415.北白川サナの父方の祖父は、元教師。北白川秀蔵氏に恨みはないと言う父方の祖父が知る孫娘の話の検証は、誰の口から出た言葉でなされる?
「お義父さん、私は、父を尊敬しています。」
と北白川サナの母。
「知っている。ちなみに、俺は息子から尊敬していると言われたことがない。」
と北白川サナの父方の祖父。
「学校で子どもに教えるのが仕事の教師と、俺の仕事は違うから。」
と北白川サナの父。
「お父さんのお仕事をそんな風に言うものではありません。先生は、立派なご職業です。」
と北白川サナの母方の祖母。
北白川サナの母方の祖母は、声を抑え気味に話している。
「子どもは、皆、教師に教わって大人になるんだがな。」
と北白川サナの父方の祖父。
北白川サナの父方の祖父には、一歩もひく気がない。
「学校という狭い世界。
生徒とその親と教育委員会と他の先生の顔しか知らないで生きていくなんて。
お父さんはよくやっている、とは思っている。」
と北白川サナの父。
「育ててくださったお父さんをそんな風に言うものではありません。」
と北白川サナの母方の祖母。
北白川サナのいない時間は。
北白川サナの母方の祖母が、潤滑油の役割を果たしてきたのかもしれない。
「お義父さんは知らない分野のことなので、ピンとこないと思いますが、父ほどの人はまだいないんです。」
と北白川サナの母。
「二人とも、それ以上は止めなさい。」
と北白川サナの母方の祖母。
北白川サナの母方の祖母は、娘夫婦に向けて手を上下させている。
「父が亡くなったことは、悔しくてたまりません。
父には、まだ出来ることがあったのです。
父を知る人は、皆、そう思っています。
お義父さんは、父のことをどう思っているんですか?」
と北白川サナの母。
「北白川くんに恨みはない。」
と北白川サナの父方の祖父。
「ありがとうございます。」
と北白川サナの母方の祖母。
北白川サナの母方の祖母のお礼は素早かった。
娘夫婦に、口を挟ませないとする意思があった。
「北白川くんと同じ業界にいながら、頭一つ抜けられないお前達が夫婦で生計を立てられたのは。
お前達に北白川くんの名前があったからだと俺は分かっている。」
と北白川サナの父方の祖父。
北白川サナの父方の祖父の舌鋒は鋭いままだ。
「父は越えられませんでした。ですが、お義父さんからそんな風に言われるほどではありません。」
と北白川サナの母。
「お父さん、言い過ぎだから。」
と北白川サナの父。
北白川サナのご両親の関係は、母の方が優勢か。
「ここまで話しても分からないお前達は、どうしようもない。サナの親はお前達二人だったのに。」
と北白川サナの父方の祖父。
「お義父さんは、何が言いたいんですか?」
と北白川サナの母。
「悪いのは北白川くんではない。」
と北白川サナの父方の祖父。
「父が悪くないのは当たり前です。馬鹿にしているんですか?」
と北白川サナの母。
「お前達が北白川くんに及ばないなりにも、親としてサナを見ていればとは思っている。」
と北白川サナの父方の祖父。
「お義父さんは、私達が親として不十分だったと言うのですか?
そんなこと、お義父さんにわざわざ言われなくても。
私達は最愛のサナを失ったばかりなんです。」
と北白川サナの母。
北白川サナの母は、両手で顔を覆った。
「お父さん、サナを失って一番悲しいのは、父親と母親である俺達だから。」
と北白川サナの父。
北白川サナの父は、妻の肩に両手を乗せて撫でている。
「私達はサナを愛して、皆悲しいんでいます。」
と北白川サナの母方の祖母。
北白川サナの母方の祖母は、収束させようとしている。
「サナの親のお前達が嬉々として、サナを北白川くんに会わせていたのは知っている。」
と北白川サナの父方の祖父。
北白川サナの父方の祖父には、ふっかけた戦いを止める気はないらしい。
「サナがお父さんに話した?」
と北白川サナの父。
北白川サナの父方の祖父は、呆れたように息子を見返す。
「俺や妻が休みには遊びに来るかと尋ねて、お前達がサナを連れて来たことはあったか?
正月休み以外で。」
と北白川サナの父方の祖父。
年一回、父方の祖父母と会ってお年玉をもらっていた北白川サナ。
一年に一回会ってお年玉をもらう関係の父方の祖父母の方が、母方の祖父母や両親よりも北白川サナと仲が良かったような会話になっている。
「年一回は会っていたのに、そんな風に思っていたんですか?」
と北白川サナの母。
北白川サナの母は、もう、両手で顔を覆っていなかった。
「お前達は嫁の実家に入り浸りたかっただけだろう。
北白川くんは、孫娘の面倒を率先して見てくれる。
お前達は上げ膳据え膳の上に、北白川くん目当てに尋ねてくる客と顔を合わせられるんだ。」
と北白川サナの父方の祖父。
北白川サナの父方の祖父の言い様では。
北白川サナのご両親が母の実家に通って、北白川サナを母方の祖父に預けていたのは、母方の祖父を訪ねてきた客とご両親の顔繋ぎのために聞こえてくる。
北白川サナのためではなかったか。
北白川サナの母方の祖父の北白川秀蔵氏の心情は分からないが。
「どうしてそんなにうちのことに詳しいんですか。まさか盗聴とかしてました?」
と北白川サナの母。
北白川サナの母は、疑惑の人物を見るような目で義父を見ている。
「うちに来るようになったサナの話が事実だったと、たった今、嫁が証明したな。」
と北白川サナの父方の祖父。
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