286.北白川サナとカガネとキノの三人の関係。
北白川サナは、何も言わない。
何も言えないのかもしれない。
俺を生かして正義が勝たないデスゲームから脱出させたい理由があっても、その理由を話そうとはしない北白川サナ。
北白川サナは、自身が正義が勝たないデスゲームを生きて脱出できる、と考えているからか？
生きて脱出したら、正義が勝たないデスゲームの外で、俺に話すことができる、と考えているのではないか。
俺は、今、北白川サナが話そうとしないことは、二度と聞くことはできないと考えている。
北白川サナは、このサバイバルゲームで、死ぬ。
俺は、そう確信している。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、どういう経緯かは不明だが、北白川サナを正義が勝たないデスゲームに参加させた。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、正義が勝たないデスゲームを使い、支援団体との繋がりがある、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームの関係者を消そうとしている。
というのが、俺の結論だ。
俺と北白川サナの話を大人しく聞いていたキノは、何かを閃いたようだ。
「サナが死ねば、サバイバルゲームは、終わる？」
とキノが、俺に確認してくる。
キノも、俺と同じ結論に達したらしい。
北白川サナが、死ねば、サバイバルゲームが終了する、と俺がキノに肯定した場合。
キノは、どんな行動をするか。
考えるまでもない。
「キノ。」
と北白川サナは、どすの利いた声を出した。
「何？
サバイバルゲームを終了させられる方法があるなら、知りたいに決まっている。
サナだって、サバイバルゲームを終わらせなかったら、どうなるか分からないわけではないでしょ？
私は、ここで死にたくない。」
とキノ。
キノの利己的さは、突き抜けている。
北白川サナが口を開く前に、カガネが、割って入った。
「キノ、先に謝っておくわ。ごめんね？頑張ってね。」
とカガネ。
「何？急に？」
と警戒するキノ。
「ねえ、サナ。
キノは、支援団体の指示でサナを炎上させた張本人。」
とカガネ。
「本当、です？」
と北白川サナは、カガネに食いつく。
「いきなり、何？
私のことなど、今、関係ある？」
とキノ。
北白川サナを炎上させた件について、カガネに暴露されかけているにもかかわらず、焦る様子もなければ、隠そうとする様子もないキノ。
「炎上が起きなければ、サナの生活は、どうなっていたと思う？」
とカガネ。
北白川サナの顔は、強張っていく。
「あんたは、何を考えている？」
とキノは、カガネの真意を探ろうとしている。
「サナのやり場のない思いを発散する先として、キノのことを売り込むわ。」
とカガネ。
「あんただって、支援団体に協力していたくせに！」
とキノ。
「カガネも？本当、です？」
と北白川サナ。
「官僚のくせに、支援団体に魂を売った！」
とキノは、カガネを指さした。
「私の魂は、売っていないわ。
目当ての男と仲良くなるために、支援団体に近づいただけ。
目当ての男がいなくなったときに、私と支援団体の関係は、終わったわ。」
とカガネ。
「サナ。カガネの目当ての男は、タケハヤプロジェクトの官僚で、支援団体に殺されている。」
とキノ。
「本当、です？」
と北白川サナは、暴露話に食いついた。
「本当。本当。私より極悪。」
とキノ。
カガネは、キノと北白川サナの会話に焦る様子を見せない。
「支援団体の依頼だった、ツカサを嵌める仕事にしくじったせいで、支援団体が全てだったキノと、私は違うわ。
私の場合。
支援団体に協力するかしないか、の主導権は、私にあったわ。」
とカガネは、笑い声をあげたあと、ふと、真面目な顔になった。
「他にも、キノは、支援団体から手に入れた情報を有効活用して、炎上したタケハヤプロジェクトの学生の情報をまとめを作っていたわ。」
とカガネ。
「あんたは、まとめの解説を作った。」
とキノは、すかさず付け足す。
「私のまとめの解説は、分かりやすかった？」
とカガネ。
「まとめの解説の出来の話はしていない。」
とキノ。
「ここには、サナが、恨みつらみを晴らす相手がいるわ。」
とカガネ。
北白川サナは、カガネを睨んだ。
「カガネも同罪。」
と北白川サナ。
「私は、私が無罪とは、主張しないわ。」
とカガネ。
カガネが、北白川サナにもキノにも平然としているのは、キノのように、炎上させた北白川サナに申し訳ないという気持ちがないわけではないのか。
北白川サナが、カガネを恨み、カガネに危害を加えることを受け入れる腹づもりをしているから、カガネの態度は、変わらないのか。
「あんたは、何を悟っているわけ？」
とキノは、カガネに噛みつく。
「キノは、有罪。」
と北白川サナ。
カガネとキノの差を理解した北白川サナは、キノに飛びかかりにいった。
「あんた、何とかしなさい！」
とカガネに文句を言うキノは、北白川サナから逃げ回る。
「キノには、最初に謝っておいたわ。」
とカガネ。
「バカにして。」
とカガネに向かってくるキノ。
「サナ。キノを捕まえておく？」
とカガネは、腕を広げた。
「裏切り者！」
とキノは、カガネに吐き捨てて、カガネから遠ざかる。
キノを追う北白川サナ。
俺とカガネは、遠ざかるキノと北白川サナを目で追う。
「カガネは、キノと北白川サナを追い払って、俺に話すことがあるのか？」
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