名無編 | 一位ノ遊戯 - Ⅰ
ルークたちは来たる勇者決定戦に頭を抱えていた。予定の日は今から6日後。自分たちが蹂躙される姿をこの土地の人間数百万人に見られるのだ。これ以上の辱めなんてあるのだろうか、とルークは心底思った。
時は勇者決定戦へと着々と進んでいた。そして勇者決定戦を翌日へと控えたその日にそれは起こった。ほとんどの人間が想定していなかったであろう、後に「勇者決戦惨殺事件」と通称されるようになる事件が。
「はぁ……?」
「……へ?」
ルークとアイファーは理解が追いついていなかった。二人は決定戦に向けて、必要なものの買い出しに行かされていた。そしてちょうど今大広間に帰ってきたのだ。帰ってきた二人の目に飛び込んだのは大半は体が大きく欠損した、かつて同じ釜の飯を食ってきた仲間たちの骸。
一人は上下半身が両断され、また一人は首から上が破裂したのか、周囲に脳髄と眼球を撒き散らし息絶えていた。そこは明らかな地獄絵図だった。それに加えて変に甘ったるい不快な匂いが空気を満たしている。ルークは出てきそうになったそれをどうにか押し込んだが、アイファーは吐瀉物を床に溢している。
そして、大広間の奥に長髪の聖職者を思わせる服を身にまとった、血まみれの男が立っていた。ルークはその男を知っていた。XSAH第一位「ウィールス・ユビキタス」だった。ルークが睨みつける。ウィールスは笑みを浮かべて、こちら側に聞こえるように言った。
「そんな怖い顔しないでくれよ」
ルークは更に睨みをきかせる。これはルークなりの返答だった。ウィールスはそれを察して再び笑顔を貼り付けた。ルークがその笑顔に不快感を覚えたその時には、ルークの懐にいた。そしてルークが気づいた時にはまた先程の場所に戻っていた。ただ、先との相違点としてウィールスはアイファーの首に腕を回して、人質にしていた。
(早い……!これは……!)
「無理だ。無理だな。ああ、そうだよ」
諦めた声でルークは言う。
「ルークさ……」
それをかすかに聞き取ったアイファーは涙を浮かべる。何もおかしくはない。仲間だと思っていた人間に突如裏切られることほど堪えるものはないだろう。
「そっかぁ、諦めちゃう?」
「……」
「良かったぁ! この子も汚いし早めに処理しちゃうよ!」
「そうか」
「ルークさ……おねがい……」
「馬鹿なの?」
ルークは嘲笑と同時に足で地面を蹴る。それは明らかにウィールスを捉えていた。
「──仲間見捨てるとか、なわけなくない?」




