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348.キノとカガネ。ラキちゃんとケンゴ。二つの関係性で、違わないもの。サバイバルゲームでキノに死を用意する意図。

キノの思考は、キノならではだった。


「支援団体もキノは制御しきれなかったのではないか?


欲望の実現のため、キノは支援団体を利用しようと協力者であることを己の強みに変えた。


己の欲望を膨らませすぎたせいで、支援団体の支配下に置かれはしたが。


我を貫き通し、最後まで支援団体に服従しなかった。」


「支援団体の協力者は、欲望が強すぎるあまり、自身で欲望をコントロールできない。


欲望にのまれた結果、支援団体にがんじがらめにされて、人生が終わることは、珍しい事例ではないよ、新人くん。」

とケンゴ。


「キノをサバイバルゲームで終わらせたのは。」


俺は、続きを口に出すかどうか考えた。


「新人くんが思ったことを言ってみるといい。」

と促すケンゴ。


「サバイバルゲームを利用し、正義が勝たないデスゲームからカガネが脱出することが決まっていたからか?」


俺は、質問で止めて、ケンゴが何と返してくるか待つつもりだった。


「まだ続けられるだろう?」

とケンゴ。


俺に喋らせる考えを変える気は、ケンゴにはない、か。


「キノは、カガネと一緒に行動していた。


キノとカガネの関係は、キノがカガネを頼っていた。


カガネは、キノがカガネを頼りにするように振る舞って、キノがカガネから離れないようにさせていたのではないか?」


「新人くんのカガネに対する評価が高めだね。」

とケンゴ。


「カガネが正義が勝たないデスゲームから脱出すると。


キノの言動をキノに気付かれないようにコントロールすることが出来なくなる。


カガネのコントロールを失ったキノが自由に喋り出すかもしれない内容は、正義が勝たないデスゲームとタケハヤプロジェクトの運用に支障をきたすのに十分だ。」


「例えばどんな?」

とケンゴ。


「キノの所属していた芸能事務所が支援団体と協力関係にあり、キノのツカサへのつきまといには支援団体からの支援があったこと。


タケハヤプロジェクトの学生の炎上は、支援団体の指示でキノが手がけたこと。」


「支援団体の思惑にのり、学生の炎上と、ツカサをタケハヤプロジェクト送りにした件で。


キノは、参加していないのにタケハヤプロジェクトに深く関わっている。」

とケンゴは認めた。


「キノは、自身がしたことや、したことによる結果の確認、または、検証をしない。


キノ自身が見聞きし、実行してきたことを説明することもキノはしない。」


「新人くん、キノの性格や行動パターンをよく分析したね。」

とケンゴ。


「カガネは、キノを突き放しているように装いながら、最後まで突き放し通さなかった。


カガネとキノの関係性を鑑みると。


キノを野放しにしないと決めて行動している理由は、キノがカガネの重要人物だったから、という説明で十分だ。」


「キノが迂闊なことを誰にも話さないようにするには、カガネがキノといて、キノをコントロールすれば済むと新人くんは考えたのかい?」

とケンゴ。


「カガネは、キノにカガネを一番の友達だと思わせるように振る舞わなかったか?」


「その質問の意図を聞こう。」

とケンゴ。


「カガネとキノの関係性は、ケンゴとラキちゃんとの関係性に似通っている。」


「場所は違えど、カガネと俺は同じことをしていたと新人くんは考えたのかい?」

とケンゴ。


「何も気にしないキノに、誰かの名前を伏せる配慮や口を噤む賢さなどは期待できない。


キノは、誰がどんな被害をこうむる内容を喋ろうとしているか、行動に移そうとしているかを、何かする前に考えたりしない。


カガネがコントロールしないキノを一人、正義が勝たないデスゲームに残さない理由についての説明は、これで十分ではないか?」


「キノには、支援団体の協力者としての振る舞いに罪悪感を覚えなかった。


全くね。」

とケンゴ。


「キノにあったのは、被害者意識だけだ。


