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255.ツカサのいたポジションには大型新人が入った。大型新人とキノは面識があった。なぜなら?

「支援団体とそのバックを快く思わない人物の特定ができれば、その人物が露出する仕事をなくすための対策を立てられる。」

とドッジボールの女リーダー。


ツカサのポジションを奪って芸能界に送り込んだ尖兵を使い、芸能界内で、個人的なやりとりに食い込ませたのか。


支援団体とそのバックに危機感を覚える思想を持つ人物を探らせるためには、ツカサのポジションが有用だった、ということか。


「ツカサのポジションを代わった新人は、支援団体に所属する若者か?」


「半分ハズレ。


キノの事務所の新人。

デビュー前から支援団体がバックにいる、大型新人。」

とドッジボールの女リーダー。


「大型新人ね、大型新人。」

とキノは、吐き捨てるように繰り返した。


「事務所は、大型新人の活躍を見せつけたのか?」


「探らせるための尖兵には、顔を売る機会を増やすだけでいい。


よく取り上げられて、顔を見ることが増えると、あちこちに顔を出しても違和感がなくなるから。


うってつけの状況を整えたら、後は情報を探って持ち帰ることに専念させる。」

とドッジボールの女リーダー。


「うまくいくのか?」


大型新人といううたい文句にどれほどの価値があるのか、俺には分からない。


「大型新人ということにして、大々的に売り出しておけば、事務所が力を入れていることが分かる。


キノのいた事務所の大型新人となれば。


どの現場にいっても、問題なく探りに行ける。」

とドッジボールの女リーダー。


ツカサの事務所が、ツカサに協力させるのを拒否した理由が分かる気がする。


キノの事務所は、事務所が力を持っているからこそ、事務所の力でなんとでもなったフシはある。


ツカサの事務所は、事務所の力が強かったわけではないようだから。


ツカサ本人の努力と魅力で、ツカサは仕事をとっていた比率が高かったのではないか。


ツカサ本人の努力と魅力を台無しにするような誘いだったから、ツカサの事務所は、支援団体の申し入れを断ったのではないか。


ツカサの事務所は、ツカサにとって利があると判断したら、ツカサに話を通していたのではないか、とも思う。


「あいつは、私のことをずっと馬鹿にしていた。


あいつなんか、要領が良くて自分が大好きなナルシストでしかないのに。」

とキノは、大型新人に憤懣やる方ない様子。


大型新人とキノには、接点があったのか。


関係は、良好でなかったようだが。


「キノの事務所は、支援団体と提携したのか?


支援団体は、乗っ取り好きだが、乗っ取られるのを承知で、うまい話だと考えて手を組んだのか?


ひょっとして、脅されたのか。


それとも、乗っ取られるという危険性を考えなかったのか?」


支援団体が、キノの事務所に何も仕掛けないなどあり得るか?


キノの事務所は、手を組んだ後、乗っ取り被害にあったのではないか?


「キノの事務所は、元々、色々なところから、それぞれ、息がかかっている芸能人を受け入れて大きくなった事務所だから。」

とドッジボールの女リーダー。


蛇の道は蛇だったか。


「受け入れノウハウもあり、受け入れたあちこちに顔がきくから、事務所として強い。


成功するための打算と、目標達成の大切さを役者に教え込むことに長けている。


支援団体が、この国の芸能界で一緒に仕事をする相手としては、妥当な選択。


双方がね。」

とドッジボールの女リーダー。


「支援団体は、キノの事務所の大型新人のバックにつくことに利益があった。


キノの事務所には、支援団体と手を組むことに、何らかの利益があったのか?」


「支援団体は、既にこの国のあちこちに根をおろしている。」

とドッジボールの女リーダー。


ドッジボールの女リーダーが話しているのは、佐竹ハヤトが危機感を覚えて対策を立て、実行にうつしたのに、見届けられなかった現実だ。


この場にいる俺以外が苦汁を舐めることになった原因は、俺の知らないところで、この国で生きる俺達を蝕む闇として、身近に迫っていたのか。


俺が見てこなかった現実が俺に肉薄している。


「一見しただけでは分からないようにしているのか?」


「根を見せないだけ。

根を張り巡らせ終わるまでは。」

とドッジボールの女リーダー。


「支援団体がバックについている大型新人を擁することで、事務所としては、支援団体の関連でとれる仕事が広がる。


メリットはあるか。」


キノの事務所の動きに納得がいった。


「キノの事務所は、新しいビジネスのために、内側に抱えるものを増やしたのか。


内側と外側から同時に食い破られないのか?」


一時的に利益は拡大しても、最後に全部吸い上げられるのではないか?


「どうなの、キノ?」

とドッジボールの女リーダー。


「あんたは、答えが分かっていて聞いてくる。」

とキノは、顔をしかめる。


「無駄な台本をわざわざキノに用意することはしないわ。」

とドッジボールの女リーダー。


「あんたは、私を馬鹿にしすぎ!」

とキノ。


「相手に見合った対応は、コミュニケーションの基本。


キノは、瞬発力勝負だから、アドリブに耐えられる配役にすればいい。」

とドッジボールの女リーダー。


「今さら何なの!褒めているの?」

とキノ。


「キノにあんた呼ばわりされるのは、思ったよりこたえる。


キノには、私のことを名前で呼んでほしいわ。」

とドッジボールの女リーダー。


キノは、ツカサの視線を感じて、決まり悪そうにしてから、事務所について話し始めた。


「事務所は、私が辞める前には既に、軒を貸して母屋を取られる一歩手前になっていた。


支援団体の色がついていない人は、他の色がついているから無事だった。


全くのまっさらな人が入ってきた場合。


支援団体の色に染まらないと活動の場をもらえなくなっていた。


仕事を取ってきてもらえない。


オーディションも受けられない。


支援団体の支配に抵抗しているように見えない事務所に嫌気がさして、独立した人も、移籍した人もいる。


独立しても、移籍しても、事務所にいたときより成功した人はいなかった。


一人も。


それでも。


元の事務所にいたら、自身で人生を抑圧することになっていたから、辞めて後悔はない、という人は何人もいた。」

とキノ。

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