41.オーちゃんの逆襲は止まらない。デスゲーム内で、『死にたくない』と言った人がどうなるか、という都市伝説を知っている?
「あのな、見つけた場所が、お前のものを置いた場所とは違う。」
と割り込まれた方が正論をはく。
「移動したんだ。」
と割り込んだ方。
ナイフが勝手に?
「そんなわけ、あるか。どけ。」
と割り込まれた方。
「一つしかないなら、持っているやつのものだ。お前がどけ。」
と割り込んだ方。
「ふざけやがって。」
と割り込まれた方は、肘鉄を食らわせた。
「いってーな。ひとが穏便に済ませようとしているのに、暴力かよ!」
と割り込んだ方。
「横取りが、穏便なわけあるか。諦めろ。」
と割り込まれた方。
「はいはい、誰が諦めるんだ。」
と言うなり、割り込んだ方は、もう一人の顔面をグーで殴った。
「お前、本気でやめろ。」
と割り込まれた方は、踏みとどまって割り込んだ方の腹に一発。
「引っ込んでろ。邪魔だ。」
と割り込んだ方。
二人がナイフの取り合いをしている間に、紅一点、オーちゃんは、血を吐きながら二人に近づいてくる。
オーちゃんが、近づいてきたのを見て。
「そんなにナイフが欲しいなら、ナイフ持って戦えよ!」
と割り込まれた方は、割り込んだ方にナイフを押し付け始めた。
「お前が、欲しいなら、お前が責任持って、なんとかしろ。」
割り込まれた方は、ナイフに手を伸ばすのを止めて、割り込んだ方の背中を押し出し、ナイフとオーちゃんの前に突き出した。
「何しやがる。」
割り込んだ方が、ナイフを拾いあげようと下を向いた瞬間。
「ぎぃややあ。」
その後ろ首をオーちゃんのナイフが一閃した。
その様を見て。
「お前、何、やられているんだよ。一方的にやられ過ぎだろ!」
と割り込まれた方が叫ぶ。
後ろ首を切られた割り込んだ方は、首の傷を押さえながらも、逃げ出さなかった。
「俺はやられた。次はお前だ!」
と割り込んだ方。
なるほど、と俺は手を打った。
オーちゃんは、タツキを含む三人には、ナイフを一閃するのみで、命はとっていない。
後ろ首を切られたことで、オーちゃんから自分への攻撃は、済んだと思ったようだ。
割り込んだ方は、切られたことで、みそぎを終わらせたつもりでいるのかもしれない。
「やられたんなら、ナイフは返せ。俺が使ってやる!」
と割り込まれた方が叫ぶも、拾われようとしていたナイフは、先程のように、オーちゃんの靴に踏まれている。
「新しいナイフがあれば、切れ味の心配をしなくていい。」
オーちゃんは、スカスカとした声で、呟く。
オーちゃんは、後ろ首を一閃するために使用したばかりの、タツキが落としたナイフの持ち方を変えると、割り込んだ方の前かがみになったままの背中に、勢いよくナイフを突き立てた。
前かがみになっていた割り込んだ方は、鮮血の泡を口からこぼしながら、前のめりに倒れていく。
ナイフを突き立てられた背中には、急速で血のシミが広がっていく。
「う、嘘だ、嘘だろお、あんなん死んじまう、死んじまうよ。」
と割り込まれた方は、ガタガタ震えながら、オーちゃんの対角線上にまで逃げた。
オーちゃんは、背中にナイフが刺さった男をよけながら、新しいナイフを蹴り上げて、手にした。
「まだ、いる。」
とオーちゃんは、対角線上を見ながら言った。
オーちゃんの対角線上にいた割り込まれた方は、右に左に逃げ惑ったが、どこへ逃げてもオーちゃんは、真っすぐに歩いてくる。
「助けてくれ。俺は死にたくない。痛いのも嫌だ。
オレは、本当は、こんなところに来たくなんてなかった。
ここに来るしかなかったから来ただけで、来たくて来たわけじゃない。」
と割り込まれた方は、オーちゃんと周りに説明し始めた。
「俺は、こんな殺され方をするようなことはしていないんだよおう。」
と叫んでいた割り込まれた方は、ふいに一人に目を留めた。
割り込まれた方は、脇目もふらず、一目散に駆け寄った。
「いた、いた、いたじゃないか。
なあ、なあ。ラキちゃんだっけ。
あんた、死にに来たんだろう。あんたなら、ちょうどいい。
あんた、死にたいなら、俺と交代な。
あんたが、俺の代わりに死んでくれ。」
割り込まれた方は、ラキちゃんの肩を掴んで、唾を飛ばしながら、まくし立てている。
ラキちゃんは、肩を掴んで揺さぶってくる男に向かって、ナイフを持っている手を内側から振り抜いた。
無言で。
「死にたいというから、死なせてやる、と親切で言っているのに、何してくれるんだ?
死にたいなら、とっとと死んでしまえ。
どうせ死ぬなら、俺の役に立って、俺の身代わりになって死ね。」
男は顔を押さえて、叫んでいる。
男の顔を、斜めに横断するように、ナイフが皮膚を破った痕跡がある。
ラキちゃんのナイフは、男の顔の表面を撫でたらしい。
「デスゲームに参加して、死にたくないと言うと、どうなるか、という都市伝説を知らない?」
とラキちゃん。
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