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103.新人歓迎会のデスゲームの終盤。北白川サナが白組の人達について、『加地さんの仕事以外の仕事はない。』と話していた意味を俺は理解する。

俺と北白川サナがすたすたと出入り口の方に向かっていると。


「あいつら!どこへ行く気だ!」


「サナが、私達を案内したのよ!」


「忌々しい女が、レオに話していたのを、私も聞いたわ。」


忌々しい女とは、加地さんのことか。


「私達が大変な目にあったのは、サナのせい!」


「謝らせないと気がすまない。」


「謝ったって、許さない!」


白組の人達は、野村レオの仇としてではなく、恨みを晴らす相手として、北白川サナを再び害する目標にすえた。


軽微な初犯のうちに捕まらないと、だんだん重い犯罪に手を染めていく傾向にあるという。


人の行動を左右するのは、罰せられないから、平気だという安心感だけか?


罪をおかすことへの躊躇がなくなる。

罪になる行為に対する嫌悪感が麻痺。

ついには、己が罪をおかすことの正当性を述べ始める。


正義のすり替えを行い、正義を自分に寄せて解釈しだせば、末期。


一人、二人ではなく、集団化すると、攻撃させないために、標的を作って、先に糾弾を始める。


なるほど。


『加地さんの仕事以外に仕事がない人達。』


北白川サナが、白組の人達をそう評した理由。


理解できた。


白組の人達は、民衆扇動者だったのか。


一部の情報を取り出して意見を形成し、情報を精査しない層にばら撒き、煽り立てる。


白組の人達のしていることは、司令塔がいれば、いい儲けになる。


司令塔がいなければ?


加地さんと野村レオがいないから、迷走したのだろう。


加地さんへの反発。


野村レオへの崇拝。


白組の人達をまとめていた二人は、どちらも、命を落とした。


司令塔がいなくなった白組の人達は、名目ではなく、情動で動くようになった。


その結果。


白組の人達は、まとまりを失い、迷走して、疑心暗鬼に陥った。


命の危機を感じた一人が、標的をずらすために、北白川サナにスポットを当てた。


攻撃から逃れたい人、戦いに疲れた人が、共通の敵の演出に、次々と便乗した。


走り出した北白川サナの手にひかれて俺は、走った。


北白川サナの手は、俺の命綱。


転んでも離さない。


俺と北白川サナは、白組の人達に追いつかれる前に、閉じられた出入り口に到着。


「鎌を捨てて、スマホを持つです。」

と北白川サナ。


俺は、さっさと凶器を足元に落として、ポケットのスマホを取り出した。


スマホ画面にバーコードが出てくる。


北白川サナの手にあるスマホの画面にもバーコードが出ていた。


「バーコードを天井に向けるです。」

と北白川サナ。


俺と北白川サナは、スマホの画面に出ているバーコードを天井に向けた。


出入り口の扉のロックが外れる。


俺と北白川サナの前にあった扉が開いた。


「あいつら、自分達だけで逃げる気だ!」


「追いかけろ!」


「逃がすな。」


「あいつらについていけば、出られる。」


迫りくる怒号には、白組の人達の怨嗟と歓喜が混じり合っている。


俺は、北白川サナと並んで部屋の外へ出た。


俺と北白川サナに迫ってきた人達も、俺達に続こうとしている。


「うが!」

「やられた!」

「出口は、すぐそこなのに。」

「ここに来て、何で!」


騒ぐ声だけで、誰も出てこない。


部屋を出て廊下にいた俺と北白川サナは、部屋の中を振り返った。


俺と北白川サナの後に、部屋を出ようとした人達の前には。


有刺鉄線があった。


バーコードをかざさないで、新人歓迎会の会場を出ようとすると、有刺鉄線に阻まれるのか。


俺と北白川サナに一番近かった男は、有刺鉄線がかすったらしく、顔に傷を作っていた。


「サナめ!俺達を出せ!」

と顔に傷を作った男が、有刺鉄線越しに北白川サナに吠える。


「私達は、新人歓迎会のゲームをクリアしたから、出ましたです。


部屋から出たいのなら、リクエストするといいです。


『次のゲームを始めてください。』

と全員で心を一つにして叫んだら、次のゲームが始まるかもしれないです。


次のゲームをクリアしたら、出られるかもしれないです。


でも、叫んでもゲームが始まらないこともあるかもしれないです。


ゲームが始まっても、都合よくクリアできないかもしれないです。


どちらにしろ、私の知るところではないです。」

と北白川サナ。


「は?」


顔に傷を作った男は、北白川サナのアドバイスを聞いて理解不能という表情になった。


北白川サナは、俺の手をひいて、新人歓迎会の会場から遠ざかる。


「おい!説明しろ!」

と背中に怒声が飛んできたが、俺も北白川サナも振り返らなかった。


民衆扇動者は、用済みになった。


もしくは。


民衆扇動者の存在を抱えている人の方に危惧した誰かの意思で、手足となる民衆扇動者は社会から取り除かれた。


白組の人達が、有刺鉄線から出てくることはないだろう。


スマホが振動したので、俺と北白川サナは、立ち止まって、スマホの画面を確認した。


「GAME CLEAR」


デスゲーム初戦は、白星で終わらせることができた。


北白川サナについてきて、正解だった。


スマホの画面をスクロールすると、今日、これから過ごす部屋への案内がある。


北白川サナのスマホにも、部屋の案内があったようだ。


俺と北白川サナは、階段を上っていく途中で、分かれた。


「世話になった。ありがとう。」


礼を言うと。


「また、一緒になるです。」


北白川サナは、ニコニコと口元をほころばせ、俺に手を振って、階段を上っていく。


次は、どこに案内されるのだろう?

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ブックマーク、ありがとうございます。引き続き、お楽しみいただけましたら幸いです。

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