114.モエカとメグたん、二人同時に攻略はしない。好感度をあげるには、モエカに先に声を掛けることが、メグたん攻略にも役に立つはず。
機械音声が、聞こえてきた。
「竹馬と一輪車の時間です。
竹馬か一輪車を選んで、階段を下りてから上ります。」
と機械音声。
一輪車で、平面を進むならまだしも。
一輪車で、階段を下りるのも上るのも、落ちて頭を打つ未来しか、俺にはない。
一輪車は、なしだ。
竹馬にするにしても、補助がほしい。
竹馬で階段を下りて上るだけ、で済むか?
仕掛けを考えても、思いつかない。
デスゲームの参加者は、床に転がる二人を避けて、部屋の中央に集まっている。
俺も集まっている人の輪の中にいる。
モエカとメグたんは、二人で並んで立っている。
デスゲームそのものに関わりがありそうなモエカと、デスゲーム運営が送り込んだメグたん。
モエカは、俺を見ようとしない。
メグたんは、モエカが関わらないなら、俺には関わらないスタンスのような気がする。
機械音声の説明が終わってから、声を掛けるチャンスを探すか。
他の誰かに声をかけるより、モエカと仲良くなる方が、デスゲームの情報を手に入れやすい。
「一輪車と竹馬は、早い者順です。」
と機械音声。
早い者順なら、急ぐか。
俺は、早足で歩いて、竹馬を確保することにした。
予想に反して、取り合いにならなかった。
俺は、竹馬の前で、どれにしようか、とのんびり見比べている。
俺の周囲には人がいない。
俺以外の参加者は、竹馬も一輪車も選びにこない。
なぜ?
機械音声の指示に従うだけでは、足りないのか?
モエカとメグたんも、見ているだけで動かない。
追加でルール説明があるのか?
竹馬の前で待っているが、機械音声は流れてこない。
待っていても分からないなら、自分から聞く。
デスゲーム運営に質問するのは、リスクしかない。
となると。
俺が聞ける相手は、一人。
怪しまれない方法で、話しかけるか。
「モエカさん、俺、竹馬、久しぶりすぎて。
一人でできるか、練習したいから、竹馬を持ったり、補助をお願いします。
俺もモエカさんの練習に付き合うので。」
俺は、竹馬を両手に持って、モエカの前までやってきた。
モエカは、俺の顔を見ると明らかに表情が沈む。
俺という存在は、モエカにとって、見たくない何か、か?
モエカの反応にイラッとするが、先程の失敗をふまえた俺は、控えめに、下手に出ることにした。
モエカは、俺を覚えていなかったから、過去の俺が、モエカの顔を暗くする原因ではない。
俺の感覚では、佐竹ハヤトの名前を出したあたりから、モエカの様子がおかしくなった。
モエカからは、一向に返事がない。
目の前で話しかけているのに、無視か?
さらにイラッとくる。
モエカに話しかけるのは、俺の都合であるという自覚がある俺は、モエカの態度が悪いと、モエカを責め立てることはしない。
手順を間違えずに、仲良くなりさえすればいい。
ただ。
今、モエカに黙殺されると、俺には後がない。
他人事のような顔をしているメグたんを引きずり込むか。
「モエカさんが、だめなら、モエカさんのお隣さんを紹介してください。
お隣さんに、頼みます。」
モエカと並んでいるメグたんは、俺の声に反応して、俺がゴミ虫に見えているような目で見てくる。
メグたんの眼差しには、容赦が無い。
メグたんは、俺のことを、人と認識する気がない。
今は、まだ、これでいい。
メグたんとモエカ、同時に二人の高感度を上げていくなんて、リスキーなことを俺はしない。
二人同時に攻略して、同時に落とせるほどの技術を、俺は、まだ、身につけていない。
モエカから順に、高感度を上げていく方法が、確実。
既に話をする仲になっているモエカを無視して、メグたんに愛想よくすることはしない。
そんなことをすれば、モエカとメグたん、両方から嫌われる。
その証拠に。
「手伝いって、何をしてほしいの?」
とモエカが、俺に聞いてきた。
伏し目がちに。
よし、モエカが釣れた。
俺は、想像の中で口笛をふく。
俺は、一歩、勝利へと近づけた。
「竹馬に乗って、歩く練習がしたいから、モエカさんは、俺の真正面に立って、竹馬を持ちながら、後ろ向きで歩いてください。」
竹馬を挟んで向き合う距離にいるなら、モエカは、俺を無視することはない。
モエカには、聞きたいことがある。
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