377.俺は、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームに参加した理由が知りたい。
ハコさんと共に、社会から隔離されていたが、ハコさんが亡くなるまで、ラキちゃんは正義が勝たないデスゲームに参加していない。
当初から、ラキちゃんを正義が勝たないデスゲームに参加させることが目的なら。
ハコさんとラキちゃんの同時参加で良かったのではないか?
刑事であるラキちゃんを正義が勝たないデスゲームに参加させたいのなら。
社会から隔離させた状態で待機させておく必要はあったか?
正義が勝たないデスゲームと警察の浅からぬ関係を知っている今。
辞令があれば、刑事であるラキちゃんが、正義が勝たないデスゲームに参加することを拒否しなかっただろうという想像はつく。
だから、不可解でならない。
「ハコさんの正義が勝たないデスゲームへの同行者として、ラキちゃんは必要だったか?」
「ラキが、ハコに必要だったかについて知りたいのかい?」
とケンゴ。
「正義が勝たないデスゲームへの参加は、ラキちゃんには必要なかったのではないか?
ラキちゃんには必要がないと知りながら、正義が勝たないデスゲームへの参加をラキちゃんに求めていないか?」
正義が勝たないデスゲームに参加しなければ、ラキちゃんは長生きしたのでは?
俺との接点も無くなるが。
今よりもマシだったのでは。
「ラキは、正義が勝たないデスゲームに参加する必要がなかった。
新人くんがそう考えた理由は、何だい?」
とケンゴ。
「俺の知るラキちゃんは、刑事としての振る舞いに徹していた。
正義が勝たないデスゲーム内で、一人の女性として振る舞い始めたのは、死期を悟ってから。」
「ショウタは、警察組織に対しての不満と、警察に勤務している刑事という個人に対する印象を切り分けて考えているね。」
とツカサ。
警察が支援団体に対抗できていたら、タケハヤプロジェクトの参加者として、ツカサは正義が勝たないデスゲームに参加せずに済んだ。
「組織は、人の寄せ集めで出来るものではない。
目的に合わせた人が集まって出来るのが、組織だ。」
「警察は、職業として警察でやっていきたい人を採用しているね。」
とツカサ。
「組織に属すことは、無視し難い個人の属性ではあるから軽視はしないが、同一視もしない。」
「ショウタは、感情と有用性を分けて考えられるんだね。」
とツカサ。
ツカサは、今、この国で一番警察と密な舞台俳優だ。
警察とは、タケハヤプロジェクトに参加する前に支援団体から助けてもらえなかったという因縁があり、タケハヤプロジェクトに参加してからは協力関係にある。
警察に所属するメグたんやケンゴとは、タケハヤプロジェクトに参加する一人の参加者として交流しているツカサ。
正義が勝たないデスゲーム参加者であるカガネは、メグたんやケンゴとは異なる立ち位置でツカサと協力していたのではないか。
「分けて考えることは可能だが、俺は俺の感情を優先する。
俺が不快になることを俺は率先してやらない。」
「行動だけを見ると、ショウタは、感情で判断して、感情で動く、感情的な人物のように映るね。」
とツカサ。
「俺は、俺の感情を犠牲にしない。」
俺のためにならない我慢はしない。
「ショウタの行動指針が、やりたくないことをしないだからだね。」
とツカサ。
「ラキちゃんは、ハコさんのように、支援団体にいつ取り込まれるともしれないという人物ではなかった。
ハコさんの相棒に後輩のラキちゃんをつける。
このことは、誰の何を期待した上での決定だったのかを俺は知りたい。」
「期待かい?」
とケンゴ。
期待でなければ、何か?
「正義が勝たないデスゲームにラキちゃんを参加させる理由など、当初はなかったのではないか?」
「ラキが、正義が勝たないデスゲームに参加した理由は、既に説明したよ。
理に適っていなかったかい?」
とケンゴ。
「理に適っているのは、後付けだからではないか?」
「新人くんが、理に適っている理由を後付けだと判断した理由は、何だい?」
とケンゴ。
「正義が勝たないデスゲームにラキちゃんが参加することになった理由は。
刑事であるラキちゃんを正義が勝たないデスゲームに参加させるため、ということだが。
現役の刑事が参加することの意義は聞いた。
現役の刑事であるという条件をラキちゃんが参加する必然の説明とするには不十分だ。」
「正義が勝たないデスゲームに参加する現役の刑事は、ラキでなくても良かったと新人くんは考えているのかい?」
とケンゴ。
「ラキちゃんが選ばれた理由の真相は、これまでの話の中にはない、とショウタは思っているんだね。」
とツカサ。
「既にされた、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームに参加した理由の説明は、後付けのこじつけと言えなくもないと俺は思っている。」
「ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームに参加することになった説明は表向だから、ショウタは納得できないでいる。
だから、誰もが違和感を覚えないような説明ではなく、正確な事情を知りたい。」
とツカサ。
「新人くんが、説明は後付けだと思った理由を話してくれるかい?」
とケンゴ。
「現役の刑事を正義が勝たないデスゲームへ投入するのが目的だった、というのなら。
支援団体の手垢がついていないラキちゃんを正義が勝たないデスゲームへ参加させるよりも、支援団体に弱味を握られた人物に参加させる方が、一石二鳥ではないか?」
「ラキではなく、支援団体の内通者になった誰かを正義が勝たないデスゲームへ参加させれば良かったのに、と新人くんが考えた理由は、何だい?」
とケンゴ。
「正義が勝たないデスゲームに参加しなかったら、ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームの中で苦しみながら死なずに済んだ。
違うか?」
「ラキが亡くなったことに納得がいかない。
新人くんが真相を知りたい理由は、それかい?」
とケンゴ。
「それ以外にない。
正義が勝たないデスゲームに参加したから、俺とラキちゃんは出会った。
だが。
ラキちゃんに、元気に生きていく未来があったなら。
俺はラキちゃんに出会わずとも良かった。」
ラキちゃんの未来は、俺の本心。
「正義が勝たないデスゲームに参加した時点で、ラキには元気に生きていく未来がないと決まっていた、と新人くんは思うのかい?」
とケンゴ。
「決まっていなかった、とでも言うのか?
北白川サナの正義が勝たないデスゲームへの参加は、そのためではなかったか?
支援団体の元から北白川サナを引き離し、人の目に付くところに隔離した状態で死なせるという目的があったのではないか?
ラキちゃんに限っては違ったのだと、今さら、俺に言うつもりか?」
楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。