自身を被害者だと認識しているキノは、経験してきた不幸や、知っている情報を、キノを不幸にした情報として誰かに話してしまう。


キノが生きていたら、の話だが。」


「キノの死は口封じだと新人くんは、推測したんだね。」

とケンゴ。


「口封じもあるが、キノをサバイバルゲームで死なせた目的は、口封じだけではない。」


「新人くんの予想をどんどん話していくといい。」

とケンゴ。


「今は、そのための時間だからか?」


「ここで、何を俺に話しておくべきか分からない新人くんではないだろう?」

とケンゴ。


俺は、サバイバルゲームの参加者のうち、キノとカガネだけにあった共通点について話すときか。


「キノとカガネは、顔の同じ箇所に火傷を負っていた。


いくら仲が良くても、全く同じ場所に火傷をするか?」


「火傷するにあたり、何があったか聞いてみたいが、キノにはもう聞けない。」

とケンゴ。


俺は、キノとカガネの名前を出した。


ケンゴが口に出したのは、キノの名前だけ。


キノの名前を出す確信犯ぶりは、解答を示唆していると俺は思う。


キノとカガネは、顔から首にかけての同じ箇所に火傷を負っていた。


一方、同じときに同じ場所にいた北白川サナは、火傷を負っていない。


キノとカガネの顔から首にかけての火傷は、偶然の怪我と言えるか?


二人が同じ箇所を火傷するような誘導があったのではないか?


キノとカガネがいたら、誘導をするのはカガネ。


顔から首の同じ箇所を火傷し、どちらにも火傷を隠すすべが無い。


この先に必要だったから、カガネは、キノとお揃いの火傷を負ったのではないか。


この先とは何か、というと。


サバイバルゲームの先だ。


サバイバルゲームの終了後のカガネの予定は、サバイバルゲームに参加する前には決まっていたのではないか。


タケハヤプロジェクトには、ケンゴ。


正義が勝たないデスゲームには、カガネ。


正義が勝たないデスゲームの参加者として、外部との接触手段が絶たれているはずのカガネ。


カガネは正義が勝たないデスゲーム内の情報通。


正義が勝たないデスゲームの参加歴が俺と同じだった北白川サナも、カガネが情報通だと把握していた。


カガネが外部からの情報や連絡をとる手段は、今、俺がしている。


つまり。


正義が勝たないデスゲームに参加してクリアした後に案内される部屋で、タケハヤプロジェクトの参加者になっているケンゴと会うだけ。


サバイバルゲームでのカガネの言動から。


ケンゴがカガネにもたらす情報には、正義が勝たないデスゲーム運営であるAIの指示も含まれていることは予想がついた。


サバイバルゲームに参加したカガネとキノの火傷は、カガネが主導したものであると仮定して、キノがサバイバルゲームをクリアしなかったという結果と照らし合わせる。


この結果が、俺の予想を確信に変えた。


「顔に火傷を負っている女性参加者が二人。


正義を勝たないデスゲームを楽しむ視聴者に、キノとカガネの二人を区別する視聴者はいるか?」


「新人くんの目から見て、キノとカガネは、区別がつかないくらい似ていたと?」

とケンゴ。


「キノとカガネが同一人物に見えたことは、一度もない。


性格もだが、容姿も似ていない。」


「見た目に似ているところがないキノとカガネでも、火傷した箇所が同じなら、視聴者には見分けがつかないだろう、と新人くんは考えたんだね。」

とケンゴ。


「俺さ、正義が勝たないデスゲームの視聴者を馬鹿にしているわけではない。


似ている二人を並べると、人の目は、二人の差を探す。」


「まるっきり似ていない二人を並べたら、比較するのでは?」

とケンゴ。


「並べると比較したくなるのが人の性なら、並べなければ解決だ。」


「具体的には?」

とケンゴ。


「顔に傷を負った女性参加者を二人並べて写すのではなく、一人ずつ写すようなカメラワークにすれば。


キノとカガネの違いを見比べることは困難ではないか?」

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