表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/466

148.人殺しを競技ととらえるなら、人殺しは、人の歴史の中で、最も伝統ある競技だ。高視聴率を叩き出せる。

正義が勝たないデスゲームにおいて、参加者の旬などあってないようなもの。


「タケハヤプロジェクトの学生の見せる死は、いつ見ても、変化がなかったのではないか?


変化がないのは、品質維持という点では、評価される。


どんな相手にあたっても、どんな場面でも、同じ仕事をして、同じ成果を出し続ける。


毎回、殺す相手と場面の見極めが性格で、殺すための人の配分が的確。


配置された一人一人が仕事を疎かにせずに、自分の仕事を遂行する。


一人一人の能力に、大きなばらつきがない。


全員が、同じ結果を見据えている。


能力の差で、結果にばらつきが出るということにならないように、全員、能力は、上げすぎす、一定レベルを維持。


仕事を任せるには、この上なく、優秀なチームだ。


だが、全員が、同じ存在ではないだろう?」


集団の外から見ると差がないが、集団の中は、互いに同じだとは考えていない。


「何を指して、同じかどうかを聞いている?」

とタケハヤプロジェクトの学生。


俺の話によく耳を傾けるようになった。


「チームの中で、目立つ存在は必ずいる。


尖っていても、一人では目立たない。


集団の中にいるから、落差が際立つ。


人は、集団に埋没する人と、目立つ人に二極化する。


だいたいは、埋没する。


目立つのは、一人か二人。」


「それはそうだろう。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


頭では分かっていても、自分に置き換えて考え、その事実を認めて、受け入れることは、難しいか。


「デスゲームの外なら、一人や二人が目立ったところで、チームでする仕事の評価は、チームに帰属する。


目立った一人や二人が引き抜かれても。


引き抜かれた一人や二人に、新しい集団との親和性が高くなければ、評価は落ちる。


一人か二人が引き抜かれた後に残された集団も、同じ。


正義が勝たないデスゲームの外の仕様は、集団に成果と評価が帰結することが多い。


正義が勝たないデスゲームの中の仕様は、把握しているか?


正義が勝たないデスゲームは、正義が勝たないデスゲームの外のルールとは異なる仕様だと理解しているか?」


「何が言いたい?」

とタケハヤプロジェクトの学生。


慎重に探りにきたか。


「まず、デスゲーム参加者の望みとデスゲーム視聴者の望む結果は、同じとは限らないということを認識できているか?」


「殺し合いを制するものが勝つ。生き延びないと意味がない。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


他のタケハヤプロジェクトの学生を見ると、うんうんと何人もが同意している。


正義が勝たないデスゲームの参加者側は、生き延びることに意味がある。


「正義が勝たないデスゲーム参加者は、生き延びることが第一。


だが、正義が勝たないデスゲームの視聴者の望みを理解しているか?」


一つ一つを、掘り下げていき、投げ出さなければ、正解にたどり着ける


「生き延びるかどうか、ハラハラしながら、生き延びた人を応援する。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


正義が勝たないデスゲームは、ニッチ向けだから、万人受けを狙う必要がない。


「応援したい一部に関しては、応援するだろうが、それ以外も応援されていると考えたのか?」


「集団競技とは、その団体を応援するものだ。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


正義が勝たないデスゲームを集団競技に見立てて、役割分担していたのか。


「野球、サッカー、バスケ、バレーボール、のような競技の話か?


正義が勝たないデスゲームは、人殺しという競技か。


人殺しが競技なら、人類最古の競技として世界中で採用されてもおかしくない。


採用された日には、過去最高の視聴率を叩き出すだろう。」


「馬鹿にするな。」

タケハヤプロジェクトの学生の眉がぴくっとした。


俺は、褒めることを惜しまないのだが、褒めていても、褒めたと受け止められないことが多い。


「馬鹿になどしていない。新鮮な解釈だった。


人殺しは、人類の歴史から切り離せない。


正義が勝たないデスゲームの会員制有料配信サービスが好調なことからも、人殺しは、収益化できるだけの需要が見込めると分かる。」


「偉そうに、何様だ?」

とタケハヤプロジェクトの学生。


褒めても、不機嫌さが増していくのは、屈折し過ぎだ。


「俺にない気付きだった。」


「嫌味はいらない。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


嫌味と受け取られたか。


「嫌味と受け取るのは、正当に評価されたいのに、評価されないという不満が、感情に乗って、受け取り方を歪めているせい。


俺には関係ないから、勝手に歪んでいればいい。」


「ふざけてるな。」

とタケハヤプロジェクトの学生。


俺との見解の相違は、相違で終わることが多い。


「ふざけていないが、本題に戻そうか。


デスゲーム参加者が生き延びたことを喜ぶ視聴者がいるか?


凝り固まった堅実な生き延び方を見るために、視聴者は金を払うか?」


タケハヤプロジェクトの学生は、黙りこくった。


タケハヤプロジェクトの学生は、総じて、適応力が高い。


適応力が高いタケハヤプロジェクトの学生に、正義が勝たないデスゲームの意義を理解させていたら、今の状況には、ならなかった。


「新鮮味がない、面白みがない団体の中で。


いてもいなくてもいい存在として集団に埋もれた状態で。


個々に生き延びるチャンスがあるか、と、考えたことはあるか?


これからも、全員が生き延びられると考えるのか?」


タケハヤプロジェクトの学生は、考え込んでいる。


そろそろ、いいか。


俺は、一人離れている話し手に視線を固定した。


「最初に雄弁に話していた男は、一人で離れて何をしている?


あの男は、話し手として、目立っていた。


正義が勝たないデスゲームの参加者の中でインパクトがあるか、というと、話していただけだったから加点はしないが、印象だけで言うと、記憶に残る。


分かるか?


記憶に残るかどうか、が、応援されるかどうかを分ける。」


モエカから、標的をすり替えてみたが、どうなるか。

楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