122.他人の踏み台になってやる気はない。閉塞感と鬱屈からやる気を無くしたのが、タケハヤプロジェクトの開発者達なら、起動ワードを言えばいい。
7月29日、複数話、投稿。
121話は、7月28日22時台に投稿済み
大人しくやられる予定は、ない。
やる気を出さないやつらにやる気を出させるための踏み台になる気は、一ミリもない。
このデスゲームの参加者の特徴は、意欲はないが、死にたくもない、という集団だ。
意欲とは言わないまでも、俺が有利に生き残れるような何かを引きずり出してやる。
まずは。
タケハヤプロジェクトについて、聞いてみるか。
心を揺さぶる刺激があれば、感情は、動く。
獲物を持って集まる参加者は、生きるために何が必要か理解し、生きるために体を動かしている。
完全に無気力ではない。
全員でなくても、何人かに口を割らせれば、十分だ。
閉塞感。
鬱屈。
状況が変わらないから、吐き出したい気持ちが募る。
同じ面子とグチグチ言い合う時期は過ぎた。
人生に疲れても、生きることを諦めきれないで足掻いているなら。
新顔にぶちまけて、すっきりしたくなってこないか?
俺は、周りを見て、話を始めた。
「この部屋にいる参加者は、タケハヤプロジェクトの開発に関係していた、という認識で間違いないか?
このデスゲームの参加者の年齢層は、佐竹ハヤトの十歳上までに見える。
この部屋の参加者が関わったタケハヤプロジェクトは、プロジェクト開始から十年は経っていない、と考えたが、合っているか?
訳知り顔で話している俺は、デスゲームに参加するまで、タケハヤプロジェクトという名称を聞いたことがない。
デスゲームに参加するまでは、自分の楽しみ以外のニュースを知らなくても、生きてこれた。
俺は、デスゲームに参加して、初めて知る知識に驚いているところだ。
タケハヤプロジェクトは、何を目標にして始まったプロジェクトなのか、いつから始まったのか。
タケハヤプロジェクトなるプロジェクトがあったことさえ知らなかった俺に、話してみないか?」
俺が話していても、参加者の反応は薄い。
話を聞きたい、というだけでは、何も得られない、か。
参加者の気を引きそうなワードを使うか。
参加者の気を引きそうなワードは、一つ。
「俺は、学生時代の佐竹ハヤトを知っている。
学生時代の佐竹ハヤトを見て賢そうとは思わなかったが、タケハヤプロジェクトというのに携わるくらいに賢かったのか?」
佐竹ハヤト。
賢さ。
この二つは、効果てきめんだった。
佐竹ハヤトの名前を出した途端、参加者から 怨念が噴き出した。
「あいつだけは許さない。」
「全部、あいつのせいだ。」
「あいつは、もっと苦しまないといけなかった。」
「タケハヤプロジェクトに何があって、何をしたのか。
話せるか?」
「タケハヤプロジェクトは、学生に国の未来を考える機会を、という趣旨のコンテストから始まった。」
参加者の一人が、話し始めた。
「知らなかった。」
「一般公募はなし、高校生と大学生限定の募集だった。」
知っていても、俺は応募しなかっただろう。
日常で頭を使うのは、疲れる。
「そういうのがあったのか。」
「論文やレポートの一次で、ふるいにかけられ後、二次、三次へ進む。
佐竹ハヤトは、いっぺんに問題を解決する提案を作った。
少子高齢化による人口減少と人手不足。
過疎化と地方都市のゴーストタウン化。
治安の悪化と、犯罪者の増加。
犯罪者の増加による刑務所の不足。
刑務所を維持するための人員と費用の増加。
この全てを解決する提案を出して、優秀した。
佐竹ハヤトの提案がたたき台となり、他の有益な意見を取り込む形で、タケハヤプロジェクトは、今の形になった。
プロジェクトが、実際に始動したのは、今から五年前。」
五年前?
五年前というワードを最近聞かなかったか?
誰かの口から。
最近。
デスゲームの中で、五年前と話していたのは、誰だったか?
新人歓迎会にいた加地さんだ。
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