117.モエカの態度が急に変わったきっかけは?『次は、私』とモエカ。正義が勝たないデスゲームには、法則がある?
今、現実がゲームと違う点を俺は実感している。
現実で女を突き放すと、これ幸いと、女は逃げ出す。
決して、食いついてはこない。
ツンデレは、元から気のある男と女の恋の駆け引き。
互いに堕ちる気がある男女の間でしか成り立たない。
知っていた。
俺にデレる現実の女には、まだお目にかかったことがない。
俺の何が気に食わないのか、俺には分からない。
俺に気がないモエカは、取っ手が壊れた扉なみに手強い。
俺が告白したわけでもないのに、モエカにフラレたみたいで腹が立つ。
モエカに、俺にいてほしくない理由を聞いてやる。
「俺に近づかれたくない、というのは、はっきり言えば、モエカには、俺の顔を見たくない理由があるということか?
顔を見たくないほどの理由なら、聞かせろ。
納得したら、考えてやる。」
考えてやるだけで、近づかないとは言っていない。
俺に害がある理由であれば、俺がモエカを避ければいい。
モエカに害がある理由の場合は、聞いてから考える。
俺の存在が、モエカの生死を分けるなら、近づくのはやめる。
俺は、いたずらや、嫌がらせや、好奇心で人を殺す遊びはしない。
人を殺すこと、命を刈りとること、は、俺にとって、軽いものではない。
「言わないわ。
私の理由を聞いたところで、金剛くんには、どうにもできない。」
とモエカ。
モエカは、俺がモエカの役に立たないから、相手にしたくないと言っている。
モエカの役に立つ気が、俺にはこれっぽっちもないと知ったら、モエカは、どんな反応をするのか。
「勘違いしていないか?
俺は、モエカの悩みを解決するとは言っていない。
俺の納得する理由を話せと言っている。
理由も分からず避けられたり、避けたりするのは、俺の柄ではない。」
俺がひかない理由が、モエカを助けたいという立派な動機ではなく、俺本位のものだったことが、モエカの警戒をといた。
「デスゲームの中にいて、お前のために、と言われたら胡散臭いから、先に死んでと頼んでいたわ。」
とモエカ。
言いたいことはよく分かるが、口に出していい内容ではないだろう。
やさぐれたときに、モエカの品性は死んだのか?
それにしても。
先に死んで、か。
速攻で断る。
大学時代だったら、モエカに頼まれたんだから、と悩んだだろうか。
今の俺は、俺の命と俺の信条みたいなものが、最優先。
デスゲームの中にいると、己の命より大事な物がなくなる。
「モエカが殺伐としているのは、デスゲームの中だからか?」
殺伐とした言動が、モエカの元からの性格だとしても、もう、俺は驚かないが。
モエカの口が軽くなっている内に、聞けることは聞いておく。
「やっていられなくても、やっていかないといけない毎日を過ごしていたら、やさぐれるわ。
新入りの金剛くんは、まだ実感ないわよね?」
とモエカ。
モエカは、竹馬に添えている手を俺の手の上に乗せてきた。
一転して、友好的になったが。
「最初から、やさぐれているうちに、開き直った。」
「意外にまとも。理由が、知りたいなら教えるわ。
法則によれば、次は私。」
とモエカ。
モエカの口が軽くなった。
急に打ち解けてきた。
意外にまともという評価のせいか。
「何の法則で、何の順番だ?」
「死ぬ順番。デスゲームの参加者は皆、死ぬのを待たれているの。」
とモエカ。
「説明が足りなさすぎだ。俺の顔を見たら、モエカの死期が近づくのか?」
「金剛くんに限らないの。
デスゲームの中で、忘れているくらい旧知の間柄の人が来たら、デスゲーム運営からの合図なのよ。」
とモエカ。
「なんのだ?」
俺には、見当もつかない。
デスゲーム関連か?
「本当に分からない?
考えてみて?
デスゲームの中よ?
デスゲーム内での合図の種類なんて、何個も必要ないわ。」
とモエカ。
「本気で分からない。何の合図だ?」
「次は、お前だ、予告よ。」
とモエカ。
「次に死ぬのは、お前だ、覚悟しておけ、という予告か?」
楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の☆で応援してくださると嬉しいです。