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282.裏切り者の定義。

「私がさらされて炎上したとき。


炎上対策をするから、と、私は根掘り葉掘り聞かれたことに答えた、です。


私という事例を参考に、対策していけば、大丈夫だろう、と。


私は協力した、です。


結果的に、何も大丈夫ではなかった、です。


どんな対策をしても。


私に続いて、タケハヤプロジェクトの学生は、次々と炎上した、です。」

と北白川サナ。


タケハヤプロジェクトの学生の中には、早くから裏切り者の男がいた。


その男は、タケハヤプロジェクトの学生がたてた対策を支援団体に報告しただろう。


どんなに秘密にしようとしても。


ザルで水をすくうように、タケハヤプロジェクトの学生の情報は、支援団体にダダ漏れだった。


北白川サナの前髪が、風もないのに揺れた気がする。


「タケハヤプロジェクトの学生は。


私に続いて炎上した人を、可哀想だと同情して、慰めて、相談に乗っていた、です。


炎上した人を助けるために、皆で協力し合った、です。


私は、一番最初の炎上経験者だから、炎上していく人に協力する側だった、です。」

と北白川サナ。


北白川サナの見せない双眸は、何を見据えているのか。


「タケハヤプロジェクトの学生が、北白川サナを虚仮にしていたことが、北白川サナの言う裏切り、か?」


「私は、応募する前からずっと。


私の頭脳を使って、するべきことがあると思っていた、です。


私の頭脳を使うために、私はタケハヤプロジェクトの一員でいた、です。


だから。


人を見る目がなく、鍛えられた頭脳もないような、タケハヤプロジェクトの他の学生と馴れ合おうとは、思わなかった、です。」

と北白川サナ。


佐竹ハヤトとモエカ以外に、北白川サナの理解者となりうる人物は、タケハヤプロジェクトの学生の中にはいなかった。


佐竹ハヤトとモエカは、二人でいた。


北白川サナは?


孤独ゆえの孤立、か。


「北白川サナの言う裏切り、とは何をさしている?」


北白川サナと俺の会話は、一瞬だけ、止まった。


「ラキは、ショウタに心配されて、メグとツカサに庇われた、です。」

と北白川サナ。


ラキちゃんのことを語る北白川サナに、凪いでいた感情が沸騰する。


感情にのまれるのは、今ではない。


俺は、平常心を保とうと努めた。


「正義が勝たないデスゲームが、殺し合い以外でも危険だとは思わなかった。」


俺の声が固くなったのは、仕方がない。


「私は、誰にも心配されなかった、です。


ラキとは違って。


一人でなかったはずなのに、です。」

と北白川サナ。


北白川サナが、タケハヤプロジェクトの学生の中で、一番惨憺たる目にあった、という話か。


「タケハヤプロジェクトの学生は、北白川サナを心配する代わりに何をしたのか?」


「被害にあったのが私で良かった、と喜んだ、です。」

と北白川サナ。


人に関して言うと。


強いから孤立する、ということは起きない。


弱くて繋がれない人が、孤立する。


「皆の本心を知るまでは、独りでも、私は、タケハヤプロジェクトの学生の一人でいようと思っていた、です。」

と北白川サナ。


いてもいなくてもいい。


なぜなら、北白川サナがいてもいなくても、北白川サナ以外は困らない。


北白川サナが勝手に一緒にいたがっているみたいだから、一緒にいるが、誰も、進んで、北白川サナと一緒にいようとは思わない。


北白川サナは、タケハヤプロジェクトの学生から、そんな風に思われていた、ということか。


平時なら、距離がありながらも、北白川サナは、誰とも問題なくやれていた。


支援団体が、タケハヤプロジェクトの学生をかき乱さなければ、北白川サナは、タケハヤプロジェクトの仲間の一人で居続け、時間経過と共に、仲間との距離を縮められたかもしれない。


「私のいられるところは、どこにもなかった、です。」

と北白川サナ。


炎上している人の自宅を特定して、騒ぎに便乗するやつらが現れる。


「私が家にいると。


知らない人達が、次々と家に押しかけてきた、です。


隠し撮りした写真をあげていったり、インタビュー動画を撮りにきた、と張り付いて騒ぐ、です。


私や私の家族が家の外に出ると、カメラを向けて、私が言うわけがない台詞を喋らせようとしたり、記事を捏造したりする人がつきまとった、です。」

と北白川サナ。


支援団体がキノを使って炎上させたことで、北白川サナと北白川サナの家族は、迫害されたのか。


「北白川サナの他に炎上していた学生も、北白川サナと同じ目にあったのか?」


「タケハヤプロジェクトの学生は、支援団体の嫌がらせを皆で協力して乗り切ることにした、です。


私は、何度も他の学生に助けを求めた、です。


でも、誰にも一度も助けられなかった、です。


私と家族ではどうにもならなくて。


家族と一緒に死ぬしかないと思った、です。


死ぬしかない、と思ったとき。


私は、他の被害者がどうしているかが気になって見に行った、です。」

と北白川サナ。


「どうなっていた?」


「他の被害者のところには、タケハヤプロジェクトの学生が持ち回りで、助けに行っていた、です。」

と北白川サナ。


タケハヤプロジェクトの学生の、北白川サナで良かった、というのは、そのままの意味だったのか。


「衝撃を受けた私は、私以外の被害者を何人も確認した、です。」

と北白川サナ。


「確認した結果は?」


「タケハヤプロジェクトの学生は、私だけ、全く助けなかった、です。


私がどんなに困っていても。


一家心中しか救いがないと思うぐらいに追い詰められていても。


タケハヤプロジェクトの学生の心は痛まない、です。


死ぬしかないと追い込まれたときになって、やっと、私は理解した、です。


タケハヤプロジェクトの学生が、私をどう考えているかを、です。


私は裏切り者ではない、です。


私はタケハヤプロジェクトの学生の仲間ではなかった、です。


よって、裏切り者という定義に、私は当てはまらない、です。」

と北白川サナ。

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