298.佐竹ハヤトは、親切でお人好しだから、タケハヤプロジェクトの学生とその保護者に利用されていた?佐竹ハヤトの理解者が、二番手の頭脳を持つ北白川サナではなくモエカだったのは?
正義が勝たないデスゲームを運用するAIと、正義が勝たないデスゲームの実働部隊であるタケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族は、互いに関係を切れない。
正義が勝たないデスゲームの運用には、実働部隊が必要だから、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族がいなくなるのは困る。
タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族は、生きていく場所がなくなるのが困るから、正義が勝たないデスゲームを運用するAIから逃げ出さない。
両者が、互いに切れない関係だった結果。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、タケハヤプロジェクトの学生が利用しようとしていた俺を殺す決定を下した。
俺を社会から取り除くことで、タケハヤプロジェクトの学生が、俺を利用することを防ごうとした。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、下剋上を企てているタケハヤプロジェクトの学生とその家族に制裁を加えるという選択をしなかった。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIに、俺を生かす理由を与えるには、どうすればいいか?
正義が勝たないデスゲームを運用するAIに俺を生かすことの有用性を認めさせるか?
タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族の下剋上を頓挫させて、正義が勝たないデスゲームを運用するAIに逆らわなくする、という提案をしたくても。
正義が勝たないデスゲームを脱出しなくては、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族に会えない状況では、俺を殺した方が早い、という結論になる。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIが俺を生かす決定をするためには何をしたらいいか、と俺は考えて、ふと気づいた。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIの現状を改善するという攻略が困難なら、別の方向から攻めればいい。
佐竹ハヤトは、俺を死なせる予定で、正義が勝たないデスゲームを作ったか?
佐竹ハヤトに、正義が勝たないデスゲームを利用して俺を殺す利点があったか?
佐竹ハヤトに、正義が勝たないデスゲームを利用して俺を殺す予定がなかったのなら、俺は正義が勝たないデスゲームでは死なない。
俺がまだ気づいていない、俺が死なないための方法を見つけたら、俺は生きて正義が勝たないデスゲームを脱出できる。
俺が死なないための方法、か。
手探りしたくても、どこの何に手をつっこめばいいのか、分からない。
「佐竹ハヤトは、正義が勝たないデスゲームを作りながら、何を考えたのか?」
俺が再び、行き詰まっていると。
カガネが、口を開いた。
「金剛ショウタから見て、佐竹ハヤトくんは、どんな人だった?」
とカガネ。
どんな?
佐竹ハヤトの人物評など考えてこなかった。
強いてあげるなら。
「唯一、俺と話が合った。」
俺が思いつくのは、それくらいだ。
カガネは、俺の佐竹ハヤト評にコメントしなかった。
「佐竹ハヤトくんは、親切なお人好しだから、タケハヤプロジェクトを離脱した学生とその家族に、一方的に利用されたと思う?」
とカガネ。
カガネの聞き方から、カガネが佐竹ハヤトの人となりをどう見ていたかが伝わってくる。
「佐竹ハヤトは、親切ではあったが、お人好しではなかった。」
カガネは、俺の佐竹ハヤト評に頷く。
「佐竹ハヤトくんは、才能を活かせる陽気さがあった。」
とカガネ。
「佐竹ハヤトは、自身の才能に関して、過大評価も過小評価もしなかった。
他人に対しても。」
カガネは頷いていている。
「タケハヤプロジェクトの開始時から、誰をどう配置するか、どんな割り振りをするかを決めていたのは、誰だと思う?」
とカガネ。
「佐竹ハヤトだろう。佐竹ハヤトの構想を任せられる人がいないのなら、佐竹ハヤトは自分でやる。」
「割り振りを決めるとき、佐竹ハヤトくんは、学生の能力と資質以外を判断材料にしなかった。」
とカガネ。
人となりと人間関係を、佐竹ハヤトは考慮に入れなかったのか。
「佐竹ハヤトは、他人の能力を測ることに長けていた。
できもしないと分かっていることに、他人をかませない。」
「佐竹ハヤトくんは、周りをよく見ていたわ。
佐竹ハヤトくんの求めるレベルは、佐竹ハヤトくんと同等以上。
二番手のサナの能力を推し量った後の佐竹ハヤトくんは、徹底していた。
モエカを側にいさせても、モエカの場所まで、サナに踏み込ませなかった。」
とカガネ。
「佐竹ハヤトと、佐竹ハヤト以外との能力の開きは大きく、埋めがたかった、としても。
タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、正義が勝たないデスゲームに後任が不要であることを理解できないほどの理解度だったのか?
佐竹ハヤトと最も近い立場にいたモエカ以外、理解できなかったのか?」
「佐竹ハヤトくんの構想を実現するためにどうすればいいか、が想像できない程度の賢さではね。
そのへんにいる賢さ程度では、完全なる自立自走型AIをSFとしかとらえられなかった。」
とカガネ。
「モエカが、佐竹ハヤトの側にいたのは、知識や技術に優位性があったからではなく、佐竹ハヤトの構想の実現を疑わなかったからか。」
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