304.ルールを守っていても死ぬ。ルールを破っても死ぬ。生き延びるためには?
「正義が勝たないデスゲームは、死ぬまでが一区切り。」
とカガネ。
死ぬ瞬間までをカメラに映し出すから、死んだという判定に疑いは持たれない。
使える、か。
俺は、今回のサバイバルゲームの会場を見回す。
誰も生き延びられない環境であるなら、誰かが生き延びていても、分からないようにできるのではないか。
俺は、ツカサに渡されたモノと会場の相性の良さについて考えた。
火気に弱い素材で統一された会場内に水気がないのは偶然ではない。
では。
俺の手にあるこれは、何のために俺の手元にある?
俺は、ツカサから渡された手榴弾を握りこむ。
偶然か?
ヒントか?
アシストか?
それとも、託されたのか?
使いどころを間違わずに使えば、俺のやりたいことはやれる。
手榴弾をツカサに渡されたとき。
恐ろしいものを渡してきたと思ったものだが、今は使うのが楽しみだ。
「カガネ。
カガネは、カガネとして生きて死にたいか?」
カガネは、瞠目した。
「すぐに返事はできないわ。」
とカガネ。
カガネは、俺の計画に気づいている。
その上で、俺の計画に乗るか、乗らないかを決めるつもりだろう。
「カガネには、後でまた聞く。
北白川サナとキノにも聞くから、返事はそのときに、で構わない。」
協力するにしても、誰かに合わせる気など、俺にはない。
俺のしたいことは、俺のレベルを下げてはできない。
カガネに最初に確認したのは、カガネを生かしたい俺の希望だ。
カガネは、二重スパイをやり通して今に至る。
俺は、カガネを評価している。
カガネの死は、俺にとっても、この国にとっても損失でしかない。
正義が勝たないデスゲームの運営であるAIによるカガネを不要だとする判断は、早まりすぎだと俺は思う。
カガネを生かした場合の効果を計算しきれなかったか。
計算した上で、死なせる結論に達したか。
いずれにしろ、カガネは、まだ死んでいない。
カガネを死なせないために、カガネと俺が動く時間は、まだある。
一つ言えることは。
サバイバルゲームにおいて、俺の負けはまだ確定ではない、ということだ。
俺が正義が勝たないデスゲームを脱出した後のことを考えると。
正義が勝たないデスゲームを脱出した後の俺の人生が、罠だらけになることは簡単に予想できる。
正義が勝たないデスゲームを脱出した後の俺の寝首をかきにくるやつがいないとも限らない。
俺のことを利用することしか考えていないやつは、無遠慮に距離を詰めてくるだろう。
正義が勝たないデスゲームに関わっていくとなると、俺の人生の残りの大半は、正義が勝たないデスゲームに費やすことになる。
俺の残りの人生の時間をどれだけ引き延ばすことができるかは、俺次第。
俺が正義が勝たないデスゲームを仕事にするためには、俺の仕事の邪魔をするやつらを俺から引き離し、俺を煩わせるやつらが俺に近づいてこれなくなるように動く人手が必要だ。
話していても苦にならない相手なら、尚いい。
その点で、カガネは外せない。
北白川サナとキノは、本人と話してから決めるか。
正義が勝たないデスゲームに限らず、言えることはある。
ルールを守っていては死ぬ。
ルールを破っても死ぬ。
生き延びたいなら。
やることは、一つ。
ルールを守りながら、ルールにないことをする。
これまで、俺がやりたいことについてこられるやつも、ついてきたいやつも、俺の周りにはいなかった。
佐竹ハヤトは、俺がやりたいことを見守るタイプで、協力したがってはいなかった。
俺も、佐竹ハヤトと何かをすることを考えたことはない。
俺と佐竹ハヤトの頭脳レベルは変わらなくても、似ているところはなかった。
協力しろと言われたから、と協力し合う光景を何度となく見て、成功の解釈は幅があるということは理解した。
現状が物足りないから、楽しみを見つけるために、新天地を探しに行くという発想は。
俺にはなかった。
物足りなさがレパートリーの不足によるものなら、探しに行く価値はある。
だが。
人がつまらない場合は、どうすればいいのか?
人との出会いは巡り合わせだ。
つまらないことの積み重ねをして生きて死ぬなら。
つまらないことには極力手を出さずにいようとさえ思ってきた。
今から、俺がやろうとしていることは。
つまらなさ、ゼロ。
楽しみだ。
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明日2024年11月22日から、明明後日2024年11月24日まで、毎日更新を一度止め、週明けの月曜日からの再開を予定しています。
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