退廃的で多忙そうな人を見たことがない
隼人はすぐに来た。日もまだ暮れていなかった。
「おっすー。」
いつもの煙草が吸える居酒屋だ。
「調子どうよ。」
「ん、絶好調。」
やはり女の話だった。マッチングアプリで出会った子とセックスの相性が抜群なのだけれど、簡単にフラれたあの子のことがいまだに忘れられないとか、そんな話。
「お前は?」
「うん。」
「いや、…聞いてる?」
適当に相槌を打っているのが一旦バレました。
「お前は?って。おんな。」
「あー。さっぱりだな。」
「けっ。結局お前も忘れられてないんだよ。」
けっ、て。
「うるさいね。」
「実際そうだろー?いつまで経っても次の恋に進まないでよー。隣に女連れてると思ったら、どこかで聞いたことあるような訳のわからない関係に身を焦がしているんだからよ。そんなふうにして自分を追い込んで何になるんですかね。筋肉じゃねえんだから。」
「すごいな。すごいうるさい。」
「うるさいですか。そうですか。とにかく、お前は今すぐそのドMな恋愛癖をどうにかした方がいいぜ。ファムファタール大好き症候群。」
「おれってそんななの?」
「あぁ。まちがいなくそんなだよ。破滅したがってる。」
それなら、それはやめた方がいいだろう。鼻をかく。




