248.ツカサとキノの因縁。
ツカサが、人殺しの罪に問われた件は、冤罪ということになるが?
俺はまず、ツカサ、メグたん、キノの様子を見ることにした。
ツカサは、何も言わずに、人の良さそうな笑みを浮かべている。
俺とキノのやり取りに吹き出していた飾らない表情は、なくなっていた。
ラキちゃんに胡散臭いと言われた笑顔を貼り付けて、ツカサは話を聞こうとしている。
メグたんは、ツカサの件に介入する気はないらしく、無表情で無言。
ツカサの冤罪に興味がないようにも見えるメグたん。
ドッジボールの女リーダーが、ツカサの冤罪話を持ち出したのは。
ツカサにはキノを殺す動機がある、という話に繋げたいからか。
ツカサもメグたんも、ドッジボールの女リーダーに質問する気がない。
ツカサの様子を見るに、興味がないことは、ない。
身を乗り出して聞きたがる様子を見せないのは、ツカサに考えがあるからか。
「いい加減な話を捏造するのは、止めて!
作り話など誰も聞きたがっていない。
今さら、過去の話を持ち出しても、今、ここで、何が変えられる?
あんたの話など聞くだけ、無駄。
あんたの話を聞いても聞かなくても、現状を変える力はない。
だったら、心穏やかに過ごさせてあげるべき。」
とキノ。
キノは、ツカサの過去をほじくり返さないことを求めている。
過去の殺人が冤罪だと知れたところで、ツカサがタケハヤプロジェクトの参加者であることに変わりはない。
だが。
人を殺していないことを殺したことにされた、というのがツカサの真実なら。
真相を知り、理由を知りたいと思わないか?
殺人犯にされたなら、なおさら。
タケハヤプロジェクトの参加者として、正義が勝たないデスゲームの中にいる限り、裁判で無罪を勝ち取ることなど不可能だ。
ツカサは、タケハヤプロジェクトの参加者になるように、何者かに誘導されている。
ツカサをタケハヤプロジェクトの参加者にした何者かは、ツカサがタケハヤプロジェクトの参加者にならざるをえないような工作、もしくは、お膳立てをした。
ツカサは、何者かに嵌められて、タケハヤプロジェクトの参加者になることを選ばされたことになる。
今のツカサが正義が勝たないデスゲームから脱出して裁判を起こしたとしても、無罪の判決が下ることはない。
ツカサは、タケハヤプロジェクトに参加する前、裁判をしていなかったのではないか?
裁判をして、有罪判決が出ていないなら。
無罪を勝ち取るための再審など、成立しないのではないか?
「俺は、タケハヤプロジェクトと正義が勝たないデスゲームに関する話題は、網羅しておきたい。
ツカサは誰も殺していないのに、殺したことになっているのか?
ツカサが殺したとして処理されたのか?」
「止めなさいよ!」
とキノ。
「ツカサが致命傷を与えた相手が、隠せない場所で死んだという目撃証言があった。」
とドッジボールの女リーダー。
「部外者は黙って。」
とキノは強い口調でドッジボールの女リーダーを黙らせようとする。
「目撃証言をしたのは、舞台俳優ツカサを追いかけていたファンの一人が殺されるところを見た人。」
とドッジボールの女リーダー。
「ツカサのファン。」
いたのか。
「意外?」
とドッジボールの女リーダー。
「ツカサにファンがいたことに驚きはした。」
俺にとってのツカサは、タケハヤプロジェクトの参加者。
舞台俳優だったツカサを知らない俺には、ツカサにファンがいたと聞かされても違和感しかない。
「ツカサが致命傷を与えたとされる被害者を見た人は、一つ前に、ツカサと同じ舞台に出ていて、その舞台で引退している。」
とドッジボールの女リーダー。
「一つ前の舞台で共演していたが、ツカサが致命傷を与えたとされるときは、共演していなかったのか。
ツカサとツカサの前の舞台での共演者は、事件が目撃できる場所で会ったのか?
居合わせたのか?」
ツカサとツカサのファンとツカサの元共演者は、たまたま会ったのか?
「ツカサと元ツカサの共演者がいるところに、ファンが現れて、騒ぎになり、ツカサはファンを殺した、とされているわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「素直な見方をすると、ツカサと元共演者の逢瀬が、ファンに見つかった。
うがった見方をすると、元共演者にツカサは嵌められた。
キノは、ツカサにどう関係してくる?」
「ツカサの元共演者。」
とドッジボールの女リーダー。
「キノは、元共演者の知り合いか?」
「違うわ。キノは元共演者。」
とドッジボールの女リーダー。
キノが、舞台に立っていたのか?
キノに華やかさなどは、見当たらない。
「ツカサがファンを殺したと証言した、元共演者がキノ。」
とドッジボールの女リーダー。
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