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206/474

206.ツカサが現れたタイミングから、推測できること。俺は、打つ手に欠いたまま。ラキちゃんが、俺に?『ショウタは何になりたい?』とメグたんは問う。

北白川サナとツカサは、メグたん、メグたんに首を絞められているラキちゃん、俺の三人の後を歩いてついてきている。


俺は、刻一刻と近づく崖を目にしながら、何の対策も打てずにいた。


俺の動きは、メグたんに察知される。


北白川サナにこっそり頼もうにも、俺が振り返るたびに、ツカサが俺に手を振ってくる。


「ショウタも、仲間に入りたい?」

と笑顔で聞いてくるツカサ。


「入らない。」

と答えながらも、俺は考え込まずにはいられない。


俺が、メグたんとツカサの仲間になれば、メグたんが、ラキちゃんを殺したがるのを止められるのではないか、と。


その考えはすぐに打ち消した。


メグたんとツカサの二人ともに嫌われている俺が、ラキちゃんを殺すなと、二人に働きかけたところで、メグたんにもツカサにも相手にされないことなど、考えるまでもない。


メグたんとツカサを物理的に止めようとしても、俺が無駄死にするだけ。


それよりも、気にしなくてはいけないのは、ゲームメイクをしているツカサの出方。


ツカサが、俺の前に現れたタイミングからして。


ツカサは、メグたんとラキちゃんの戦いに俺が加わってどうなるかを観察している。


俺が、メグたんに対し、能動的に攻撃しようとしたから、ツカサは姿を現した。


メグたんに男が暴力をふるうことは、ツカサにとって阻止したいことか、デスゲーム運営にとって歓迎しないことか、判断しづらいが。


デスゲーム内では、美人枠メグたんに暴力をふるうことは、暗黙の了解で禁止事項になっていると考えた方がいいか。


メグたんに暴力をふるわずに、メグたんからラキちゃんを救出するには、どうすればいいか?


俺は、メグたんをどうするかばかり考えて、穴があくほどメグたんを見ていた。


メグたんは、無反応。


俺が攻撃しないで見ている分には、メグたんの動く理由にならないらしい。


俺は、メグたんに首を絞められたままのラキちゃんを助け出せていない。


俺は、首を絞められているラキちゃんを見続けたくなかった。


ラキちゃんが苦しんでいるのは、俺が無能だからではないか?


今の今まで、何の手も打てていない俺は、無能としか呼べない。


俺は、俺が無能だと知り、愕然としている。


俺は、今まで生きてきて、自分自身を無能だと感じたことはない。


無能なやつは、相手にしなければいい、と考えた俺は、その通りに生きてきた。


俺が、自身を無能だと思う日が来るとは。


俺が無能だと気づくタイミングは、今でなくてもよかったのに。


今の、ラキちゃんを助けられない状態で、無能さを噛みしめることになるとは。


「う、う。」

とラキちゃん。


俺は、ラキちゃんの声につられて、目をそらしてきたラキちゃんを見た。


ラキちゃんは、メグたんに引きずられながらも、諦めていない。


ラキちゃんは、俺に何かを伝えようとしている。


何を?


俺は、ラキちゃんの伝えたいことを読み取ろうとした。


ラキちゃんの視線の先に何かあるのか?


ラキちゃんの視線の先を探しても、俺には何も見つけられない。


ラキちゃんは、真っ直ぐな眼差しで俺を見てくる。


首を絞められて苦しいままでも、ラキちゃんは、俺に何かを伝えようとしている。


ラキちゃんは、俺なら伝わると信じている。


ラキちゃんの瞳の迷いのなさは、俺への信頼の表れ。


俺は、焦った。


ラキちゃんの伝えたいことが、何も思いつかない。


俺は、どうして、ラキちゃんの伝えたいことを探せないのか。


俺は、自分の無能さを呪いたかった。


だが。


俺が俺に呪の言葉をはこうと、時間稼ぎにもならない。


ラキちゃんをメグたんから自由にするための時間は限られている。


無駄な時間は、一秒もない。


何か、何か、ラキちゃんの伝えたいことをつかむための、とっかかかりはないか?


焦るばかりの俺の耳に。


「説得して。」

とかすれた声が聞こえてきた。


「メグを説得、して。」 とラキちゃん。


ラキちゃんは、かすれた声を出した後、むせそうになった。


「なあに?ラキちゃん、まだ喋れたの?」

とメグたん。


メグたんは、ニコッと俺に笑う。


「ラキちゃんが苦しいのは誰のせい?」

とメグたん。


「メグたんのせい。」


俺が即答すると。


「見事に自責思考にハマらない。」

とメグたん。


メグたんが俺を嫌う理由がもう一つ追加。


俺とメグたんは、相性が悪い。


メグたんは、タケハヤプロジェクトの学生を自責思考に追い込んで、無気力になったところを支配したのかもしれない。


メグたんが俺に注意を向けているチャンスを活かさない手はない。


「メグたん。ラキちゃんは、生きたがっている。


生きたいという、ラキちゃんの生への意欲を、メグたんがなかったことにするのか?」


俺は、メグたんに問いかけた。


メグたんが、俺に返事をしないことも俺は考えていた。


メグたんは、メグたんが話しかけたいときだけ、俺の話を聞く。


メグたんは、足を止めた。


ラキちゃんの首を絞める手を緩めないまま、俺を見るメグたん。


「ショウタは、一体、何になろうとしているの?」

とメグたん。


「何に、とはどんな意味か?」


「正義が勝たないデスゲームで、ショウタは何をしたいのかを聞いているわ。」

とメグたん。


「何を、か。」


俺のしたいことは、二つ。


ラキちゃんを死なせないこと。


俺が、正義が勝たないデスゲームを元気なまま脱出すること。


だが。


メグたんの聞きたいことは、俺の持ち合わせている答えではない。


俺は答えに窮した。


「正義が勝たないデスゲームを脱出して、二度と関わらないと決めているショウタが、正義が勝たないデスゲームの参加者にあれこれ求めるのは、無責任だと思わない?


無関係でいたいなら、無関係を貫かないと。


関わりを持つなら、骨の髄までよ?」

とメグたん。

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