れただろうし寝てていいよ…明日の疲れは無くなるから…」

「?それをいうなら、今日の疲れ…だろ?」

「…そうだね、じゃあお風呂でも入る?」

「入りたいです」


 そうして、俺はセルの後ろについて行く。その後、セルは魔法でお湯を出し始めた。セルが言うに「誰でも出来る初期魔法」…らしい。

 そのまま、木のような物で造られた風呂に入ろうと思ったが、着替えがないことに気づく。


「あのー着替えって…あったりしますか?」

「ん?あー!ちょっと待ってね…〈服生成魔法プロダクローズ〉」


 すると、セルの手に光が灯り何かが生成される。それは、いまジャックが着ている服だった。

(こんな魔法もあるんだ…めっちゃ便利じゃん)


 その後、俺は風呂に入り、歯を磨き、セルに寝室の場所を教えてもらった。

 そこには、2人がギリギリ入れそうな大きいベットがあった。ここで俺が寝るのか…結構良いベッドだなぁ


「じゃあここで寝てね、おやすみ!またね」

「ああ…おやすみ」


 ふかふかのベッドだ。まるで、高級ホテルのベッドのように、白く、大きく、ひんやりするが、暖かい。

 横になると、今まで忘れていたのかと思うくらい一気に睡魔がくる。まぶたは岩のように重く、俺は夢の世界へと落ちていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふんふんふふーん♪」


 鼻歌を歌いながら、目の前にある魔道具の調節をする。今作っているのは、弓矢に取り付ける付与系魔術だ。

 あの人間、ジャックの弓の技術は素晴らしい。実は試し打ちしていたのを後ろから見ていたのだ。しかし、あの身体か固まったと思うほどのブレない重心…そして、慣れた手つきで行う射の間。今でも鮮明に覚えている。

 正直に言うと、ボクは見惚れてしまっていた。もちろん、恋愛とかそういう意味じゃなくて、単純に技術の精密さに見惚れてしまった。


(久しぶりの人間だからかな…こまにこんなに驚かせられるのはとは…)


 ボクはもう一度、ジャックが矢を放つ映像を振り返る。もう、見ることが出来ないのは悲しいけれど…これも作戦のためだ。

 ボク、…セトーラ・ルミナスの目標への1歩のためだ。もう忘れよう…


 セルは静かに息を吐き、感情を飛ばす。そして、ふと鏡に写った自分の顔を観た。褐色肌に黄色に輝く左目…しかし、セルの右目には真っ白の肌に両目が銀色の少女が写っているように見える。


「…もう捨てたんだ…その顔は」

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