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333.ラキちゃんについての不可解。

キノも北白川サナも、正義が勝たないデスゲームである運営から、死を望まれている。


つまり、サバイバルゲームでキノと北白川サナの死は覆せない。


俺は、理解しているが、キノ、北白川サナ、ラキちゃんは分かっていない。


メグたんとカガネに運ばれているラキちゃんは、痛みを訴える言葉だけを発している。


キノと北白川サナがサバイバルゲームをクリアすることはないということをラキちゃんが早くに理解していたら、ラキちゃんは今こうなっていたか?


刑事のラキちゃんは、北白川サナを助けようとしたか?


ラキちゃんの胸中を慮りたい気持ちはあるが、俺が踏み込んでいいことなのかが俺には、分からない。


ラキちゃんのしたことは、ラキちゃん自身を苦しめる結果に繋がったが、刑事として目の前にいる北白川サナや俺を守ろうとしたことは間違ってはいなかった。


俺と北白川サナが五体満足なのは、ラキちゃんのおかげ。


ラキちゃんを犠牲にして、俺は生きている。


ラキちゃんの怪我は、今すぐ急激に悪化することはない。


ただ、回復の見込みはなく、回復まで待つ時間の猶予もラキちゃんにはない。


ラキちゃん以外も、ラキちゃんの回復を待てない。


俺達がいる場所は、正義が勝たないデスゲーム。


回復するまで安静でいられる環境などない。


応急処置をする道具もなければ、応急処置ができる人もいない。


自分自身でケア出来ない怪我を負わされたラキちゃんは、痛みを訴えながら出口まで運ばれてきた。


サバイバルゲームの会場の出入り口に辿り着いた俺は、ここで次の行動に出る。


俺は、俺達の次に繋がる選択をする。


この場所に来るまでは、俺の想定通りに進んだ。


ここまでスムーズにことが運んだのは。


メグたんとツカサとカガネが、俺の想定通りに動いているのと。


キノと北白川サナが、俺に任せておけば、俺が助けてくれると自分で思考することを捨てて俺についてきたから。


俺は、キノと北白川サナが、どうとでも解釈できるような態度をとった。


カガネ、メグたん、ツカサは。


俺と会話し俺の発言を聞いてから、俺がこれからしようとしていることに協力している。


正義が勝たないデスゲームに参加している参加者が生き延びるか、生き延びられないのかの分岐点は。


自分自身が生き延びるためのカードを引く手を他人に委ねることを厭うか、厭わないかにあると俺は思う。


俺という他人に自分の未来を任せれば。


苦境に陥った自分の希望を叶えてくれるという根拠のない希望を持って自分自身での思考を止めたキノと北白川サナ。


なぜ自分達の死が決定されていて覆らないのか。


キノと北白川サナが、そのことに自力で思い至るには、もっと大きなきっかけがいる。


一方のラキちゃん。


刑事の誇りと魂を失わなかったラキちゃん。


正義が勝たないデスゲームの黒幕を探るという使命のもとに正義が勝たないデスゲームの参加者となったラキちゃんは。


潜入捜査を終える前に、一人の参加者として人生を終えることになる。


ハコさんの活躍と死を見て、ハコさんの後継として正義が勝たないデスゲームに参加したラキちゃんは、正義が勝たないデスゲーム内での生き延び方をハコさんの生き様と死に方を見て学習した。


ハコさんという実例から生き延び方を学習したはずのラキちゃんに。


正義が勝たないデスゲームを生き延びる見込みがなくなったのは。


正義が勝たないデスゲームがどんなところか、何を目的としているか、黒幕は誰かを突き止めるために犠牲者が出ることについて。


潜入捜査中のラキちゃんが助ける必要はない犠牲者だと割り切らなかったからではないか。


刑事であるラキちゃんは、俺や北白川サナという刑事ではない参加者が傷つかないようにしようとした。


刑事の在り方として、ラキちゃんの選択には賞賛しかない。


ラキちゃんが当たり前のように俺生かしてくれたことについて。


俺は、感謝しかない。


だが。


潜入捜査中であるなら。


刑事としての使命を全うしようとするなら。


ラキちゃんの選択は、結果的に正解ではなかった。


サバイバルゲーム前のラキちゃんは。


人殺しを果たした参加者は正義が勝たないデスゲームから生きて脱出することはないという正義が勝たないデスゲームのルールにより、正義が勝たないデスゲームから脱出して捜査報告に行けなくなっていた。


今のラキちゃんは、サバイバルゲームも終盤に入り、サバイバルゲーム会場の出入り口前にいるにもかかわらず、身体的な理由で潜入捜査の結果を報告することが出来なくなっている。


潜入捜査を成功させたかったのなら。


ラキちゃんの正解は。


刑事として一人で二人の男に立ち向かうのではなく。


逃げ回りながら、俺や北白川サナに男二人を押し付けることだった。


ラキちゃんの脳裏に、俺と北白川サナを犠牲にして生き延びるという発想が浮かぶことはあったか?


浮かんだとしても、実行に移すことはなかったから、ラキちゃんは自力で動けないくらいの怪我を負わされている。


警察と正義が勝たないデスゲームの双方により、ハコさんと共に社会から切り離されていたラキちゃん。


画面越しのハコさんから正義が勝たないデスゲームでの生き延び方の学習していたラキちゃん。


ラキちゃんが、俺と北白川サナを犠牲にしなかったのは、ラキちゃんの学習分野が、正義が勝たないデスゲームでの生き延び方に偏っていたからではないか。


ラキちゃんは、自分はサバイバルゲームを生き延びられると考えていたのだと思う。


俺の場合は、逃げ場のない空間にいる人間同士が出会ったときにどのような行動に出るかということを考えようとしなかったから気づかなかった。


ラキちゃんの場合は。


生き延び方以外に目がいかないような環境を整えられ、思考の方向性が限定されるように仕向けられていたのではないか。


世界からラキちゃんを隔離した者達の手によって整えられた環境が、本来ラキちゃんに備わっている知性や頭脳の使い方に著しい制限をかけたのではないか?


自身は刑事であるという自覚があったラキちゃんは。


人間の本質を理解していた。


俺よりもずっと。

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