75.ロシアンルーレットは完成したが、アタリをひいたのが、新人歓迎会の参加者ではなく、ふーくんだったために、ペナルティーが発生した。
ロシアンルーレットが完成したら、どうなる?
「その男は、ロシアンルーレットが完成したら、どうなるのか、を話さなかったから、何もかも分からないままね。
分かっているのは、加地さんと、加地さんの男だけは、出られないということ。」
と可愛い女の子。
「一発しか入ってないなら、どのみち、俺達を部屋から出す気はなかった。」
と加地さんを裏切らなかった男は、ひょうひょうと答えた。
「殺す前に聞けたわよね?情報聞き出してからで良かったのに。」
と可愛い女の子は、舌打ち。
「死んでから言われてもな。」
と加地さんを裏切らなかった男。
加地さんを裏切らなかった男と可愛い女の子は、加地さんの仕事を通じて接点があったためか、気安く会話している。
「不謹慎。」
可愛い女の子と加地さんを裏切らなかった男の会話を聞いていた加地さんは、眉をひそめて、二人を非難した。
「加地さんは、加地さんの男が人を殺してからでないと、不謹慎だと批判もできない。
そういうのをなんて言うのか、私は知っているわ。
卑怯者よ。」
可愛い女の子は、加地さんを軽蔑する感情を隠さない。
「あなたには、死んだ人を悼む気持ちはないの?」
と加地さん。
加地さんは、可愛い女の子による加地さん分析には、コメントしない。
「死んだ人を悼むのは、男の後ろにいた加地さんの得意技ね。
死んだ人は死んだ人だと、私は思うけど。
庇ってくれた男に人を殺させておいて、責めるなんて、加地さんらしい。」
可愛い女の子は、クスクスと笑う。
「私は、亡くなった人の前でする話ではない、と言っている。」
と加地さん。
加地さんは、クスクスされても、冷静だ。
「加地さんの目の前で、死んだ人限定、よね?」
と可愛い女の子。
「私に突っかかりすぎ。私と切り離して考えたら?」
と加地さん。
「加地さんに溜め込んできた分を、今のうちに伝えてスッキリしておくのよ。
加地さんは、出られない。
もう、加地さんと会うことはないのよ。」
と可愛い女の子。
「俺には、いいのか?」
と加地さんを裏切らなかった男が、可愛い女の子に聞いている。
「あなたはいつか帰ってこなくなる、と、よく知っているから。」
と可愛い女の子。
「どういうこと?」
と加地さん。
「加地さんがこの人を紹介される前に、私はこの人と出会っていた。それだけ。」
と可愛い女の子。
「それだけ?そんな素振り、今まで二人とも、一度も見せなかった。」
と加地さん。
「仕事現場にいるのに?
知っている顔がいるくらいで騒ぐ?
私は仕事を優先するわ。」
と可愛い女の子。
「私は知らない。私は二人の関係を聞いていない。」
と加地さん。
「この人と加地さんとは、仕事以外に接点がないんだから、仕方なくない?」
と可愛い女の子。
「仕事以外に?」
と意外そうな加地さん。
「仕事以外で、この人にどんな付き合いがあろうと、加地さんには関係ないわ。」
と可愛い女の子。
「それ以上は喋るな。」
と加地さんを裏切らなかった男。
「嫌。この際だから、言っておく。
この人も私も、同じ人が加地さんに紹介してるんだから、そこから、察したら?」
と可愛い女の子。
「ロシアンルーレットが完成しました。
ロシアンルーレットの完成が新人歓迎会の部外者によるものだったため、ペナルティータイムが始まります。」
と機械音声。
ロシアンルーレットで、亡くなったふーくんは、参加者ではないから、ペナルティーか。
「紅組と白組、黒組に分かれて、一人一本鎌を手に持ち、他の組の組員の命を刈り取ります。」
加地さんは、隣にいる、加地さんを裏切らなかった男に話しかけた。
「人を殺せ、殺し合え?
殺せと言われたから、と言って、ハイッ殺します、と人を殺せる人はいない。」
と加地さんは、憤る。
「加地さんが寝ぼけたことしか言わないのは、一生寝たままだから?」
加地さんの台詞を聞いた、可愛い女の子は、プークスクスしている。
「二人とも、そろそろ黙れ。」
と加地さんを裏切らなかった男。
加地さんを裏切らなかった男は、加地さんのジャケットの件で、加地さんを見限ったと思っていた。
加地さんを裏切らなかった男は、加地さんを守っているが、加地さんの完全な味方であることは辞めたように見える。
加地さんを裏切らなかった男は、可愛い女の子と親しげに話す姿を、加地さんの前では見せてこなかった。
今になって、初披露。
加地さんに見せつけているのか、隠すのを止めたのか。
加地さんと加地さんを裏切らなかった男よりも、可愛い女の子と加地さんを裏切らなかった男の方が、呼吸が合っている。
二人は、考え方が似ている。
加地さんの台詞に可愛い女の子が辛辣な言葉を投げつけるのは、加地さんを裏切らなかった男が黙っている分を言葉にして、男の代わりに責めているのか。
可愛い女の子の方は男に寄り添い、加地さんは男に寄り添わせていた。
今までは、仕事の関係で一線ひいていた可愛い女の子は、一線ひくのを止めた。
加地さんとの縁が切れるとの確信が、押し込めていたものを弾けさせている。
加地さんの隣にいる男は、ふーくんに、殺せと言われて、言ったふーくんを迷わず殺している。
加地さんは、綺麗事を言って生きてきたのだろうか。
美女が綺麗事を言うのは、美女だから、そう言える、で納得してしまうところがある。
綺麗事を言うことで、生かされてきたのかもしれない。
それにしても。
紅組、白組、黒組ときたか。
草取りの鎌で、人を殺すとなると。
新人歓迎会の参加者を雑草に見立てているのか?
「紅組代表は、加地ツグミ。
白組代表は、野村レオ。
黒組代表は、北白川サナ。」
と機械音声。
楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。




