名無編 | 無象ト有象 - Ⅱ
エルカは両手に刃物を持つ。対してルークは素手だった。更に第21位対第1701位、周囲の人間は結果の分かりきっている戦いに興味はなかった。
観客はアイファーのみ。生憎教官は席を外している。
先に動いたのはエルカだった。
「らぁ!」
その声と同時にエルカが地面を蹴り上げ、ルークに向かって刃物を持つ手を伸ばした。そのままの軌道ならばその刃はルークの腹を貫く。しかしルークはそれをいとも容易くいなした。
「……!」
それと同時にルークはエルカの手首を掴む。直後そのまま手首を持った方の手を押し出し、肘を左手で強く引く。人間の腕は脆い。エルカの右腕は逆側に曲がる。
「調子はどうだ?」
ルークはにやけて言う。今の状況を見れば有利なのはルーク。ただ、この世界に存在するのは武術だけではない。この世界にには属性が存在する。火、水、土、風、雷、光……そして、闇。エルカは光属性だった。
「光二段 純式 速光跳弾!」
そう唱えたエルカの人差し指から光の弾が飛ぶ。だがそれはルークを捉えていなかった。当たったのはルークの背後に建てられている壁。そしてその弾は壁を焦がし跳ね返る。そして、それはそのままルークに当たった。
「グッ……」
(まずい……このまま行けばジリ貧だ!)
目で捉えられない速度に、トレーニング器具のせいで更に不規則になる跳ね返り。ルークの体に少しずつ火傷の様に見える痕が増えていく。避けるのは不可能のように見えた。ただ、ルークは体術に長けていた。
「舞脚術 流」
その瞬間、際限なく増えていた痕はピタリと止まった。この技は足の動きを一定のテンポで刻むことで敵からの攻撃を流すことができる。そして、この技は光属性に対して有効打だった。光に対して、舞脚術 流は量子トンネル効果に限りなく近い効果が発生する。
「クソっ!」
それを知らないほどエルカは馬鹿じゃない。そして、ルークに対してエルカの最大限をぶつけようとした。まさに異常。第21位が第1701位に対して本気を出すなど。
エルカが息を整える。片腕が動かない状態でこの技を使うなど無謀。
「天与式──」
「おい! 何をしている!」
エルカが技を使おうとしたとき、教官が現れた。それと同時にエルカはバツが悪そうな顔をした。
「二人共。ついてこい」
教官の声色が明らかにいつもと違う。ただでさえ怖いのに。
──ああ、これ、終わった。




