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388.メグたんがラキちゃんの洗脳状態を解かなかったのは?

俺が問いかけたのは、メグたんだが、口を開いたのはツカサだった。


「ショウタの言うラキちゃんが洗脳されていたかどうかの判定は、洗脳されていない状態のラキちゃんを知っていると早かったね。」

とツカサ。


「私は、正義が勝たないデスゲームに参加する前のラキちゃんを知らないわ。」

とメグたん。


「洗脳前を知らないから、洗脳されたかどうか気付かないというのか?」


「ショウタに洗脳されているかどうかの見極めの経験はある?」

とツカサ。


「ラキちゃんが初めてだ。」


「洗脳されているかどうかの見極めは、これから出来るようになっておくといいわ。


見極めを失敗すると生きるのに支障が出る。」

とメグたん。


「出会う人の半数は洗脳されているような世界の話か?」


皮肉が口をついて出てしまった。


メグたんに皮肉を言うつもりなどなかったのに。


「程度の差はあれど、ある話だね。」

とツカサ。


「ツカサには、経験のある話だったか?」


「特定の他人を疑わない人や自分の思い込みから抜け出せない人の中には、そういう人もいる。」

とツカサ。


「そういう人は、盲信する傾向がある、で片付けられがち。」

とメグたん。


「生来の気質と合わさって強固な呪縛になっている人は、よほどのことがない限り目覚めないんだよね。」

とツカサ。


「このタイプは、よほどのことを体験させたら、衝撃で自分から目を覚ます。」

とメグたん。


「刷り込みに近い躾だったら、躾している方にも、躾されている方にも、洗脳の自覚がない。


行き過ぎた躾だったと気付いたら目を覚ますということだけどね。」

とツカサ。


躾か。


養育や教育の一環のていで、か。


「メグたんは、ラキちゃんの洗脳状態を解こうと考えたか?」


待機中のラキちゃんがいたのは、閉じた場所で、洗脳が起きやすく、洗脳が発覚しにくい環境だった。


正義が勝たないデスゲームに参加してからのラキちゃんの環境は、洗脳をする人がおらず、人目にさらされている。


「なぜ?」

とメグたん。


なぜ、ときたか。


「洗脳されている状態など、そのままでいいわけがない。」


「本当に?」

とメグたん。


「洗脳されている状態は、人として正常な状態ではない。」


洗脳された状態からの脱却を良しとすることについて、メグたんが懐疑的である理由は何か?


「ショウタや私は、洗脳された後のラキちゃんしか知らない。


洗脳された後のラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームのドッジボールを生き抜いた。


洗脳されていないラキちゃんだったら。


ドッジボールをクリアしていた?」

とメグたん。


メグたんに具体的な例を示されてやっと、俺は理解した。


「刑事らしくなく、弱々しいラキちゃんがドッジボールに参加していたら、どうなっていたか、か。


タツキに指示されたふーくんに殺されていたかもしれない。」


刑事らしくない、弱々しい女性としてラキちゃんが参加していたら。


サバイバルゲームまで、ラキちゃんは生きていなかった。


「ラキちゃんが刑事らしさを失ったらどうなった?


まずは、正義が勝たないデスゲームという環境に当惑したよね?」

とツカサ。


ツカサから見ても、ラキちゃんが洗脳されたままでいたことはおかしくなかった、ということか。


「正義が勝たないデスゲームには、正義が勝たないデスゲームでの倫理観があるわ。」

とメグたん。


倫理観は、属する社会に左右される、か。


「潜入捜査は、自分を見失ったときと、潜入先に感情が芽生えたときに失敗する。」

とケンゴ。


ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームに潜入捜査しているていで、現役の刑事として参加していた。


「ラキちゃんには、刑事になりたくて刑事を目指したときからの真っ当な倫理観があった。


真っ当な倫理観があったからだね。


正義が勝たないデスゲームの待機中、ラキちゃんが不安定になったのは。」

とツカサ。


「メグたんが、ラキちゃんの洗脳を解かなかったのは、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームを生き延びるためか?」


「ラキちゃんをよく見ていたショウタと、刑事として人を見てきた私、タケハヤプロジェクトに参加するほどの人生経験を積んだツカサでないと、ラキちゃんといても気付かない。


