表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/488

68.扇動者は、踊りの輪を作る。踊りの輪には、まだ空きがあると、輪の外へ呼びかける。加地さんの周りを固める三人へ『三人は、これからの働きぶりを加味しよう』

押し合いへし合いは、体力を消耗する。


互いに身動きが取りづらくなって、勝敗がわかりにくい。


痒みの苛々も相まって、押す方も押される方も、性急になる。


「そうだ、そうだ。」

とすぐに同調の声があがる。


「私は、痒みに弱いから、些細な刺激でも、痒くなる。


痒さは我慢できないから、すぐ皮膚がボロボロになって、色素沈着を起こす。


今日、蚊にさされたところは、痕になって残る。


加地さんにも、私と同じ目に合わせないと、私は気が済まない。」


「あんたは何がしたいんだ?」

と親切な誰かが希望を聞いてやっている。


「傷だらけになるまで、掻きたおしてあげる。」


「私は加地さんの顔を、思う存分に掻く。」

と言う可愛い女の子の瞼は、瞼が赤く腫れ上がって傷がついている。


「瞼が痒くて、腫れ上がっても掻くのを止められない。


私の顔がダメになったらどう責任とれる?」

と可愛い女の子は参戦の意思を語った。


「顔と首と手だけじゃ掻くところが、足りない。」


「俺達全員で、掻くには少なすぎる。」


「服を脱がせばいいわ?


どうせ、服の下も無事なんだから。


服を脱がせて、全身血だらけになるまで、体中、掻いてあげればいい。」


「親切だな。痒みは皆で分かち合おう。」


「痒くて、痒くて。」

「本当に痒くて、辛いもんなあ。」


「嫌がらせの限度を超えている。」

と加地さんは、押しつぶされながら、批判を口にした。


「あんたに言われたくない。」


「加地さんは、嫌がらせでのし上がってきたくせに。」


「我が身に返ってきただけ。恨み骨髄。受け止めたらいいわ。」


「今日まで、恨まれて、恨まれて、恨まれて生きてきた甲斐があるだろう。」


「私になんの恨みが!」

と加地さんは、声を張り上げた。


「なんの、と言われても、誰のなんの恨みでも構わないんだよ。


加地さんは、恨まれているんだから、誰も助けようなんて思わないし。」


一人がせせら笑うと、同調する笑いが広がった。


「恨まれているなら、便乗しても許されるとでも!」

と加地さんは、抗議した。


「便乗?俺達がこんな場所に来て、痒みに苦しめられているのは、加地さんのせいだ。」


「加地さんが、こんな会社に行きたいと言ったからだ。」


「一人で行けばいいのに、一人で行くのは怖いとか危ないとか。


誰にも知られていないうちに、独り占めすれば、うまみが大きいから人を出してくれっだったっけ。


加地さんが、クソなことを言い出さなきゃ、俺達は、加地さんとこんな場所に来ていない。」


怒涛の反論が巻き起こる。


「そういうことだ、加地さん。」


苦情を言うようにと加地さんに勧めた男は、加地さんの囲いから外れた場所から、再度、口を開く。


「加地さんのお身内の三人さん。


加地さんを守るなんて、無理なことに気づいているのではないか?


君達に、ニュースがある。


加地さんは、これを機に引退だ。」


「勝手なことを。私は引退しない。」

と加地さんは吠えた。


「このまま帰っても、今後も同じように活躍できるはずがない。」


苦情を言うようにと加地さんに勧めた男は、素気なく言い捨てる。


「この仕事は、絶対に成功させる。」

と加地さん。


「加地さんには、不相応な仕事だったから、加地さんは責任を感じて引退したんだ。」

と苦情を言うようにと加地さんに勧めた男は、加地さんは引退と繰り返す。


「引退なんて、誰が!」

と加地さん。


「引退するか、しないか、ではなく。

加地さんは、もう引退している。」

と苦情を言うようにと加地さんに勧めた男。


「は?」

と加地さん。


「加地さんは、引退済み。チャンネルも残っていない。」

と苦情を言うようにと加地さんに勧めた男。


「勝手にできるわけが。」

と加地さんは、言いかけて、顔色を悪くした。


「加地さんの新天地での活躍と幸せをお祈りしている人に、不可能なことはない。


加地さんも、今まで、そうしてきたんだから、勝手は分かっているはずだ。」

と苦情を言うようにと加地さんに勧めた男。


「そんな、私は、現にここにいる!」

と加地さん。


「加地さんは、別の幸せな人生を見つけて、引退、チャンネルは閉鎖。


祝福コメントと罵倒コメントが入り乱れたラストになった。」


苦情を言うようにと加地さんに勧めた男は、にやりと笑った。


「加地さんのお仕事は、ちゃんと、引き継がれているから、なんの心配もない。


加地さんの今後以外は。」


「つまり、加地さんは、どうなっても、構わないってことだ!」

と一人が叫ぶ。


「もう怖くない!」


「ざまあみろ!」


加地さんに預けられた人達は、快哉を叫ぶ。


「加地さんの身内だった人達に対して、働きぶりを評価する人達が多くいた。


加地さんは、ともかく。


ここを出た後、三人には転職先を複数紹介できる。


三人の方が、加地さんより高く評価されている。」


苦情を言うようにと加地さんに勧めた男は、加地さんを守る三人の男に対して、加地さんから離れるためのアメをひけらかした。


今まで、落ち着いて反論していた加地さんは、急に落ち着きが、なくなった。


三人が、先のない加地さんを守り続けてくれるか、心配になったのか。


三人のうち、預けられた人の腕を折った二人は、顔にたかる蚊を叩き始めた。


三人のうち、蚊を叩いている二人は、加地さんの守りから離脱する。


加地さんが、死んでも問題にならない下地は出来た。


加地さん以外の参加者は、苦情を言うようにと加地さんに勧めた男はを含めて、自分達が、生きて帰れることを疑っていない。


デスゲームの中にいることに気づかないまま、扇動者は動いた。


扇動者は、三人のうち、二人の心変わりを見逃さない。


「勿論、今からの働きも加味される。」

と苦情を言うようにと加地さんに勧めた男。


同時に。


加地さんの左側にいた男が、加地さんの腕を掴んで引き寄せ、加地さんに預けられた人へと押し出す。


「助けて、嫌だ。近寄るな!」

助けを求めながら、大群の蚊にたかられている人に飲み込まれていく加地さん。


加地さんの後ろにいた男は、加地さんの右にいた男に殴りかかっている。


加地さんの右にいた男と加地さんの後ろにいた男の殴り合いに、加地さんを引き渡した左側の男が加わった。


「こんなところで、私は終わらない!」

と加地さん。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