275.俺が正義が勝たないデスゲームと関わり始めたときの話を聞かせると。刑事だったメグたんが、裏バイトと比較し始めた。
正義が勝たないデスゲームを運用するAIが、俺を正義が勝たないデスゲームに参加させた理由を考える。
「俺が、正義が勝たないデスゲームのコメント入力を辞めると申し出たからだとすると。
正義が勝たないデスゲームAIは、正義が勝たないデスゲームの秘密が漏洩することを恐れたのか?
危ない仕事に関わった自覚があった俺は、ひっそりと他の安全な仕事をする予定だったのだが。」
二度と、危ない橋は渡るまいと決意していたのに。
決意表明はしていなかったから、誰にも伝わりはしなかっただろうが。
「ショウタから秘密が漏洩することを懸念する場合、正義が勝たないデスゲームにショウタを参加させれば解決するわね。」
とメグたん。
「殺し合いの末に死ぬから解決か。」
「金剛ショウタが、正義が勝たないデスゲームにコメントすることにした決め手は、何?」
とカガネ。
「楽して稼ぎたい俺の元へ、俺の求めている条件にぴったりな仕事がきたから受けた。」
「求めていた仕事?」
と怪訝そうなメグたん。
「デスゲーム内の出来事は全部、演技だと思って見ていたから。
コメントを入れるだけで高額の稼ぎになる正義が勝たないデスゲームのコメント入力を始めたとき。
この上なくホワイトな仕事だと俺は思っていた。」
「ホワイトな仕事だと思って、引き受けたら、抜け出せなくて深みにはまっていくパターンは、裏バイトに限らなかったわね。」
とメグたん。
比較するものが、裏バイトか。
「正義が勝たないデスゲームが、裏バイトと同じ扱い?」
とキノ。
「運がよければ、裏バイトは、始めてそう時間が経つ前に警察に捕まる。」
とメグたん。
刑事だったメグたんは、運がよければ、という言葉を使ったが、誰に対してか?
「あんたは、足抜けできなかったんだ?」
とキノ。
「足抜け?俺自身は、罪をおかしていない。」
キノは、ふん、と鼻で笑う。
「正義が勝たないデスゲームに、警察から参加者を斡旋することはあっても、正義が勝たないデスゲーム自体に、警察が介入することはない。」
とカガネ。
タケハヤプロジェクトだけではなく、正義が勝たないデスゲームにも、警察は介入しないのか?
正義が勝たないデスゲームには、警察が一枚噛んでいるのか?
「足抜けしようとしたから、正義が勝たないデスゲームという足抜け不可能な場所に放り込まれたんだ?」
とキノ。
「ショウタは、正義が勝たないデスゲームに引っかかっていなかったら、別のホワイトな仕事に引っかかっていたかもしれないよ。」
とツカサ。
ホワイトな仕事、か。
「裏バイトは、裏バイトと謳うより、ホワイトな仕事をアピールするわね。」
とメグたん。
「探していた条件にぴったりだったから、金剛ショウタは、正義が勝たないデスゲームのコメント入力を始めたというけれど。
探していた条件にぴったり合う仕事など、見つかる?」
とカガネ。
「奇跡だと思った。
俺の求めていた条件に、これ以上なくぴったりだったんだ。」
「金剛ショウタを正義が勝たないデスゲームに関わらせたい運営が。
正義が勝たないデスゲームのコメント入力、という仕事を作って。
金剛ショウタの求める条件に合わせた求人を出していない?」
とカガネ。
「特別扱いが、甚だしいわね。」
とメグたん。
「俺一人に、そんな手間をかけるか?」
「正義が勝たないデスゲーム運営が、仕事など存在しないのに、あんたをおびき寄せる目的で、高額な仕事を用意したというなら。
正義が勝たないデスゲーム運営は、正義が勝たないデスゲームに、あんたをどうしても関わらせたかった、ということでしょ?」
とキノ。
「正義が勝たないデスゲームを運用するAIは、正義が勝たないデスゲームとの関わりをたってほしくなかったから、正義が勝たないデスゲームにショウタを参加させた、ということになるわ。」
とメグたん。
「正義が勝たないデスゲームを運用するAIが、正義が勝たないデスゲームに金剛ショウタを関わらせるために動いたのは、いつごろ?」
とカガネ。
「モエカと話したから、だいたいの時期は分かる。
正義が勝たないデスゲームが始まり、佐竹ハヤトが死亡したときだ。」
「佐竹ハヤトくんは、自身が亡くなった後、正義が勝たないデスゲームに金剛ショウタを関わらせる仕様にしていた。」
とカガネ。
「後を頼みたかった、ということだろうけれど、正義が勝たないデスゲームは、AIが運用している。
あんたに何を頼もうとしていた?」
とキノ。
俺は、佐竹ハヤトが俺に託したかったことにたどり着いたが、言わなかった。
まだ、秘めたままにした方がいい。
今の俺が、口に出しても、頓挫する未来しかない。
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