317.佐竹ハヤトが初期の構想を改変することになったのは?
タケハヤプロジェクトの参加者であるメグたんの話を元に、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームを説明すると。
「タケハヤプロジェクトは、佐竹ハヤトの初期のアイデアを形にした試験的な仕様。
正義が勝たないデスゲームは、より実用化に向けた仕様、ということか。」
タケハヤプロジェクトを元に改良を重ねたものが正義が勝たないデスゲームという認識か。
「完成時期が後だった正義が勝たないデスゲームには、支援団体が与える影響を排除しなくてはならないという佐竹ハヤトの思いが色濃く反映された。
佐竹ハヤトは、追い詰められていく過程で感じた思いを正義が勝たないデスゲームへ流し込んだか?」
「佐竹くんの発想に時勢を反映したら、タケハヤプロジェクトになった。
正義が勝たないデスゲームは、タケハヤプロジェクトを改変したもの。
佐竹くんの認識では、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームの位置づけは、そうなっていたわね。」
とメグたん。
メグたんは、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームに取り組んでいた佐竹ハヤトの胸の内を明かすことはしなかった。
メグたんが、口外しないのなら、俺もそこには踏み込まない。
佐竹ハヤトを佐竹ハヤトたらしめた内面を秘することが、佐竹ハヤト亡き後も佐竹ハヤトを守るのなら、秘匿しておくのが一番いい。
「作り上げる過程での時勢の違いが、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームの違いか?」
「タケハヤプロジェクトの参加者が、正義が勝たないデスゲームに携われるようにした理由は、タケハヤプロジェクトのリリースが先だったから、くらいに佐竹くんは考えていたわよ。」
とメグたん。
佐竹ハヤトが、先を見据えて頭の中で計算を終わらせていたら、その胸の内が佐竹ハヤト以外に漏れることはなかったかもしれない。
「タケハヤプロジェクトの方が正義が勝たないデスゲームより人の関わりの自由度を高く設計してあるのは。
佐竹ハヤトが、そうしようと思うようなことが起きたからか。」
「大人と支援団体の思惑に引きずられる前の高校生の佐竹くんの発想のままで、リリースできる環境が整っていたら、誰も死ななかったかもしれないわね。
支援団体の手が伸びる前だったら、と今さら言っても詮無いことだけど。」
とメグたん。
俺は、佐竹ハヤトが追い詰められる前に、全部知りたかった。
佐竹ハヤト自身も知りたかったと思う。
学生の意見を発表する場に応募する前に、知っていたら、準備する時間もあった。
事前準備ができていたら、佐竹ハヤトは無念の死を迎えなくて済んだのではないか。
準備準備なしで、時勢に合わせて、構想を改変させたものを実用化にまでもっていった佐竹ハヤトが、事前情報を持っていたら?
支援団体に絡め取られて死を選ぶ事態を回避できたのではないか。
佐竹ハヤトが自死へと追い詰められた原因の一つは、事前情報がなかったこと。
支援団体がこの国に根を張り巡らしていて、国をあげて支援団体と戦わねばならないのだ、と国中に告知されていたら。
熱意を抱え、未来への希望にあふれた才能をすりつぶす事態には陥らなかった。
俺は、正義が勝たないデスゲームを出てから、何と戦っていかなくてはならないか。
対峙する相手がつかめてきた。
支援団体と支援団体の協力者だけではない。
気づいていて安穏としていた人達もだ。
支援団体が根を張り出す前から、支援団体という存在による問題の芽は見えていなかったか?
問題を問題としなかったことで安穏と過ごしていた人達が、声を上げていたら?
今よりも犠牲者は増えていたか?
支援団体によって、存在を貶められることを良しとしない風潮が社会にあったなら。
絡め取られて、名誉と命を蝕まれ、才能を利用されようとする人が声を上げて助けを求められないことには、なっていなかった。
「支援団体が巣食うせいで、真っ当な夢と希望と才能があるほど、寿命を縮められる。
支援団体が関わってこなければ、活躍できる人がいた。」
例えば、ツカサ。
「支援団体がこの国に根を張らなければ、仕事に誇りを持っていたがゆえに死に至らしめられるような人は出なかった。」
例えば、野村レオ。
「支援団体がこの国に根を張ろうとする支援団体を水際で食い止めるか、阻止できていれば。
どん底を味わうことなく生きることができた人が、何人もいた。」
何も知らず、何も知ろうとせずに、ただ生きていただけの俺の感情は、悔しさと怒りでいっぱいになっていく。
「支援団体に利用価値を見出されたら、利用されながら生きるか、殺されるかの二択よ。」
とメグたん。
メグたんは、殺されない方を選んで、利用されるようものなら、利用してやると、タケハヤプロジェクトの参加者として立っているのかもしれない。
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