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203.ラキちゃんをメグたんから自由にするために、ラキちゃんに嫌われるだろうことをする決心をしたら?

俺ができることは、メグたんの動きを止めること。


メグたんの背中に飛びかかった俺。


メグたんは、突然飛びかかった俺を飛び退いてかわさなかった。


反撃もしなかった。


メグたんは。


俺が飛びかかる前に。


目の前にいるラキちゃんへと、一気に距離を詰めた。


ラキちゃんは、予想していなかったメグたんの動きに反応しきれなかった。


メグたんに飛びかかった俺は、飛びかかった後のことについて、羽交い締めにするくらいしか、考えていなかった。


俺は、暴力をふるうことに慣れていない。


暴力は、俺の日常からほど遠かった。


メグたんという飛びかかる対象を失った俺は、とびかかった勢いを殺すことができなかった。


メグたんがいた場所よりもさらに前に進み、つんのめりながら、俺は止まった。


俺の目の前には、メグたんに首を絞められているラキちゃん。


俺は、失敗したと悟った。


「ラキちゃん!」


失敗して、失敗したままでいるのは、できないやつらがすること。


俺は違う。


失敗を失敗のままにしない。


俺は、ラキちゃんの首を絞めるメグたんの腕を掴もうとした。


メグたんは、ラキちゃんの首を絞めたままで、ターン。


ラキちゃんは、メグたんの腕を外そうと、拳を下から築き上げようとしている。


メグたんは、ラキちゃんの拳を握りしめた手首を掴んだ。


ラキちゃんの手首が、メグたんに折られる!


俺とラキちゃんは、同時に同じ心配をした。


ラキちゃんは、空いている方の手で、ラキちゃんの手首をつかむメグたんの手首を握る。


ラキちゃんとメグたんは、ラキちゃんが、メグたんの手を握ったことにより、位置が固定された。


ラキちゃんは、首を絞められたまま、ターンするメグたんの動かす方に、足をもつれさせる。


ラキちゃんは、よろめきながら、俺にぶつかった。


メグたんは、俺がメグたんに攻撃を仕掛けるのを察知して、ラキちゃんで防いだ。


俺は、ラキちゃんをつかむメグたんの腕を両手で、引っ張って外そうとした。


「ぐう。」

とラキちゃん。


ラキの喉に負担が!


俺がメグたんに何かすると、ラキちゃんが傷つく。


だが。


ラキちゃんの味方になれる行動が、他にあるか?


ラキちゃんを助けようと何かするのではなく。


メグたんが、ラキちゃんに攻撃できない状態へと持っていくのはどうか?


どうするか?


メグたんは、俺の動きを察知するのが早い。


俺が何かをし終わる前に、メグたんの準備は終わっている。


今のメグたんは、俺が仕掛ける攻撃をラキちゃんを使って防ぐか、かわしている。


メグたんは、俺が攻撃を続ける限り、ラキちゃんを離さない。


俺が、攻撃をやめても、ラキちゃんを離すとは限らない。


なら。


メグたんが、対処できないくらいに動く。


俺は、三歩下がる。


メグたんは、ラキちゃんを離さない。


俺は、メグたんと掴み合い状態になっているラキちゃんごとメグたんにぶつかりにいった。


俺かぶつかった衝撃でも、ラキちゃんの喉を締め付ける手を離さないメグたん。


俺に直接ぶつかれた衝撃で、メグたんの手から、手を離してしまうラキちゃん。


ラキちゃんは、メグたんに、首と手首と捕まえられたまま。


ラキちゃんをメグたんから、自由にしたいのに、うまくいかない。


うまくいかないのは、俺が攻撃になれていないからだけではない。


俺は、メグたんに直接攻撃することへの躊躇いがある。


ラキちゃんをメグたんから自由にするには、メグたんに攻撃して、メグたんにダメージを負わせればいい。


頭では、理解している。


ラキちゃんを苦しみから解放するには、ラキちゃんの首を絞めているメグたんの手を、ラキちゃんの首から離すように仕向ければ済む。


メグたんが、ラキちゃんの首から手を離すには、ラキちゃんの首を絞め続けられないくらいの衝撃をメグたんに与える必要がある。


ぶつかろうとするだけでは効果がない。


もっと直接的な暴力。


殴るか、蹴るか。


男同士だったら、相手がツカサだったら、俺は、もっと早くに腹をくくった。


メグたんは、女だ。


ラキちゃんと同じ女だ。


女に殴る蹴るをしたことはない。


女だけでなく、男にもしたことはないが。


ラキちゃんの前で、女を殴るのに躊躇してしまう。


俺は、ラキちゃんによく見られたい。


ラキちゃんに、女を殴る男だと思われたくない。


刑事のラキちゃんは、女を殴る男を好きになるとは思えない。


俺は、ラキちゃんに何も告げる気はない。


だが、ラキちゃんに嫌われたくない。


ラキちゃんには、好かれたい。


刑事と一般人として、ではなく。


男として、見られたい。


諦められない。


諦めたくない。


俺は葛藤している。


メグたんにぶつかるだけでは、ラキちゃんの助けにならない。


メグたんの動きは、スピード偏重だ。


鍛えていない男の腕力でも、力いっぱい殴れば、メグたんは、動きを止める。


殴るか?


俺が、メグたんを。


俺がメグたんを殴ることで、ラキちゃんは、メグたんから自由になるなら。


ラキちゃんに嫌われるかどうか、で、俺のすることを決めるのではなく。


ラキちゃんを自由にできる結果をもたらすかどうか、で決めなくては。


俺は、初めて、誰かを殴ろうと決めた。


言い訳はしない。


俺は、俺の都合で、メグたんを殴ると決めた。


俺は、拳を握る。


俺の表情は、無になっていただろう。


ラキちゃんは、メグたんに首を絞められたまま、拳を振り上げた俺を見る。


俺を見たラキちゃんの目に宿る変化に気づかないほど俺は鈍くない。


他ならぬラキちゃんの感情だ。


ラキちゃんは、メグたんに暴力をふるおうとする俺を見て、苦しそうにしながらも、首を横に振ろうとした。


メグたんを殴るようなことはしないで、と目で訴えてくるラキちゃん。


俺は、握りしめた拳を振り上げられずにいた。


そのとき。

俺は、ラキちゃんとメグたんしか見えていなかった。


ガツン!と肩の後ろに衝撃がはしる。


拳を振り上げていなかった方の肩に。


俺は、間髪入れずに振り返る。


「おっと、悪い、悪い。ショウタが避けないから当たった。」


音もなく、現れた男は、ラキちゃんに嘘くさいと言われた笑顔を俺に向ける。


「一対二を二対二にしよう。」

とツカサ。

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