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106.段違いの丸太を歩く?ぶら下がる?モエカに話しかけてみた。俺は、モエカとの弾む会話を想像していたが?俺の友達の名前を聞いた二人は?

子犬のワルツをBGMに機械音声が説明している。


「アスレチック大会を始めます。


第一種目。丸太のぶら下がり。


両手、両足を丸太の上部にひっかけて、豚の丸焼き体勢のまま前に進みます。


丸太の高さが変わる場所に来たら、丸太の上に体を移動してから、次の丸太へ。


次の丸太も豚の丸焼き体勢でぶら下がりながら進みます。


尚、丸太は、時々外れます。


丸太の下の床は、とても熱くなっています。


熱風が吹き出します。


丸太が落ちるときは、素早く避難します。


丸太が落ちてなくなった場合は、次の丸太から始めます。」


丸太の上を歩くのではなく、ぶら下がるのか。


難易度が高い。


自分自身の体重を支える手足の力と、勇気。


どちらも必要だ。


豚の丸焼き体勢。

丸太の下から熱風が吹き出す仕様。


人間の燻製を作る気か。


リタイアの説明がないということは、リタイア不可なのだろう。


「今から名前を呼びます。


名前を呼ばれたら、速やかに丸太の下に行きスタートします。」


モエカとメグたん以外は、知らない名前と知らない顔。


名前を呼ばれた一人目は、無言で、豚の丸焼き体勢になると、両手両足を交互に動かしながら進んでいく。


丸太の下の床から吹き出す熱風で、豚の丸焼き状態の背中が熱いのではないか、と見ているが。


一人目の顔を見ても、熱風にやられている様子はない。


丸太にしがみついている限りは、熱風の影響を受けないのか。


一人目は、スイスイと進んでいく。


慣れている?


二回目だったりするのか?


二人目の名前が呼ばれた。


二人目が進む。


北白川サナがいない今日は、暇だ。


俺は、モエカとメグたんを探す。


モエカとメグたんは、並んでいる。


メグたんは、デスゲーム運営の意向を汲んでいる。


モエカは?


モエカの立ち位置は、なんだろうか?


ドッジボールの後、ナイフを握っていたモエカは、ためらってなどいなかった。


メグたんは、モエカの仕事ぶりを認めていて、順番を譲るように言った。


モエカは、デスゲーム内でVIP待遇なのか?


特殊な素性だったりするのか?


俺は、モエカを見ていたけれど、モエカについて、話せることが何もない。


俺とモエカは、俺が見ているだけで、一歩も踏み出せないまま、何も始まらずに終わった。


今さら、何かが始まるという予兆もない。


三人目、四人目と呼ばれていく。


昨日の新人歓迎会とは異なり、今日は、誰も話をしない。


人の声は聞こえないが、子犬のワルツがエンドレスでかかっている。


黙々と、ノルマをこなしているイメージ。


順番に名前が呼ばれていく。


名前を呼ばれずに残っているのは、モエカ、メグたん、俺の三人。


俺は、モエカに話しかけることにした。


「久しぶり。モエカは、俺のことを覚えている?」


俺に話しかけられたモエカは、誰だ、こいつ、という表情になった。


モエカが、俺を覚えていないとは予想していなかった。


俺を忘れている相手に、俺を思い出してくれ、と話しかけるほどの関わりが、俺とモエカにはない。


俺とモエカの関係を説明するにも、俺が一方的にモエカを見ていただけ、と話すのはためらわれる。


モエカの中に、俺の存在は残らないほど意識されてこなかったのか、と思うと。


俺は、不審そうに俺を見ているモエカに落ち着かなくなった。


最初から知り合いとして、声をかけるのは失敗だった。


知らないフリして、声をかけ、仲良くなってから、実は、と打ち明ける方が良かったか。


モエカに覚えられていないことは考えていなかったから、次に言う台詞が思いつかない。


俺とモエカの間の続くか続かないか分からない会話の沈黙に焦れたのか、メグたんが、アシストしてくれた。


デスゲームの最中でもあるから、さっさと白黒つけさせるためかもしれないが。


「あなたは、モエカの知り合い?」

とメグたんが俺に聞いてくれる。


どこからどう見ても、美女なメグたんに、何も成し遂げてこなかった俺が話しかけられている。


デスゲームの中でしか起こり得ない奇跡が起きている。


ほっとしたら、何も思いつかなかった、俺の脳が仕事をした。


「モエカの直接の友達ではなく、間にもうひとり挟む形で、一時期、一緒にいたから、俺は覚えていた。


懐かしくなったから、つい声をかけたが、俺と直接話をしたことはなかった。」


「三人でいたということ?」


モエカは、思い出せないなりに、真剣に思い出そうとしてくれている。


「間に一人入っていたのは、男?女?」

とメグたん。


「男だ。」


「その人の名前を聞いていい?

その人が、私とあなたを繋いでいたと思うから。」

と申し訳無さそうなモエカ。


モエカの台詞は、俺の胸をえぐった。


モエカは、俺のことなんて眼中になかったと思い知らされた。


すぐ横に俺がいても、モエカの目には、俺の友達しか見ていなかったのか。


告白する勇気もなかったくせに、告白する前に失恋。


当時の俺は、告白しないで良かった。


俺が告白しても、モエカは、俺が誰だか認識しないまま、断っただろう。


俺は、予想しないダメージを表に出さないようにしながら、友達の名前を出した。


「佐竹ハヤト。」


友達の名前には、モエカだけでなく、メグたんも反応した。


モエカは、瞠目していた。


「モエカ。彼は、タケハヤプロジェクトの人?」

とメグたんは、モエカに確認している。


タケハヤプロジェクト?


佐竹ハヤトの真ん中を取り出したのか?


俺の友達は、何をした?

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