正義が勝たないデスゲームに参加していたラキちゃんは、綻びがないほど完璧に仕上がっていたわ。」

とメグたん。


「メグたんが洗脳を解こうとしなかったのは。


洗脳を解いたら、ラキちゃんが生き延びられないと判断したからだけではなく。


洗脳が容易に解けない仕上がりだったからか?」


「私がラキちゃんの洗脳を解くなら、洗脳を解く私とラキちゃんの安全を長期的に確保した上でないと。」

とメグたん。


「サバイバルゲーム中に、洗脳を解こうとして、第三者に襲われたら身も蓋もないからね。」

とツカサ。


「洗脳は、解こうとして解けるものではないか。」


「一朝一夕には、難しいね。」

とツカサ。


「洗脳を解く側にも、洗脳されている側にも、長期で見据える覚悟がいるわ。」

とメグたん。


「サバイバルゲーム中に、メグたんがラキちゃんの洗脳を解くことは可能ではなかった?」


「不可能。」

とメグたん。


即答か。


「時間をかけたら?ラキちゃんの洗脳をメグたんが解くことは可能だったか?」


「メグたんがラキちゃんのために時間をかけるという発想は、どこからきた?」

とツカサ。


「ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームを生き延びられないような大怪我をする前に、俺とラキちゃんは約束していた。


ラキちゃんより先に俺が正義が勝たないデスゲームを脱出した後、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームから出られない原因を全部解決して。


正義が勝たないデスゲームから出られるようになったラキちゃんを俺が迎えに行く。


そういう約束だ。」


俺にとっての叶えられなかった約束は。


ラキちゃんにとっての叶いようがなかった約束だ。


ラキちゃんにとって、俺との約束は、ひとときの夢にもならなかった。


「ショウタが脱出した後も、正義が勝たないデスゲームにラキちゃんは参加することになっていたのなら。


メグたんがラキちゃんの洗脳を解けたのではないか、とショウタは考えている?」

とツカサ。


「俺が正義が勝たないデスゲームを脱出した後、ラキちゃんを迎えにくるまでにかかる時間は、短くはないと覚悟していた、俺は。」


ラキちゃんは、俺の言葉を聞いてどんな気持ちで俺と約束した?


俺と約束したときのラキちゃんは、約束に前向きだった。


決して、俺がそう思いたいだけではない。


俺と約束したときのラキちゃんは、俺を待つ気でいた。


「長期で関わることになったとしても、私がラキちゃんをどうにかしようとすることはなかったわ。」

とメグたん。


「時間があって、怪我をしていないラキちゃんでも、か?」


「ケンゴは、仕事ができるわ。」

とメグたん。


「俺も、ケンゴが仕事の出来ない男だとは思わないが。」


「私は、綻びがないと言ったわ。」

とメグたん。


「メグたんから見たラキちゃんは、洗脳を解くための糸口が見つからない状態だったという意味だね。」

とツカサ。


刑事のメグたんの洗脳を解く技術より、公安のケンゴがラキちゃんにかけた洗脳が強力で、メグたんには手が出せないものだった、ということか。


「ラキちゃんが洗脳状態であることは、正義が勝たないデスゲームに、刑事らしく振る舞うラキちゃんが参加するということが、正義が勝たないデスゲームの運用と警察の判断で、必要だった、ということか。」


「正義が勝たないデスゲームは、会員制の有料サービスだからね。」

とツカサ。


「正義が勝たないデスゲームの視聴者は、ハコのやる気をなくした姿に萎えていた。」

とケンゴ。


「ハコさんの最期は、大盛況ではなかったか?」


容赦のないコメントが飛び交っていたが。


「ハコの死で盛り返した視聴者の期待は次でまた下げたんだよ。」

とケンゴ。


男性の飛び降りの件か。


「会員制の有料サービスである正義が勝たないデスゲームに、爆発的な人気はいらないんだよね。」

とツカサ。


正義が勝たないデスゲームというビジネスの話か。


「警察と、正義が勝たないデスゲームと、タケハヤプロジェクトの関係者は。


正義が勝たないデスゲームが廃れて、破産という事態だけは、なんとしても回避する必要がある。」

とメグたん。


「そうしなければ、この国は、この先の話が出来なくなるところに来ているんだよ。」

とケンゴ。


ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームを商業的に盛り返すための目玉になる参加者として期待されていた、か。

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