229.『正義が勝たないデスゲームから脱出したら、あんたは、炎上する。』とドッジボールの女リーダー。俺に心当たりはない。なぜか?
「俺が、正義が勝たないデスゲームを脱出することと一般人であることは、憂慮すべき事項か?」
「あんた、炎上するわよ。
盛大に。
正義が勝たないデスゲームに参加しているサナの比ではないくらいに。」
とドッジボールの女リーダー。
「炎上?俺が、か?」
俺に、炎上する心当たりなどないが。
「正義が勝たないデスゲームに参加して、頭のネジを捨てたの?」
とドッジボールの女リーダー。
「頭のネジが緩む暇などないのだが。」
「炎上は、他人事だと思って、余裕こいていられるのは、社会から隔絶されている場所にいる今だけ。」
とドッジボールの女リーダー。
「正義が勝たないデスゲームの中にいる間は、情報が更新されない。
炎上していても、炎上している本人が気づくことはない、ということは、言えるか。」
「正義が勝たないデスゲームにいれば、炎上の心配はいらない。
正義が勝たないデスゲームは、社会からいなくなる人の行き着く場所。
正義が勝たないデスゲームより先には、どこにも行けないから。」
とドッジボールの女リーダー。
ドッジボールの女リーダーは、自身が知る情報から、正義が勝たないデスゲームの位置づけをしたのだろうか。
「社会から居なくなることを望まれた参加者だけか?」
「私は、社会からいなくなれと願われるほどのことをした覚えがない。
まとめの解説が問題だったと言われても、解せないわ。
問題になるような人の情報は、一人も書いていない。
炎上したのは、全員、ごく普通の一般家庭で育った、他の子どもよりも出来の良さそうな育ち方をしている学生。」
とドッジボールの女リーダー。
俺は、ドッジボールの女リーダーの台詞に引っかかりを覚えた。
「学生が何人も、か?十年以内の話か?」
「炎上も、まとめも、まとめの解説も、十年以内の話。
学生の炎上が集中していた年があったわ。
サナもその一人。
炎上当時、サナは、大学生だった。
どこに住んでいて、どこの高校を卒業して、どこの大学で、どんな部活で、性格はどうで、という基本情報から、家族、友人、親戚、踏み込んだところまで、さらされていたわ。
サナだけではなく。
高校生や大学生で、頭のいい学校とか名門校とかに通う男女の炎上が続いていた。
一人、炎上が終わると、次の一人の炎上が始まる。
真夏の夜の花火みたいに、消えたら、次の炎上が打ち上がっていたわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「元々は、炎上するような案件ではないところに、付け火したやつがいないか?」
「大半は、誰かが炎上するように操作していた。」
とドッジボールの女リーダー。
「いつ、気づいた?」
「調べていくうちに、だんだんと。
出身地も在籍する学校もバラバラ。
どの学生も炎上するような言動をするほど、考えなしの経歴ではない。
音声データや写真、動画、直筆のノート、SNSの発信。
切り取りが炎上している。
元の、切り取られる前のデータを探してみたら。
探しても、元のデータは出てこない。
一人も。
だから。
炎上させるために、炎上ネタを作ってあげた誰かがいると気づいた。」
とドッジボールの女リーダー。
「曰く付きだとわかりそうなものだが。
気づいたときに、やめなかったのか?」
「やめるタイミングが不自然だと、私が狙わると思った。」
とドッジボールの女リーダー。
「炎上ネタのまとめを消したがったのは、学生か?付け火をしたやつらか?」
「付け火の方よ。
炎上ネタのまとめは、付け火させて炎上させた記録になる。
学生は、一般家庭の一般人。
炎上したら、無力。
燃え終わるころ、さらされていないものは、一つもない。
あんたも、そうなるわ。」
とドッジボールの女リーダー。
「俺が炎上するのは、確定しているのか?」
「正義が勝たないデスゲームを脱出したら、炎上する。」
とドッジボールの女リーダー。
「言い切る根拠はあるのか?」
「正義が勝たないデスゲームに馴染みすぎて、ここがどんな場所か、もう疑問に思わなくなった?」
とドッジボールの女リーダー。
「デスゲームのルールで、人が人を殺す場所だ。」
「正義が勝たないデスゲームを出た後、正義が勝たないデスゲームの中でしたことは、していなかったことになると考えている?」
とドッジボールの女リーダー。
そこまでは。
「何も考えていなかった。」
「考えているようには見えなかった。」
とドッジボールの女リーダーからは辛辣なコメントがきた。
「正義が勝たないデスゲームから脱出したら。
正義が勝たないデスゲームに参加していたことを炎上のネタにする社会に飛び込むことになるのか。」
「炎上を避けたい?避ける方法を教えてあげようか?」
とドッジボールの女リーダー。
「死ぬ以外の方法があるなら、聞く。」
「死にたくないなら、聞いていけば?
炎上する側から、させる側になること。
炎上を起こさせないだけの強さを見せつけること。
無害でいたら、炎上させても、痛くも痒くもないと思われて踏みにじられる。
一人が踏みにじってきたら、百人、千人が踏みにじってくる。
無関係な暇人がね。
踏みにじってもいい、とみなされた人が、炎上する。」
とドッジボールの女リーダー。
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