23.『話せば分かる、話し合おう。』という提案が成功した事例を思い出せないのは、なぜか?男リーダーは、ラキちゃんと話し合いを希望している。
7月23日、複数話投稿
ラキちゃんは、どんな人生を送ってきたんだろう?
最後の人生のステージにデスゲームを選んだラキちゃん。
俺が、拉致されて連れてこられたのとは、対照的に、覚悟を決めて参加者になったラキちゃん。
俺の頭の中は、いつしかラキちゃんでいっぱいになっていた。
ほのかな思いを抱いていた彼女だって、同時刻に外野にいて活躍していたはずなのに。
彼女のことは、つゆ程も、気にならなかった。
画面越しのラキちゃん一人に、俺は目も心も奪われていた。
ラキちゃんとラキちゃんにやられたふーくんを見る、男リーダー、タツキの顔は引きつっている。
タツキは、ふーくんを使って、ラキちゃんに危害を加えさせようとした。
ごめん、ごめん、とラキちゃんに謝りながら、ラキちゃんに危害を加えようと、ラキちゃんに向かっていくふーくんを見て、にやにやしていた、男リーダー、タツキ。
タツキは、他人を使った嫌がらせに慣れているように見えた。
他人を使うことで、嫌がらせの成功体験を積み上げてきたなら。
タツキ自身の手で、誰かに直接危害を加えた経験は、ないのかもしれない。
「話し合おう。話せば分かる。」
と男リーダー、タツキ。
ラキちゃんは、理性的だ。
話せば分かるタイプだろう。
今回に限って、話せば分かる、は有効なんだろうか?
ラキちゃんは、数分前まで仲良く話していたふーくんが、敵になったと判断した後。
ドッジボールを続けるのは困難だと一目で分かるような怪我をふーくんに負わせた。
ラキちゃんに、一切の迷いはなかった。
容赦もなかった。
ふーくんの怪我は、ドッジボールの試合中に息絶えるような傷ではない。
ふーくんの意識は、怪我した後も、はっきりしている。
今のドッジボールの試合終了後も生きていられるか、は、ふーくんの持ち点がどれだけ減らされるかによって決まる、とラキちゃんが話していた。
外野にいる紅一点は、身動きできないふーくんの持ち点を減らすことに腐心している。
ふーくんは、痛みを訴えながら、地面に転がるだけ。動きはない。
紅一点は、ここぞとばかりに、動かない的になったふーくんに当てている。
紅一点は、フリスビーを投げるのを止めていた。
ふーくんめがけて、ダーツとボールを無制限に投げている紅一点。
投げるものによって、減点される点数が決まっていたりするのか?
ふーくんに聞きたい。
紅一点のどこが無害なんだろう、と。
自身の生存率を上げるため、無抵抗の人に追い打ちをかけることに、いっぺんの迷いもない紅一点。
紅一点は、デスゲーム内での生活がそこそこ長くて、他人を追い落とすことに慣れているのかもしれない。
顔見知りをランク付けするやつは、デスゲームの外にもいた。
そいつは、ランク付けしたやつを、仲間とイジって楽しんでいた。
無害そうな、毒舌キャラ。
そいつは、仲間内でそう呼ばれていた。
口以外は、無害だ、と、そいつの周りは笑いあっていた。
口が有害なら、存在が有害、と嫌っている人もいたが、そいつの仲間には、取るに足らない雑音だっただろう。
そいつは、仲間内では、無害な毒舌キャラを貫いていた。
仲間の見ていない場所では、その無害さの片鱗も見せなかったと聞いている。
紅一点も、無害さを装っているだけなんだろう。
顔見知りの持ち点なら全員分把握していて、いつ、どのタイミングで、追い落とすのが最適かを考えて、狙っていても、紅一点ならおかしくない気がしてきた。
男リーダーのタツキは、ラキちゃんがふーくんを叩きのめすとは、想定していなかった。
ひょっとしたら、ふーくんは。
男リーダーの指示で、誰かに危害を加えるのが、初めてではなかった?
ふーくんは、ラキちゃんが、幼馴染という一点でしか、ためらわなかった。
ラキちゃんは言っていた。
『デスゲームの中にいる人は、デスゲームの外には居場所がない。』
男リーダー、タツキとふーくん。
ラキちゃん。
そして、俺も、か。
デスゲーム参加者は、デスゲームの外で、生きていくことを望まれない、という意味なのか。
足掻いて、死んでいけ、と。
俺は、まだ、デスゲームの入り口にも立っていない。
武器を手に殺し合うだけなら、足を踏み入れた瞬間にハチの巣、ということもあり得た。
俺が参加するデスゲームは、殺人鬼に無惨に殺されるのを見て楽しむ内容じゃない。
デスゲームから脱出する方法を聞いた俺に対する、運営側の回答が、この動画なら。
俺は、どこに活路を見い出せばいいのか?
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