241.タケハヤプロジェクトを離脱した学生と、正義が勝たないデスゲームの中にいるタケハヤプロジェクトの学生は、同じ視点で同じ目標を語れない。
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、元政治家の弟に、共通の敵を倒そうという提案以外の話をしていないのか?」
せめて、お悔やみを申し上げるとか。
「元政治家の弟は、タケハヤプロジェクトを離脱した学生の家族を殺した後にこう言ったわ。
『これで、俺とお前の条件は同じになった。今なら手を組んでやる。』
タケハヤプロジェクトを離脱した別の学生が、絞殺死体の並ぶ事件現場に駆けつけて、元政治家の弟に提案した。
『正義が勝たないデスゲームに参加してみてはどうだ?
正義が勝たないデスゲームに参加すれば、タケハヤプロジェクトの学生に、直接、復讐できる機会を得られる。
正義が勝たないデスゲームの参加者のデスゲーム内での人殺しは、罪に問われない。』
元政治家の弟に対する最高の誘い文句。」
とドッジボールの女リーダー。
俺は、驚愕した。
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生が、言ったのか?
タケハヤプロジェクトの学生への復讐を決意した、元政治家の弟に。
正義が勝たないデスゲームには、タケハヤプロジェクトの学生がいるから、直接復讐できると。
それは、つまり。」
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、仲間を売った、と言いたい?」
とドッジボールの女リーダー。
「ああ。」
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、タケハヤプロジェクトの学生の仲間だと思う?」
とドッジボールの女リーダー。
「仲間だろう。
離脱した学生は、タケハヤプロジェクトの学生の仲間ではないと言うのか?」
「仲間だったかもしれない。
仲間というからには、共通する目標がいるわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生と、タケハヤプロジェクトの学生の目標は、同じではないのか?」
タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、佐竹ハヤトと連絡をとりあっていたはずだ。
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、自身と目標を変えないままでいられると思う?」
とドッジボールの女リーダー。
「タケハヤプロジェクトを離脱後も、学生は、佐竹ハヤトと協力していたのではないのか?」
目標を同じくしていたから、離脱した学生と離脱しなかった佐竹ハヤトは連絡を取り合っていたのではないのか?
「タケハヤプロジェクトを離脱したことで、離脱した学生の環境は変化した。
離脱した学生の環境は、変化し続ける。」
とドッジボールの女リーダー。
「離脱した学生は、環境を変化させるために、離脱したのだろう?
タケハヤプロジェクトの学生であれば、安心して生きられないから。」
「環境が変わるとき、同じままでいる人は、取り残される。
学生には、面倒を見てくれる家族がいる。
家族ごと、離脱した学生が適応する環境は変わっていく。
タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、正義が勝たないデスゲームの中にいる学生とは違って、社会から隔離されていない。
社会の中で、社会の一員として生きている。
社会を知り、社会に適応しなければ、学生は生きていけない。
理想だけを追い求めて生きていけたのは、理想を追えるだけの環境と時間が用意されていたから。
タケハヤプロジェクトを離脱した後まで、理想を掲げては、生きていけないことを学生は知った。
社会に直面したら、タケハヤプロジェクトに夢中だった自分には、もう戻れない。
一方で。
正義が勝たないデスゲームの中で、人を殺さないと生きていく場所が失われる場所で生きている、タケハヤプロジェクトの学生の日常に、殺す顔ぶれが変わる以外の変化はない。
両者が、いつまでも同じ視点で、同じ理想を語ることができると思うのなら。
自分自身を見つめ直した方がいいわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「タケハヤプロジェクトを離脱した学生は、タケハヤプロジェクトの学生を、もう仲間だと思っていない。
二度と会うこともない。
だから。
駆けつけてきたタケハヤプロジェクトを離脱した学生は。
復讐したいなら、正義が勝たないデスゲームに参加して、タケハヤプロジェクトの学生を殺しに行けばいい、と元政治家の弟に言えたのか。」
「元政治家の弟は、
『お前の家族を殺せないまま、正義が勝たないデスゲームに参加することが心残りだ』と、
駆けつけたタケハヤプロジェクトを離脱した学生に告げているわ。
『俺のように、家族を殺されて、存在していることを疎まれるような生き方しかできなくなってみろ。』
とね。」
とドッジボールの女リーダー。
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