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385.ケンゴに抱いたラキちゃんに関する疑惑。

「組織において、上司の命令に疑念を持ち、従わないことは褒められることではないわ。」

とメグたん。


「組織内で個人プレイを推奨してうまくいくのは、個人プレイをする個人の能力や資質が集団よりも圧倒的に優位に立っている場合に限る。」

とケンゴ。


「メグたんのような、か。」


「警察全体のリスクを考えて、単独で動いているように見せていただけで、完全に単独で動いていたわけではないわ。」

とメグたん。


「周囲との軋轢を生むことなく、手広く協力者を得られる人物に、意志の強さと実行力が伴っていたからこそ、支援団体も、警察内部に既にいる支援団体の内通者も、メグたんを取り込むことは出来なかった、ということか。」


「警察内部にいる支援団体の内通者に疑念を持ったときに、疑念を持っていること気取られない腹芸が出来ることが、今の警察では必須の能力になっているよ。」

とケンゴ。


「ラキちゃんが、生きて正義が勝たないデスゲームを脱出する未来をメグたんが早々に潰したのは。


素直で頑張り屋のラキちゃんを警察に戻さないためか?」


「警察内部にいる支援団体の内通者に自分を取り込ませないようにするだけの戦略的頭脳。


警察内部で、自分を有利にするための立ち回りを臆さないだけの精神的な強さ。


ラキちゃんは、両方を持ち合わせてはいなかった。」

とメグたん。


「ハコさんだけでなく、ハコさんが指導役になっていたラキちゃんも、正義が勝たないデスゲームに参加しなければ、支援団体の毒牙から逃れられないというのが、警察の見解だったか。」


「正義が勝たないデスゲームに潜入捜査の名目で参加すると決まったとき。


ハコが感情のままに抵抗しなければ、ハコに教えを請うていたラキが不安になることはなかった。」

とケンゴ。


「ハコの想定しなかった辞令とはいえ。」

とメグたん。


「ハコさんが感情のまま口走ったことは、正義が勝たないデスゲーム待機中のラキちゃんが不安になるきっかけとなった、ということか。」


「熱意がないと、刑事にはなれない。


熱意だけでは、刑事を続けられない。」

とメグたん。


「内通者の存在と社内政治みたいなものが合わさっている組織で、実直さだけで真っ当に生きられるかというと。


ラキちゃんには、荷が重い世界だったと俺も思う。」

とツカサ。


「ツカサが、ラキちゃんを殺そうとするメグたん止めなかった理由は。


ラキちゃんがラキちゃんらしく生きていくには厳しい世界だと思っていたからか。」


ツカサは、ラキちゃんを崖から落とそうとしていたメグたんに全く動じていなかった。


ツカサが死に慣れていたわけではなく。


メグたんがラキちゃんを手に掛けることは、ラキちゃんの人生をこれ以上悪くしないと考えて口出ししなかったということか?


「メグたんが持ち合わせているような、周囲を圧倒させられるだけの強さというものが、ラキちゃんにはなかった。」

とツカサ。


「感情に引きずられて思考が浅くなる点を除けば、ハコの刑事としての能力は低くなかった。


ハコの刑事としての能力には、私も警察も一目置いていたわ。」

とメグたん。


「ハコさんの能力に一目置いていたなら、ラキちゃんには?」


「ラキちゃんは、後輩。」

とメグたん。


「ハコさんとは異なり、一面だけでも、メグたんが対等に見られるような突出したところがないラキちゃんは、総じて、メグたんの後輩以上にはならなかったね。」

とツカサ。


正義が勝たないデスゲームに参加したラキちゃんが正義が勝たないデスゲームから脱出する要件を満たさなくさせるために、ドッジボールでオウカのトドメを刺させたメグたん。


サバイバルゲームでのメグたんは、いつでもラキちゃんを殺せることを隠さずにいて、実際に殺そうとしていた。


サバイバルゲームが始まってからのメグたんは、ラキちゃんを手に掛ける相手は誰かということをラキちゃん自身に刷り込んでいた、ということはないか?


死にたくなったら、ラキちゃんにはメグたんがいる、と。


殺してほしいときは、メグたんを頼ればいい、というイメージを植え付けるために。


メグたんは、ラキちゃんを殺そうとしてみせたのではないか?


メグたんに、最初から、ラキちゃんを殺すつもりがあったなら。


ラキちゃんは、サバイバルゲームの終わりまで生きていたか?


「メグたんのラキちゃんへの行動は、支援団体が利用目的でラキちゃんに手を伸ばすことがないようにという、後輩への情けからか。」


「メグたんは、ショウタの目の前でも、先輩後輩というスタンスをラキちゃんに対して貫いていた。」

とツカサ。


「先輩後輩としてラキちゃんにかける情けがあったのに。


メグたんは、ラキちゃんの洗脳状態を解こうとはしなかった。」


公安のケンゴが自ら語ろうとしていなかったことに、俺は踏み込もうとしている。


触れることを歓迎されていない事実を俺が掘り下げるのは。


サバイバルゲームで亡くなるしかない事態に陥ったラキちゃんの思考の偏りの原因を確認しておきたいからだ。


「今、ショウタは、ラキちゃんが洗脳されていたと断言したね。」

とツカサ。


「ケンゴと話をするまでは、ラキちゃんの状態を洗脳だとまで考えなかったが、今は洗脳だと言い切れる。」


「ラキちゃんが洗脳されているのではないか、というのは疑念?


それとも確信?」

とメグたん。


「確信だ。」


「新人くんが確信に至った理由は、何だい?」

とケンゴ。


「ラキちゃんの思考と言動は、終始、ラキちゃん自身の生存や安全を軽んじていた。


また、ラキちゃんは、自身の安全を脅かす振る舞いをすることに違和感を覚えたり、怖気付いたりすることがなかった。


自身の安全を脅かされるかもしれないことへの恐怖も。


自分の命のために危険から逃れようと考えるのも。


人間の本能だ。」


人間の本能を邪険にする思考が元から備わっていたら、大人になるまで生きられるか?


後から学習したのであれば、説明がつく。


「ラキは、どんな場面でも刑事らしく振る舞っていたよ。」

とケンゴ。


ラキちゃんの特徴は、一にも二にも刑事らしさにあった。


「刑事らしい振る舞いの裏返しだかは不明だが。


自身の身の安全についての意識が希薄であるという自覚も、ラキちゃんにはなかった。」


「ラキは、刑事としての責任感が前面に出た振る舞いを見せていたよ。」

とケンゴ。


ケンゴは、微笑ましそうにラキちゃんの様子を語っている。


「ラキちゃんには、自身の安全確保よりも、刑事としての振る舞いを優先する以外の思考がなかったのではないか?」


「ラキが自分で優先順位をつけた結果、そうしていたのではない、と新人くんは言うのかい?」

とケンゴ。

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