105.デスゲーム、ニゲーム目。屋内アスレチック。部屋の中央には竹馬と一輪車。モエカとメグたんが入ってきた。
夜中に二度ほど目を覚まして、水を飲んだりしたものの、朝はスマホの振動で目が覚めた。
窓もなく、朝日が入ることはない部屋だが、部屋の中は、目にささらない明るさだ。
部屋には、照明器具がない。
壁や天井が明るさを調節している。
貸与されているスマホに連動しているのだろう。
スマホの画面には、着替えと食事を受け渡し口で受け取り、パジャマを受け渡し口に入れるように、と指示がきていた。
三食昼寝付きの、昼寝がデスゲームに変更されている他は、至れり尽くせり。
朝ご飯は、鮭、海苔、温泉卵、味噌汁、ご飯、漬物、サラダ、ハム。
食事だけで考えたら、旅館の朝食に引けを取らない。
俺は、温かいご飯を美味しくいただいた。
食べられるときに、食べておかないと。
デスゲームは、体力と気力を削られる。
用意された着替えは、大きすぎず、小さすぎず。
靴下のみならず、靴も新しいものが用意されている。
昨日のデスゲームで使用していた薬品が付着している靴は、今日のデスゲームに使えないとか?
靴を履いてみると、靴のサイズもちょうど良かった。
個人情報なんてものは、どこからでも抜き放題だと実感する。
至れり尽くせり過ぎて、恐ろしい。
これだけ環境を整えてやったんだから、働けと言われている気分になった。
働くか。
俺がいるのは、働かないと、ろくな死に方をしない場所だ。
歯磨きを終わらせて、ベッドで休憩していると、スマホが振動した。
次のデスゲームのご案内。
昨日は、新人歓迎会だった。
今日は新人の顔見世興行か?
俺は、部屋を出た。
廊下を歩いていて気づいた。
移動中は、昨日も今日も、誰にも会わないで、目的地に着いている。
他の誰かの足音も聞こえない。
時間差で移動させているのか、ルートを変えているのか。
参加者には、デスゲームに関係のない行動を取らせないように、徹底しているのだろう。
まかり間違っても、参加者が、デスゲーム外で繋がりを作ることがないように。
案内された部屋は、屋内アスレチックだった。
俺が一人目なのは、新人は、早めに来なさいというノリだったりするのだろうか?
デスゲームには、時間外労働という観念がない。
俺は、アスレチックの遊具を見て回ることにした。
段違いの丸太が並んでいるのは、丸太の上を歩くのだろう。
丸太は、どれも、俺の片足分の幅しかない。
丸太の上で駆け足をしたら、落ちる。
段違いの丸太は、部屋の壁に沿って一周するように組んである。
終点が、天井近くの高さに届いている。
飛び降りたら、骨折する高さだ。
上ったら、下りなくてはいけない。
天井近くまで上ることなく済ませたいものだ。
それにしても。
綱渡りや空中ブランコがなくて良かった。
素人には、落下以外の未来はないと思う。
デスゲーム内で、デスゲーム運営が参加者に命綱を用意するとは思えない。
デスゲーム二日目で、人生をリタイヤしないようにしたい。
部屋の中央には、竹馬と一輪車がある。
サイズは、大人用。
竹馬も一輪車も、小学生のときに一瞬、使ったことがある。
ゲームの方が楽しかったから、俺のブームは一瞬で終わった。
そういうわけで。
大人サイズになっていたところで、まともに乗れる気がしない。
一輪車は、乗れたら一瞬でもこげば進む。
竹馬は、一メートルも進まない気がする。
他にも、じっくり観察しようとしていたら、音楽が聞こえてきた。
子犬のワルツ。
俺一人しかいないのに、音楽は早くないか?
訝しんでいると、ぼつぼつと部屋に人が増えてきた。
北白川サナは、いない。
北白川サナとまた会う日は、今日ではなかった。
見事に知らない顔しかない。
知らない顔ばかりで、俺の気持ちが盛り上がらない、と思っていたら。
モエカとメグたんが入ってきた。
出入り口にロックがかかる。
モエカとメグたん待ちだったのか。
モエカは、俺を見て、俺だと分かるだろうか?
俺は、間違えない。
俺は、飽きるくらいみていて、飽きなかった。
モエカが、俺を覚えていたら、話は早いが、どうだろう。
俺だと分からない方が、モエカにも俺にもよい、ということはあるのだろうか?
モエカと話ができるなら、デスゲームに参加することになった話をしてみたい。
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