76.紅組代表は、加地ツグミ。 白組代表は、野村レオ。 黒組代表は、北白川サナ。組分けをした。俺は、目元を前髪で隠している女と同じ組。
発表された代表の名前に、どよめきが広がる。
俺と俺の隣にいる、目元を前髪で隠している女は静かだ。
俺は、加地さん以外の名前を知らないからだが。
加地さん以外は、加地さんと入った御一行様の名前か。
黒組は、北白川サナと聞こえた。
俺の隣にいる女も、サナと加地さんに呼ばれていた。
本人か?
機械音声が開始前の説明する。
「名前を呼ばれた三人は、一人ずつ、それぞれ違う壁を背にして立ちます。
他の参加者は、入りたい組の代表のいる壁に背中をつけます。
どこにも入らなかった参加者は、各組の代表が分担して殺します。
殺した人数分、生き残りポイントが高くなります。
まず、各組代表は、壁に背中をつけて、片手を挙手します。」
俺の隣の女は、片手を挙げて、挙げていない方の手で、俺の腕をつかんだ。
「私達は、運命の出会いをしたです。」
どのへんが、俺達の運命なのか、俺には思い当たる節がない。
運命が分からない、と言ったら、次は、鎌で切りつけられそうだから、黙っておく。
「北白川サナ、でいいのか?」
「私は北白川サナです。
私達は黒組として、生きるです。」
目元を前髪で隠している女の名前は、北白川サナ。
俺は、否応なしに黒組になった。
他の組に入ろうとも思えないから、渡りに船。
デスゲーム運営は、これから加地さん御一行様を殺しにかかるだろう。
運営が送り込んできたサナの動きを見て動く方が安心だ。
加地さんは、壁際によらず立ち尽くしている。
「そんな馬鹿な話がある?」
と加地さんは、憤慨している。
「レオは、どこにも行かない。私といる。私はレオといる。レオも私といる?え?レオ?」
加地さんは、加地さんを裏切らなかった男の前に回り込んで、顔を見ながら話そうとした。
加地さんを裏切らなかった男は、加地さんに対して、何も言わず、壁に向かって大股で歩き出す。
加地さんは、加地さんを裏切らなかった男に、追いついて並び話しかけた。
「レオ?レオ?どうした?何かあった?」
加地さんを裏切らなかった男は、加地さんの問いかけに答えない。
加地さんを裏切らなかった男が、壁際に移動して、片手を挙げた。
加地さんを裏切らなかった男が、白組代表、野村レオか。
「レオ?レオ?何があった?私を見ないのは、なぜ?
私に言いたいことは?」
加地さんは腕を組んで、野村レオの真正面に立った。
「ない。最初に殺されたくないなら、紅組代表として、余った壁にいっておけ。」
野村レオは、顎で、俺達のいない壁を示す。
「レオは、私と離れてもいいと?」
と加地さん。
「俺は、俺のすることをしている。」
と野村レオ。
「カウントダウンに入ります。五、四。」
と機械音声。
「殺されたいのか?」
野村レオは、加地さんを促した。
「殺されたくない。でも。私は、誰も殺さない。あなたにも、殺させない。」
と加地さんは、そう言って、あいている壁に走った。
「三、二、一。
では、入りたい組への移動を開始します。
十秒以内に移動を終了してください。
十、九。」
と機械音声。
北白川サナの黒組は、俺と北白川サナの二人。
野村レオの白組に、残り全部。
加地さんの紅組は、ゼロ。
ふーくんが倒した男達は、まだ床に転がったまま。
倒れた状態のまま、腹部、背中、胸部が動いているから、まだ生きている。
全員、意識はないまま。
猛獣用の麻酔を打たれたのか。
意識を取り戻しても、体は動かないだろう。
テン・カウントの間に移動しなかったとして、組分けに参加していないと判定された場合。
参加者が、最初に鎌を持って殺しにいく相手は、床に転がっている男達になる。
俺も。
鎌で、人を殺す。
殺さないと出られないなら、やるしかないか。
覚悟は、全然できていないけれど、できるのか、俺に。
殺さないと、今日、ここで俺は殺される。
生き延びるためには、どうすればいいか、俺は分かっている。
分かっていても。
人を殺したくない、どうしたら殺さないで済むか、を考えないではいられない俺は、加地さんが野村レオにかけた言葉を笑えない。
なんで、俺がいる場所は、デスゲームの中なのか。
詮無いことを考えてしまう。
鎌は、どうやって渡されるのか?
また天井から降ってくるのか?
楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。




