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バグ・ジャック  作者: 火羅陽
第1章「すぺしゃるすーぱー大作戦!」

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011 彼女の瞳には…

 目の前で人が次々と死んでいく殺伐とした光景。ただの言葉一つで…ザシュッ、グサッと剣で首を斬られたり刺されたり、でも斬られる時も人々は文句一つ言わない。だって、逆らったらすぐ横にいる執行者に殺されるから…

 しかし、彼女の眼には人の心が写っている。


(やめてくれ!死にたくない!)

(殺さないで!)

(助けて下さい、ルミナス様…)


 心の中は阿鼻叫喚で包まれている。でも、逆らおうとはしない。だって、それがこの国に生まれたときから決められた運命なのだから…


 今日も人が天に帰る。一人、二人、三人と。その光景は普通にはありえない…でもそれが彼女の日常。そんな、日常は彼女にとって苦痛でも何でもない。なぜなら、彼女は人が死ぬということがどういう事かも分からない無知な子供だったから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ジャックは、走って城壁から離れて小屋がある森の方向へと向かう。ジャックの心には、さっきやったことでいっぱいだ。口や体を覆ったけれど、あれじゃすぐ逃げれるかなぁ。それに、顔見られるんだったら覆面でもすればよかった。


「はぁ…はぁ…」


 この異世界に着いて、始めて息切れをしたかもしれない。このガルタ人の身体能力は本当にすごいと思う。

 ものすごいスピードで森の中を駆け巡る。小屋の場所をあまり覚えていないから周りに目を凝らしながら走って行く。


「!…あれは…」


 見つけたのは日の光に照らされている茶色いログハウスだ。木をかき分けて小屋に向かって走る。そして、小屋の前で止まってドアに手を掛ける。ゆっくりとドアを押すと視界には、20分前ぐらい居た家の中だ。デジタル時計のような物、木で作られた椅子、家の中央にある木のテーブル…そして、テーブルにうつ伏せで寝ているセルの姿…


「しつれいしまーす…」


 囁くような小さい声を発し、忍び足で部屋に入る。


(これって起こしたほうがいいのか?いやまあ聞きたいこともあるし起こすか…)


 ジャックはセルの下に歩み寄る。足音でも起きない…深い眠りのようだ。セルの肩に手をかけて少し揺さぶって「おーい」と言っても起きる気配もない。そして、ジャックはある事に気づく。


(こいつ、近くで見ると可愛いな…なんか、寝てる所見てると妹っぽくて撫でたくなるな)


