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336.ラキちゃんの会いたい人。

正義が勝たないデスゲームの参加者を正義が勝たないデスゲームから交代という形でいなくする方法はただ一つ。


死あるのみ。


死は、正義が勝たないデスゲームからの正当な脱出方法になる。


正義が勝たないデスゲームを脱出するための手段は、二通りだ。


正義が勝たないデスゲームに参加したものの、まだ誰も手にかけていない俺のように、正義が勝たないデスゲームを一つずつクリアして脱出する。


正義が勝たないデスゲームに参加している中で、既に手を汚してしまっている参加者が正義が勝たないデスゲームを脱出するにはどうするか?


迷うまでもない。


ここには、今、死ぬ以外の脱出方法がなくとも、死んでやろうとは思わない俺がいる。


サバイバルゲームの生き残りが全員、サバイバルゲームの出入り口に勢揃いした今。


ようやく手榴弾を使うときがきた。


手榴弾を使う前に、ラキちゃんと話をするか。


ラキちゃんは、俺に声を聞かせてくれるか?


俺が声をかけて、ラキちゃんは答えてくれるか?


ラキちゃんからの返事が返ってこない可能性を考えてみたが、悩むのは止める。


この機会を逃したら、ラキちゃんの声を聞くことはもう出来ない。


「ラキちゃん。

ラキちゃんが言いたいことや、誰かに聞かせたいことがあるなら。


話せるだけ話してほしい。今のうちに。」


俺は、まず、俺が知りたいことを尋ねる前に、ラキちゃんが話したいことは何かないか、とラキちゃんに尋ねた。


「ラキに話しかけても、ラキは話せない。見て分からない?」

とキノ。


キノは、俺を小馬鹿にしてくる。


「話せないかどうかではなく、話したいという意思がラキちゃんにあるなら。


俺はラキちゃんの口から出るどんな音でも聞く。」


俺が大きな声ではっきりと言い切ると。


キノは、面白くなさそうに、俺から顔をそらした。


メグたんとカガネに運ばれてきたラキちゃんの方へ、俺はゆっくり歩く。


俺に掴みかかろうとして俺にはたかれていたキノも俺についてきた。


俺からラキちゃんの顔が見えて、ラキちゃんからも俺の顔が見える位置に俺は立ち止まる。


キノは、ラキちゃんを支えているカガネのところへ向かった。


北白川サナは、スタスタと歩いて俺の後ろに立っている。


「ケンゴに会いたい。」

とラキちゃん。


ラキちゃんが発する声は、痛みを訴えていたときよりも、明瞭になった。


「俺の知り合いにケンゴという人物はいない。


ラキちゃんの会いたいケンゴとラキちゃんは、いつのどんな知り合いかを俺に話してくれないか?」


今まで喋った中で、ケンゴという人物には心当たりがない。


「ケンゴと私は、私がハコさんの代わりにここに来るまでの時間を一緒に過ごしていた。」

とラキちゃん。


「ケンゴは、男、でいいのか?」


声音が変わらないように注意はしていたが、俺の心は乱れている。


「心優しくて頼りになる男の人。」

と話すラキちゃんの声には、これまで俺と話したときにはなかった温度がある。


「ケンゴとラキちゃんは、いつどこで会った?」


俺は、ラキちゃんの声の温度には触れずに質問をした。


「ハコさんと一緒に来た私は、正義が勝たないデスゲームに先に参加したハコさんが交代で戻ってくるときまで、一人で待機することになった。


何も情報を与えられずに、部屋から出ていいのかさえ分からない混乱状態にいた私をケンゴは部屋から出してくれた。


初めて会った日、私と同い年だと話していたケンゴは、ここでの暮らし方を私に教えてくれた。」

とラキちゃん。


ラキちゃんの思い出語りは、ラキちゃんの気持ちの温度が入って、熱い。


「ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームに参加するときに、ケンゴも一緒に参加したか?」


「ケンゴは、私より少し先に来たけれど、まだ呼ばれていないと教えてくれた。


呼ばれたら、行かなくてはならない、と。」

とラキちゃん。


ケンゴとラキちゃんは、ケンゴの働きかけで屈託なく話す間柄になった、か。


「ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームに参加し始めてから、ケンゴには会っていないのか?」


「正義が勝たないデスゲームの中では一度も会わなかった。


後から来ると思っていたのに。」

とラキちゃん。


ラキちゃんの声が急に沈んだ。


「ケンゴはどんな容姿をして、どんな声で話すのか教えてくれ。


俺が参加していた正義が勝たないデスゲームにいたかもしれない。」


「名前を聞いて顔が思い浮かばないなら、ショウタは会っていない。」

とラキちゃんは、ばっさり。


「ケンゴには、そんなに特徴があるのか?」


一目見たら忘れない容姿をしている男が、正義が勝たないデスゲーム待機中のラキちゃんに寄り添い、ラキちゃんの心を奪っていると思うと腹立たしくて仕方がない。


「ケンゴは、この世のものとは思えないほどの美形だから。」

とラキちゃん。


その瞬間。


俺の脳天に雷が落ちた。


一人いた。


あいつは、俺に名前を名乗らなかった。


あいつが、正義が勝たないデスゲームに参加していないのも頷ける。


あいつは、正義が勝たないデスゲームの参加者ではない。


「ラキちゃんの言うこの世のものとは思えないほどの美形について確認したい。


言葉遣いは悪くはない。


皮肉めいた話し方をすることがある。


親切な助言をくれる。


ラキちゃんくらいの年齢の男。


あっているか?」

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