14.幼馴染四人組のうちの二人、ふーくんとラキちゃん。ふーくんが覚えていなかったことをラキちゃんは覚えている。今その話をするのは、なぜ?
俺は、モニターから目を離せなかった。
文学好きそうな女の話しぶりは平坦で、目立った特徴もない。
でも、次に何を言い出すかが気になって仕方がない。
文学好きそうな女には、何かをしでかしてくれそうな気配がある。
文学好きそうな女には、人の視線をひきつけ、場面を動かす力があるのか?
目立たないために、大人しそうな人物に擬態していたのかもしれない。
「四人を二対二にして、戦力を均等にしようとすると。
ひーくんと私、まーくんとふーくんという組み合わせが多くなった。
まーくんと私、ひーくんとふーくんという組み合わせも時々あった。
ひーくんとまーくんは、チームの勝ち点を個人につけて、個人での勝負にすることを思いついた。
四人全員が、二対二の組み合わせで、総当たり。
私とふーくんの組み合わせは、この日が初めて。
四人で遊んだのは、この日が最後。」
引っ越しでもしたのか?
「私は、この日を最後に、四人で遊ぶのは止めた。
なんで止めたかというと、ふーくんが面倒だったから。」
と文学好きそうな女。
面倒な男を相手にフェードアウトした理由を、あなたが面倒な男だからよ、と言っている女。
女は、よっぽど我慢できなかったのか?
小学一年生のときの話なら、十年以上、おそらく二十年は前の出来事だろう?
「ひーくんとまーくんに、
『ラキちゃんとじゃ負けるから、嫌だ。』
と訴えて、
『頑張りなよ。』
と二人から励まされ、
『嫌だよ、代わってよ。』
と二人にぐだぐだ。
ドッジボールが始まると。
『ラキちゃん以外と組みたかった。
負けるのが分かっていてやりたくない。
ラキちゃん、頑張ってよね。』
と私にぐちぐち。
終わったら、終わったで。
『ラキちゃんには勝てると分かっていた。
ラキちゃんは、一番弱いんだよ。
頑張ってはいたかもしれないけど、一緒のチームになるならラキちゃん以外とがいい。』
と私にだらだら。」
と文学好きそうな女。
ご近所さんで集まって遊ぶと、合う合わないは、あるか。
「ラキちゃん?あのラキちゃん?」
と目を見張る男。
文学好きそうな女は、どれだけ変貌を遂げていたのか。
ラキちゃんと呼ばれた女は、変装が得意なのか。
「弱い者同士、弱いなりに、作戦立てて、一緒に頑張ろうという気を、秒でなくさせるほどの鬱陶しさ。
その日に、私は、もう四人で遊ばなくていいや、と思った。
翌日から、ひーくんとまーくんとふーくんとは遊んでいない。
ひーくんとまーくんと遊ぶとふーくんがついてくるからね。
早々に離脱した私は別天地を探して、そちらで問題なく過ごせていた。
この前までは。
ヘマをしてここに来ることになったときは、短い人生を嘆いたものだけど。
人生の最後に会うのが、ふーくんになるなんて、想像していなかったわ。」
と文学好きそうな女は、ため息をついた。
ラキちゃんとふーくん、分かりやすいから、俺もそう呼ぼう。
「人生の最後って、ラキちゃんは何を言っているんだ?」
とふーくん。
「ふーくんは、いつから、ここにいるの?
自分が墓場にいる自覚、ちゃんとある?」
とラキちゃん。
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