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359.ハコさん、メグたん。ケンゴ。三人に共通するもの、しないもの。

「ハコさんが、集団の中にいられず一人で飛び出していくタイプ、か。


不思議だとは思わない。


水が溜まる部屋から早急に脱出しなかったハコさんは、後先を考えているように見えなかった。


刻々と迫る命の刻限に抗うハコさんの粘り強さは、刑事らしかったが。」


生きようとして最後まで粘れた、ハコさんの精神力と体力は、刑事として培われたものだと思えば、納得がいく。


「ハコは、短絡的に考えるのをやめて、感情の自制が効くようになれば、刑事として大成する道もあったわ。」

とメグたん。


「刑事としてハコさんが大成する道とは、正義が勝たないデスゲームを脱出後、警察へ戻り、警察内にいる支援団体の内通者を摘発する業務か?」


大成する道は茨の道。


「配属先がどこになるかは、ハコの仕上がりによったよ。」

とケンゴ。


ケンゴは、俺の話すハコさんの大成する方向性について肯定しなかったが、否定もしなかった。


「成果を上げることができたら。


ハコさんは、メグたんを逮捕した失態を帳消しにできるのか?」


「飛躍したね。


新人くんは、どうしてそう思うんだい?」

とケンゴ。


ケンゴの視線は、射抜くように強い。


ケンゴの視線の強さと同じだけの強さをぶつけるように、俺は見返した。


「警察内、または、支援団体の排除に動く人達全体の中で、ハコさんは不興をかっていなかったか?」


「ハコが、短絡的で感情的なところを出さないままでいられたら。


誰の不興も買わない。」

とケンゴ。


短絡的さと感情の自制の効かなさを発揮し、刑事として同期のメグたんを逮捕してしまっているハコさんは、警察内で不興をかっていたのか。


「ハコさんがメグたんを逮捕したことを警察内にとどまらず、評価するやつはいたか?」


「ハコだからね。」

とケンゴ。


ハコさんに肩入れする人は、ハコさんを刑事だと認識している人の中にはいなかった、か。


「刑事としての能力が高いが、短絡的さと感情の自制の効かなさを矯正しないと、優秀な刑事として扱えない。


それが、ハコさんに対する認識だったのではないか?」


メグたんのハコさんに対する認識は、メグたんが同期だから詳しかったのでなく、ケンゴも知っているような共通認識だったということか。


「新人くん。躾が行き届いていない一匹狼は誰も飼いたがらない。」

とケンゴ。


「上司の命令に従わない一匹狼は不要か。」


「一匹狼は、集団で出来ない成果をあげてこそ、居場所があるんだよ、新人くん。」

とケンゴ。


「噛みつく相手を間違えて仲間内に噛みついたなら、一匹狼として飼われる機会も与えられない、か。」


「そもそも、一匹狼を飼う場所は、警察内に限定しなくてもいいんだよ、新人くん。」

とケンゴ。


ケンゴの青いカラコンの入った双眸は、感情は読ませずに、圧だけをかけてくる。


器用なやつだ。


「警察で一匹狼の役にハコさんは採用されなかった、ということか。」


俺は、ハコさんにまつわるケンゴとの会話で気付いた。


「警察におけるハコさんの自己評価が、警察内のハコさんの評価と乖離していることにハコさんは気付いていなかったから、支援団体の内通者の摘発業務の辞令を拒否したのではないか?」


「ハコの自己評価は、低くなかったよ。


刑事としての能力だけで見れば、優秀な部類に入れてもよかった。」

とケンゴ。


「刑事として優秀な能力があったから、性格の難ありを矯正して、刑事としてやり直しさせる機会を用意した、というところか?」


「ハコには伝わらなかったね。」

とケンゴ。


「刑事として優秀だという自覚があるハコさんは、危険度が高い辞令を拒否したくらいで、正義が勝たないデスゲームに舞い戻らされるとは考えなかったのではないか?」


「ハコにはもう聞けないね。」

とケンゴ。


もういないから聞けないのくだりは、北白川サナに続いて二度目か。


ケンゴは再考を促すことなく、辞令を拒否したハコさんは正義が勝たないデスゲーム内へ戻る、と決定したのではないか?


ハコさんの面談には、俺ほど時間をかけていない気が俺はした。


「ハコさんの感覚では、辞令を拒否したら、正義が勝たないデスゲームを脱出後の行く先が、出世コースから外れた閑職の配属先になるだろうくらいに考えていたのではないか。」


「正義が勝たないデスゲームに逆戻りすることになったハコは。


正義が勝たないデスゲームに参加する日々を繰り返すうちに。


辞令を拒否したことを後悔するようになった。」

とメグたん。


ハコさんの正義が勝たないデスゲーム内での様子を話すのは、正義が勝たないデスゲームに参加しているメグたん。


メグたんは、正義が勝たないデスゲームに舞い戻ったハコさんの監視と、いざというときの処分を請け負っていたのかもしれない。


「正義が勝たないデスゲームの中にずっといるよりも、正義が勝たないデスゲームの外にいる方が、ハコさんには魅力的だったか?」


「正義が勝たないデスゲームの中で人を殺しながら過ごす日々と比べると。


正義が勝たないデスゲームを脱出して、警察内に巣食う支援団体の内通者を摘発する業務の方が、危険度が上がるわ。」

とメグたん。


正義が勝たないデスゲームに参加しているときよりも、警察へ復帰して辞令の業務に就く方が危険度があがるというのなら。


一度目の脱出から、正義が勝たないデスゲームへと舞い戻ってきたハコさんは。


正義が勝たないデスゲームを脱出して、わざわざ死地に向かいたがっていたことになる。


ハコさんは、死にたがりではないと思うのだが?

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