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54.デスゲーム運営の企画したデスゲームを乗り越える前に、参加者の私怨を振り切らないといけないとは思わなかった。

目元を前髪で隠した女は、続けた。

「独り者同士ですから、私達は仲良くします。」


仲良く?

無理。


「美女や、可愛い女の子とお話はしたいと思っても、デスゲーム内で、彼女を作りたいとは思わない。」


俺は、オブラートに包んで、お断りした。


チーム戦のデスゲームに参加するときに、フッた、フラレたの関係がある相手がいたら、と遺恨が怖い。


すると。


「お話するなら、私がいるです。」

と目元が前髪で隠れている女は返してきた。


怖い。


美女と可愛いの定義が、俺とは違う。


「俺が、他の人と話すと誰かに不都合があるから、俺を止めている?」


俺は、美醜に関係のない質問をすることにした。


「不都合など、誰にもないです。

独り者同士、協力して、この危機を乗り越えるです。」

と目元が前髪で隠れている女。


「独り者同士なら、互いに別のところに行った方がいいだろう。


一足す一は二だけど、一足す三は、四。

四の方が、二の二倍安心できると思う。」


「私といないと独り者のままです。

私を断って、いいんですか?」

と目元を前髪で隠している女。


「話がそれだけなら、行くから。」


話が長引くと、厄介なタイプだ。


俺は、目元を前髪で隠している女から離れた。


独り者、という言い方をしていたから、寄生する男を探していたんだろう。


可愛い女の子めがけて歩き出すと。


後ろから、重たそうな物体が飛んだ音がした。


その物体は、俺から三メートル弱、左にいた人の背中に当たって落ちた。


当てられた人は、悶絶していた。


横にいる人が、大丈夫か、と聞きながら、背中をさすっている。


「くそ。ふざけてんのか、おい。お前が人様に当てていいと思っているのか。」


背中に当たった人の向かいにいた人がキレている。


後ろを振り返ると、目元が前髪で隠れている女は、風呂椅子を抱えていなかった。


土のうの詰まっている風呂椅子を投げたのか。


俺が背中を向けた後すぐ。


投げられた土のうが詰まっている風呂椅子は、俺のいる位置から三メートル弱、横にズレた場所に飛んでいったのは、投げた人がノーコンだったんだろう。


タイミング的に、目元が前髪で隠れている女が、俺を狙ったとしか思えない。


うぬぼれではなく。


目元が前髪で隠れている女がノーコンだったことに感謝しよう。


一メートルもあいていない距離で背中に叩きつけられたら、俺は背骨をやられていたかもしれない。


運営の企画するデスゲームを乗り切る以前の問題があった。


参加者の私怨で殺されないようにする。


目元を前髪で隠している女に棒を持たせたら、撲殺魔になりそうだ。


目元を前髪で隠している女が、俺を狙ったと断言しない方が、トラブルは避けられる。


俺は、飛ばされた風呂椅子の件を他人事として処理することにした。


目元を前髪で隠している女は、わたわたとしている。


「違うです。私は、加地さんに当てるつもりはなかったです。」


俺に当てるつもりだったなら、その、加地さんに当てるつもりはなかったのだろう。


目元を前髪で隠している女と加地さんという人達とは旧知の間柄のようだ。


「当てただろう。」

と、加地さんの向かいにいた男は、目元が前髪で隠れている女の襟元を掴んで、捻り上げている。


男は、暴力に手慣れているように見えた。


目元が前髪で隠れている女は、バタバタと回していた手が、男に当たったことで、さらに男を苛立たせた。


「大人しくできないのか。」

と凄まれて、目元を前髪で隠している女は、抵抗を止めた。


目元を前髪で隠している女は、男に襟元を締め上げられた状態で、もじもじし始めた。


目元を前髪で隠している女は、一対一で、向き合ってくれる相手なら、惚れるタイプなのか?


俺は、空恐ろしい気持ちになった。


次の瞬間。


空恐ろしい気持ちは、全部吹っ飛んだ。


「あの人の命令です。あの人に命令されたから仕方なくです。

私、自分から加地さんに当てるなんて、考えたりしません。」


目元を前髪で隠している女は、男に襟元を締め上げられた状態で、俺を指差した。


襟元を締め上げている男が、俺を見てきた。


「こいつは、こういっているが、どうなんだ?」


どうなんだ、も、こうなんだ、も、あるか。


「初対面の俺を、身内のいざこざに巻き込むな。

身内の中で、解決できる問題だろう。」

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