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207.俺の本音は、ラキちゃんを正義が勝たないデスゲームから脱出させて、正義が勝たないデスゲームから脱出した俺と、外の世界で会うことだから。

無関係な他人でいるなら、ラキちゃんの生死に口を出すな、か。


この発言の趣旨に限定すれば、メグたんの言っていることは、まともだ。


端的に言うと、部外者は引っ込め。


通り過ぎるだけのくせに、ラキちゃんの人生を引っ掻き回していく俺へ、線引きをしろ、手を引け、とメグたんは、正面から正論を俺にぶつけてきた。


面白おかしく他人の噂で盛り上がるよりも、俺がしていることは悪質だ。


無責任な期待をラキちゃんにかけて、お気持ち表明のごとく、俺だけが一時的な満足を得る。


俺がラキちゃんにしていることは、人として見下げた行為。


真正面から突きつけられたら、俺は認めざるをえない。


俺は、生きていてほしいという俺の欲望をラキちゃんに押し付けて、ラキちゃんが思い通りになったと喜ぶ最低な部類の人間だ。


俺がラキちゃんに期待することで、ラキちゃんのために失うものは、何もない。


ラキちゃんだけが一方的に負担を強いられる。


メグたんが、俺を嫌うのは、俺が無責任であることを自覚して改めなかったからか。


メグたんは、メグたんの理屈でラキちゃんの生殺与奪を握った。


メグたんによる、ラキちゃんへの殺害予告は、俺の利己的な行動を邪魔して、ラキちゃんに選択肢を与えるためか?


ラキちゃんが、ラキちゃん自身の意思で、生きたい、死にたい、と口にすることができるように。


生きろ、生きろ、と俺が期待をかけ続けると、ラキちゃんは本音を隠すしかなくなるからか。


メグたんの発言に対して、北白川サナもツカサも何も言わない。


メグたんの発言後、メグたんと並んでいるツカサは、感情を乗せない瞳で俺に笑いかけることはしてこなかった。


誰かに笑顔を見せるときのツカサは、人好きのする爽やかさを発信していた。


俺に笑顔を見せないツカサは、内側から何も漏らしてこない。


遮光カーテンで締め切られたように、何も見せない。


真顔のツカサの目は、他人を評価する評価者の目に変わっている。


メグたんに正論を吐かれた俺が、反省したか、反発しているか、ダメージを食らったか、真実を言い当てられてメグたんを逆恨みしていないか。


ツカサは、俺という人間の変化を見極め、見定めて、これからどういう対応をしようか決めようとしている。


北白川サナは、というと。


北白川サナは、メグたんの発言を聞いた俺がどんな反応をするかということを気にしているようには見えない。


北白川サナは、ラキちゃんに向ける俺の期待について干渉しようとしていない。


ノータッチ。


北白川サナが、関わることではないと、判断しているからか。


俺は、メグたんよりラキちゃんに近づこうとしているが。


ラキちゃんは。


メグたんに首を絞められているラキちゃんは、メグたんに対しても、俺に対しても、等間隔の距離で対応している。


俺にメグたんを説得するようにと告げたときのラキちゃんは、俺に頼るというより、俺ができることを探していたのかもしれない。


俺は、ラキちゃんにおんぶにだっこのままだ。


しかも。


俺がしていることの悪質さに俺以外は、気づいていた。


俺は、俺の行動を自身で分析していたら、もっと早くに俺の無責任さに気づけた。


俺が、自分自身に甘かったのは、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームから出てこないということが、頭にあって、二度と会わないだろうという考えが根底にあったからだ。


二度と会わないから、伝えたいことを全部伝える。


してほしいことを全部頼んでしてもらう。


俺は、それでいいのか?


俺がラキちゃんにしたいことは、何か。


俺は、ラキちゃんに嫌われたくないから、嫌われるようなことをしたくない。


もっと言うと。


ラキちゃんに好かれたい。


俺の本音は、ラキちゃんに好かれることをしたい。


ラキちゃんに好かれることは何か?


ラキちゃんの希望を叶えること。


ラキちゃんの希望は、何か?


正義が勝たないデスゲームを、生きて脱出すること。


現状、ラキちゃんが生きて正義が勝たないデスゲームを脱出する日はこない。


だから。


俺は、俺は、ラキちゃんは脱出できないものと思い込み、その件について、深く考えることはしなかった。


だが。


ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームを脱出するのが不可能なのは、脱出不可能にしてあるからだ。


正義が勝たないデスゲームは、正義が勝たないデスゲーム内で人を殺した参加者について、脱出不可能な仕様になっている、ということに、俺はとらわれすぎていないか?


現状が、脱出不可能だとしても。


不可能な現状を変えてしまえばいいのではないか?


俺は、ラキちゃんの希望は叶わないものだと思い込んで、思考を止めていた。


モエカのときと、同じになっていた。


モエカのときの二の舞いにならないようにするには、思考を止めてはならなかった。


現状維持では、ラキちゃんは、正義が勝たないデスゲームを脱出できない。


ラキちゃんと違い、俺は、正義が勝たないデスゲームを脱出する。


正義が勝たないデスゲームを脱出した俺は、ラキちゃんの現状を変えられる。


俺以外に、ラキちゃんの現状を変えられるやつはいるか?


正義が勝たないデスゲームを脱出した後は、正義が勝たないデスゲームとは無関係に生きていくと考えていた。


ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームから脱出できる可能性を作れるのは、俺しかいないと承知の上で。


俺は、ラキちゃんを正義が勝たないデスゲームから脱出させるための手を打つことなく、正義が勝たないデスゲームと無関係で暮らすのか?


俺は、ラキちゃんが正義が勝たないデスゲームの中で生きて死ぬことを良しとするのか?


俺は、ラキちゃんに、正義が勝たないデスゲームの外で会いたくないのか?

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