 そんな犯罪者のような思考に陥っていると、ジャックの手はいつの間にかセルの頭の上に乗っていた。しまった!つい撫でたくなってやってしまった。

 そして、1番起きて欲しくないこのタイミングでセルは起きる。まるで、ずっと起きていたかのような完璧なタイミング。ジャックはすぐ様、距離をとる。


「ちちちちがうんだ、俺は触ろうと思って触ったんじゃない!」


 セルは、触られた頭を触ってジャックに向かって呟く。


「えっち…」

「なんでだよ!何もしてねえよ!」


 セルはジト目でこちらをずっと見てくる。俺べつに変なことしてないよな?頭触っただけやん…キレないで…


「まぁいいや、君が人間嫌いなことは知ってるし、許してあげる」

「別に嫌いって訳じゃ…」

()()()()()のに?」

「っ!」


 その瞬間、セルはいつもの余裕の笑みを浮かべる。こちらの事を何でも知ってそうな眼を向けて。


「お前はd…」

「『どこまで知っているんだ』…でしょ。詳しくは知らないけど大体はしってるよ…例えば、バグの能力、とかもね…」

「なんで…それを…」

「まぁ僕は君の事情を知っている理解者だ、だからその警戒心…解いてほしいな」


 こいつが俺の理解者?でも、この様子から察するに何もかも知っていそうだ。でもどうして?俺は、バグの力も隠して来た。盛岡のやつだって。


「ボクはね、同情したんだ。何もかもに裏切られた君に…だから、この世界では上手く生きれるように作戦を立てたんだ…ボクは嘘はついてない…信じてくれないか?」


「…まぁ少しは信じてやる…でも…お前、本当にそれだけか?」

「それだけ、って?」


 俺は魔石を置いているとき、疑問に思ったことがある。それは、セルの目的だ。


「俺を助けたいのに、追われている俺が魔石を置く必要はあるのか?いや、ない。…もしかして、お前の作戦には他の目的があるんじゃないか?」

「…流石だね、人を疑う心は消えない…そうだよ、作戦には他の目的がある」


 エルの声が少し暗くなる。いつもの余裕の笑みはいつの間にかなくなっていた。


「ボクの目的は冤罪を晴らすこと。今、人殺しの冤罪で追われているんだ…だから、魔法で人を殺してないと証明をする。それだけだ…でも大丈夫、君の目的を果たすことは約束する…絶対だ。…改めてボクの作戦に協力してくれないか?」


 セルはこちらに手を差し出してくる。そして俺は、手を握ってセルに伝える。


「…わかった、誤解を解いてくれるなら協力してやる」

「…ありがとう」


 いつもの俺だったら、断っていただろう。しかし、彼女からは嘘は感じられなかった。言葉一つ一つに重みがあり、俺を利用している気配は微塵もない。

 すると、セルは今にも消え入りそうな小さい声で何かを言う。

「…………」


「なんか言ったか?」

「いいや、何も言ってないよ…」


 何か言った気がしたんだが…気のせいだったのか?それよりも、お腹が空いたな…パンでも出すか?いや、こいつに飯でも貰うか?


「そういえばお腹空いてる?余った果実があるから、たべていいよ」

「ほんとか!?どこにあるんだ?」

「あそこ」

「あそこってどこ?」

「この部屋じゃないあそこ」

「だからあそこじゃ分かんねえよ…」

「もうちゃんとしてよ、普通は息遣いとかでわかるだろ…」

「それで分かったら怖えよ」


 息遣いとか聞くほうがやばい奴じゃないか?そうだよなみんな!ていうか、こいつは息遣いで分かんのかよ。


「…これ分かんないなら魔法なんてできないよ」

「え…そうな…」

「ウソだよ」


 …このガキ!子供だからって大人をからかうなよ!まあ俺は大人だから!怒ったりしないんだがな…


「はい、こっち来て…あれが果実だよ」


 セルが指さした所には、2つのりんごのような果実があった。その他には………何もない。りんご一個しか見当たらない。


「…もしかしてこれだけ?」

「これだけってこれで十分でしょ、貪欲だな〜君は…」

「いや何いってんの?これは少ないでしょ」

「え?」

「うん?」


 セルは、俺の言葉を聞くと本当に何いってんだと言わんばかりの顔をしていた。これって俺が悪いの?否、俺は悪くない。だって、昼飯がこれ一つはやばいでしょ。本当にわかってなかったら怖いんだが。


「…ちなみに今日、昼どのくらい食った?」

「え…そこにある量と同じだけど?」

「…ほんとに人間?」

「人間だよ…多分」

「多分って何だよ!」


 こいつ…ほんとにこれだけしか食ってないのか?そしたら、餓死するだろ。それに人間じゃない可能性も出てきやがった。人間じゃなかったら、何だ?魔族?


「じゃあ、ちょっと食べ物採ってくるね…誰かさんが少ないって言うから…」

「いや別に採りいかなくても…」

「行ってきまーす!」

「ってあいつ聞いてねえな」


 はぁ、あいつの情緒どうなってんのか…考えてることも全然わからないし。でも…


(あの表情…ほんとに冤罪だけでする顔か?)


 さっきの彼女の表情は、重々しく、過去に悲惨なことが起こり、思い出したくもないのだろう。そうじゃなきゃ、あんな悲痛な表情はしない。過去にどんな冤罪を課せられたのだろう…


 今の俺には彼女の瞳に写っている世界は分からなかった。

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