244.ラキちゃんが、ドッジボールの女リーダーとキノという女の二人を俺の担当としたのは?
「賭けている?俺にか?」
「他に誰がいる?」
とドッジボールの女リーダー。
話の流れから、ドッジボールの女リーダーは、俺に賭けていると話したように聞こえたから確認したが。
そもそも、突然、何を言い出すのか?
「俺に何を賭けているにしろ。
何を期待しても期待通りにいくとは限らない。」
釘は刺しておく。
ドッジボールの女リーダーの話で、聞いておくことは、もうないか。
俺は、ラキちゃんのところへ向かうことにした。
「どこへ?」
とドッジボールの女リーダーは、俺に合わせてくる。
「ラキちゃんの応援に駆けつける。」
「応援するのは、ラキだけ?サナは?」
とドッジボールの女リーダー。
応援に向かう先が、二つでも。
「俺は、一人しかいない。」
分裂したら、二人を同時に応援しにいけるが、俺は分裂しない。
「断言するけど。
ラキより、サナの方が苦戦しているわ。
サナの相手のスキンヘッドの男は、タケハヤプロジェクトの学生を憎んで、殺しに来たと私が話したのを忘れた?」
とドッジボールの女リーダー。
ドッジボールの女リーダーの口調がキツくなった。
「忘れてはいない。
ラキちゃんの相手も、危険だ。
人殺しがしたくてたまらない男だろう?」
ラキちゃんが気になるから、俺はラキちゃんのところへ先に行く。
「ラキは、正義が勝たないデスゲームから脱出できない。
サナは、出られる。
助けにいくなら、サナ一択。
ラキは却下。」
とドッジボールの女リーダー。
「俺は、指図されることを好まない。」
「死にに行く気?」
とドッジボールの女リーダー。
飛躍しすぎだ。
「俺は、死なない。
ラキちゃんも死なせない。
ラキちゃんを助けたら。
ラキちゃんと一緒に、北白川サナを助けにいく。
北白川サナも死なせない。」
ドッジボールの女リーダーは、俺を見ながらため息をついた。
「正義が勝たないデスゲームの中は、根拠のない自信だけで生きていける場所ではないわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「生き残る根拠か。
一つもないが。
死ぬ、死ぬ、と思い詰めながら生きていたら、精神を壊すのではないか。」
俺は、自分を追い詰めながら生きる生き方を選ばない。
「頭を空っぽにして突き進めば、死期が早まる。」
とドッジボールの女リーダー。
俺は、何も考えていないように見えるのか。
「俺は、他にやりようを知らない。」
ラキちゃんを助けにいくことについて考えた結果。
俺は、考えるのを止めた。
分からない事柄を考えて、意味のある結論にたどり着くか?
「私は、あんたに賭けた。
あんたが死ににいくなら、阻止するわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「俺がラキちゃんの元へ行くことに対して、不吉すぎる予言はいらない。」
『あのとき、死ぬと警告しておいたのに。』
と死ぬ間際に言われるのは、御免だ。
「予言ではないわ。
あんたでは、ラキの相手に歯がたたない。
この期に及んで、何が危険かを一つも理解しようとしないあんたでは。」
とドッジボールの女リーダー。
ドッジボールの女リーダーは、俺の理解力について指摘してきた。
「対峙しているのが危険人物だと理解したから、ラキちゃんの元へ向かおうとしている。」
「あんたは、私の話を聞いて何を理解した?」
とドッジボールの女リーダー。
「ラキちゃんと北白川サナがそれぞれ対峙している男は、人殺しの経験があり、人を殺すことをためらわない人物だと理解している。」
「それだけ理解していて。
その男達がいる場所へ向うことを、死にに行くわけではないと言い切れるのはなぜなのか、説明してくれる?」
とドッジボールの女リーダー。
「死ぬために行くつもりがないからだが。」
「根性論は、いらないわ。
何のために、あんたは、私のところに来たの?」
とドッジボールの女リーダー。
「ラキちゃんの作戦だが?」
「考えて。
ラキは、なぜ、あんたを私とキノのところに行かせたの?」
とドッジボールの女リーダー。
「なぜ?
女二人を相手にすることに関して、俺が適役だったからではないか?」
ドッジボールの女リーダーは、食い下がってくる。
「適役?
キノに逃げられているのに、適役と言い張る気?」
とドッジボールの女リーダー。
「俺が追い払ったわけではない。」
キノという女を追い払ったのは、ドッジボールの女リーダーだ。
「キノの行方を把握している?」
とドッジボールの女リーダー。
「追っていない。
キノという女は、俺に敵意を向けていなかった。」
俺を害する心配がない相手にまで、注意を払っていたら、神経が摩耗する。
「私とキノをラキに任されておきながら。
キノの行方が分からないあんたは、ラキに任された仕事を果たせていない。
あんたが今から向かう先は、ラキのいる場所ではないわ。
今、あんたがすることは、キノを探しに行くことだから。」
とドッジボールの女リーダーは、キツい口調で断言してきた。
ドッジボールの女リーダーは、ラキちゃんの元へ俺を行かせまいとしている。
「キノという女の行方を把握していることが、俺に必要か?
必要なら、後で探せばいい。
ラキちゃんと北白川サナと合流してからになるが。」
「ラキとサナに合流することは、誰の希望?
ラキとサナが、あんたの合流を望んでいるとでも?」
とドッジボールの女リーダー。
俺は、言い返そうとして。
ラキちゃんの言葉を思い出した。
『別行動になった時点で、仲間だとは考えない。
各自が生き残りを目指す。』
「いや。だが。」
「ラキから、助けに来るなと言われていない?」
とドッジボールの女リーダー。
俺は、瞠目した。
ドッジボールの女リーダーは、なぜ、ラキちゃんの指示を知っているのか?
「危険人物と対峙しているなら、俺は急ぐ方がいい。」
俺は、ドッジボールの女リーダーを振り切ろうと足を早めた。
ドッジボールの女リーダーと話すことはもうない。
俺に遅れたドッジボールの女リーダーの声が、背中から追いついてくる。
「ラキやサナの対峙する男に、あんたはかなわない。
だから、ラキとサナは、あんたを遠ざけた。
あんたを危ない目にあわせないため。
あんたを死なせないため。
あんたを死なせないことを最優先にしたラキとサナは、対峙する男との勝ち目のありなしを考慮することを捨てた。
あんたは、あんたの短絡さで、ラキとサナの覚悟も命も無駄にする気?」
とドッジボールの女リーダー。
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